真実の扉

「何もしないことをする時」「何も考えないことをする時」・・本当の自分の扉が開く

Gファイル (メイクミラクルの真の立役者)

2006年10月22日 09時32分22秒 | 音楽・映画・本・スポーツ・芸能・娯楽

久しぶりに面白い本を読みました。こんなに夢中で、一気に読んだのは久しぶりのことです。
その本は文芸春秋から出版された「Gファイル(G FILE)」という野球の本。
だから野球に興味の無い人は面白さが半減してしまうかも。
しかし中学生時代は野球部に2年間所属し、昔からジャイアンツファン(特に長嶋の熱烈なファン)だった私も、今はほとんど野球には興味が無いです(いろいろと昔の野球人の名前が出てきますのでジャイアンツのV9以降のある程度の知識が必要かも)。

私は今年はテレビでもジャイアンツのゲームは一度も見ていないです。話題になった高校野球をちょっと見た程度。
長嶋が引退し、その後、巨人軍が空白の一日を利用して江川を取ったあたりから野球への興味が薄れ始めてきました。
資金力に物いわせ、広沢、落合、清原と他チームの4番打者を集めたあたりでは嫌気が差してきました。
そんな自分もこの本の存在を知ったときには早速購入し、大いに楽しませてもらいました。


この本を読むと、長嶋ジャイアンツの1994年の「メイクミラクル」も96年の「メイクドラマ」も、ある一人の黒幕による巨人内部の諜報チームの情報収集と管理があったからこそ実現したことがよく判ります。
その情報が94年から97年までの4年間にわたってほぼ毎日のようにファックスで長島宅に送られてきた、5000ページのレポートに書かれていました。この本も全体で450ページ近くにわたり、多くのGファイルの情報が詰まっています。
この2度の優勝の最大の功労者は長嶋でもなければ落合でもない。まして清原なんかでは決してない。
それは河田弘道という、スポーツ紙の紙面にも一切載らない、長嶋と僅かの裏方だけが知っている人物だったのです。


私がこの本を読んでいて、何よりも惹かれたのは、河田氏のどんな努力も惜しまずに進み、強く、実直で、誠実で、長嶋茂雄を愛して止まず、スポーツの反映を心より願う男の素晴らしいエネルギーに満ち溢れていたからです。
ここに書かれていることがほぼ真実であると、この本はその無私と誠実のエネルギーを通じて無言に表しています。


だが、途中まで読んでいてどうしても理解できず、腑に落ちない点がありました。
それは、長嶋に仕えた4年間、これほどまでに長嶋への愛と忠義のエネルギーに溢れているのに、この本を読んで分かってしまうことが、いかに河田が愛した長島がリーダーとしてふさわしくない人間であり、英知も持たない小心者であるということです。
長嶋を愛する一方で、日本のプロ野球の将来を考えてとはいえ、何故ここまでの暴露をするのだろうか?ということです。


しかしそれは最後になって分かったのです。それは自分の恩人、河田にたいしての長嶋の裏切りだったということが。
が、私は河田は長嶋への恨みでもって「Gファイル」の公開を決断したというのではないのです。
真実を語ることによって、読売巨人軍が、そして日本のプロ野球が正しく機能することと、長嶋のプライバシーを守り通すことの二つを秤にかけ、貴重な資料の公開を差し控えるほどには「長嶋とは擁護するに足りる人物ではない」と、彼にそれほどの価値を置かなかったに過ぎないと感じたのです。

自らの勇気のない利己的な行動がもとで、4年間誠心誠意長嶋に尽くしてきた恩人河田を読売の渡邉社長の意思によってとはいえ、結果的に解雇に追いやった長嶋は、それでも未練たっぷりに避ける河田を執拗に追いかけ、食事を共にして、恥も知らずに再度助けを求め河田に縋り付き、ラブコールを送ったのでした。


次はその会話を中心とした著書からの一部です。


*************


 河田が長嶋茂雄にここまで仕え、そして支え続けることができたのも、子供のころから憧れだったからだ。(略)勝利のときの喜悦に満ちた(長嶋の)笑顔を向けられたときの至福は、なにものにも換えがたがった。
 河田が思い切っていくつかのことを長嶋に訊ねたのは、その思いが果たして錯覚だったのか確かめてみたかったからだ。
 長嶋はこの席で、これまでの四シーズンにわたる河田の功績をあらゆる賛辞とともに並べたてた。

(前略)
「監督とわたくしが一心同体で戦ってきたことをお認めになっていただけるんですね」

「もちろん、当然ですよ!」
「ではそのお言葉に甘えて二、三うかがさせていただきます。監督、あの9月18日に渡邉社長から実権をすべて奪われ、目の前で堀内をヘッドコーチにさせられるような屈辱を味わわされて、それでもなおユニフォームを着ようという気になぜなられたのですか」
「北海道から沖縄まで日本全国の長嶋ファンは、私のユニフォーム姿をずっと見続けていたいんですよ、河田さんわかってくださいよ」

 それは自分の勝手でしょと河田が口にしかかったところで、長嶋がしぼりだすように言葉をつないだ。

「ぼくは読売ジャイアンツにいたいのですよ」

 河田には聞きたくもない言葉だった。

「(略)長嶋茂雄は野球人としてではなく、一人の人間として何を一番大切にされておられるんですか。是非とも私に教えていただきませんか」

 長嶋は力をこめてこう答えた。

「ぼくは、家族のことなんて考えたことがなかった。野球がすべてです。そうでなければぼくはこの世界でここまでやってこれませんでしたから」

「じゃあ、どうして監督は結婚なさったんですか。一茂はずっと父親を必要としていましたよ。お母さんじゃないんです。本当に欲しがっているのはお父さんだったんですよ。大変僭越ですけど、わたくしこの際、もうしあげさせてもらいます。監督、「家族」というチームをまとめられない人が、読売巨人軍というチームを指揮官としてどうやってまとめていけますか」・・・


***************


 と、二人の会談は昼食時の会談だというのに、5時間を優に超えて行われました。河田にこれまでのように自分を支えて欲しいと懇願する長嶋に河田の厳しい叱責が続いたのです。
 
 河田はGファイルに以前こう書いて長嶋宅に送った。

 「監督は常に与えられたプレッシャーをミラクルで撥ね退けて実行されて参りました。ミラクルは常に周到な準備と最大の可能性を備えて初めて生みだされるものであると確信致しております」
 
 河田は常に努力する中にこそ、神の支援(奇跡)は成り立つことを知っていました。

「監督、ゴルフ競技でボギー、ダボ、OBを出した後、アマもプロも即バーディーで取り返そうと心の底で考えますね。これがまた深みにはまる前兆であることを付け加えさせて戴きます」

「バーディーやイーグルはいらない。着実にパープレイで刻んでいく、そんな展開を河田は想定していた。(シーズンを乗り切るには)仮想敵を思い浮かべずに、ひたすら自分と戦うのが一番だ」と【継続は力なり】の奇跡の原則を理解していました。


「天は克服できないプレッシャーを与えはしない」

 という無意識の天への信義を持つ この河田の理念が、渡邉社長を中心とした出世や権力争いに終始している生々しいエゴと闘いの世界を描いたこの書物全体を覆う重いエネルギーに、正義と思いやりの心休まるエネルギーを、常に醸し出していた。

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8 コメント

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Unknown (yohko)
2006-10-22 11:15:57
久しぶりにこちらへ寄らせていただきましたら、記事がアップされていました。

お元気そうで、何よりです。

奇跡の裏側を読ませていただきました。

それにしても人間は多面的なものですね。

どの面を多く表現しながら、人生を送るか・・・でしょうか。

それによって人の真価が違ってくるのでしょね。
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yohkoさんへ (とびら)
2006-10-22 11:50:31
お久しぶりです。

お元気ですか。何かやることだらけで忙しい毎日を送っています。



で、人間は多面的と言うことですが、

たしかにここで私は長嶋のダメなところを書いてしまいましたが、余りにも卑怯者という感がぬぐえなかったからです。

でも、嘗ての自分が熱烈な長嶋ファンだったように、そしてご存知のように彼ほど(一部の人を除き)愛されている日本人はいないと言っても過言ではないでしょう。



宇宙の法則も多面的です。

河田を最高の参謀として見抜いたのは長嶋本人で、彼自らが河田氏を口説いたのです。



成るべくして成った道筋だと思いました。
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 (remains)
2006-10-26 13:31:36
 長島さんは野球が心底好きだった。

 しかし、優秀な選手が優秀な指導者になるとは限りません。

 そして、野球界は長嶋さんのカリスマ性を必要とした。

 また長嶋さんは利用されても野球を捨てられなかった。

 ただそれだけの人だと言う事ですね。

 一方河田氏のご苦労は良く分かります。

 英雄を支える裏方がどんなにつらいものかも。

 河田氏の苦悩とご苦労は、よりよき野球の発展でしか賄えないのだと思います。

 ありがとうございました。
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裏方 (とびら)
2006-10-27 21:25:01
remainさん、お久しぶりです。

お元気ですか? 私は元気ですよ。



ほんとに人を支える裏方は大変だと思います。

でも対象がスターですから、反響が大きく楽しいんですよ。



支えられている人というのは、はじめは支えられているのに感謝しているんですけど、そのうち自分の力で成し遂げていると勘違いしてしまうことが多いですね。

長嶋さんも多少勘違いしていたようです。



実は私も今、仕事で裏方を演じているところがあるのですが、支えていた企業から裏切られたような気分になっていて、ちょっとやりきれない気持ちがあります。

そういう今、思うのは「それだったら勝手に生きてよ」という気持ちです。

裏切るのも自由です。でも僕にだって自由がある。。。と言うわけです。

河田さんの気持ちはそれなりに分かります。裏切られたことへの恨みとかないですね。それも自分の自由意思の中での成り行きですから。。。



裏切ったほうも、裏切られたほうも、それで何かを学んでいるんです。

でも、いるんですよね、何も学ばずに、何も変わらない人も、そういう時は、ほんとに頭にきちゃうけど、まだ修行が足りないかな?



またお寄りくださいませ。
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Unknown (河田弘道)
2006-12-03 00:38:50
書評拝読させていただきました。ありがとう。貴重な書評に心より感謝申し上げます。一日も速くジャイアンツとプロ野球界、日本の競技スポーツが明るく開かれたフェアな競技として運営・管理されるようこのような貴重な活動書評でリードして行って下さいね。宜しくお願い致します。深謝

河田弘道 拝
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ようこそ (とびら)
2006-12-03 11:10:45
まさかのことで、ちょっとビックリしましたが、ようこそおいでいただきました。
この本から学ばせていただいたことは、一言で言って「誠実さと弛まぬ努力」の大切さです。この本からはたくさんの勇気を戴きました。こちらこそ、有難うございました。
私も50を過ぎて人生やり直しの無謀な挑戦に明け暮れています(それで更新がとまっていますが・・)。
河田様の益々のご活躍をお祈りしております。
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大晦日 (remains)
2006-12-31 12:52:11
 ご無沙汰しております。
 今年も今日を残すのみとなりましたが
 お元気でご活躍のことと思います。
 一年早かったですね~!
 来年はより良い年でありますように。
 これからもよろしくお付き合いくださいませ。
 では、良いお年を!
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佳いお歳を (とびら)
2006-12-31 15:40:04
お久しぶりです。
なかなか更新が出来ず、というか2ヶ月以上再スタートの気力が湧かずに日々が経ってしまっています。それでも毎日多くの方にお立ち寄りいただいているので、申し訳ない気持ちでいます。
気力は今、別のところで使っていて、来年もどうなるか分かりませんが、時々は更新したいと思っていますので、思い出したらまた覗いてみてくださいませ。

では、佳いお歳をお迎えくださいませ。
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