I~これが私~

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『同居人は化け猫!』第7章-4

2011-11-04 21:27:33 | つぶやき
同居人は化け猫!

第7章 さぁ実家へ!

4.実家到着!

「やっとついた…」
鈴蘭の疲れ果てた声。
あの後酔い止めの薬を買い、大変な思いをしてここまで来た。
冬夜にとって、こんなに旅行が大変だと思ったことはない。
ある意味いい勉強になったかも。
「母さん達が待ってるはずだけど…。」
気を取り直して辺りを見回す。
「…いないな。」
「なんでだよ…!」
冬夜は頭を抱えた。
昨日、手紙が届いたことと実家に行くことを伝えようと電話したら、何も言う前に、
「迎えに行くからー。」
と、それだけ言って切れた。
こっちは何も言ってないのに。
なのに!
いないってどういうことだ?
「仕方ねぇ…。待ってんの暇だし、歩いていくか。」
「え!?」
鈴蘭が思いっきり顔をしかめる。
冬夜だって苦虫をかみつぶした顔をしていった。
「俺だってやだよ。やだけど、仕方ねーじゃん。」
「それでも…!」
まだぶつぶつ言ってる鈴蘭を放って、家への道のりを思い出した。
といっても、半年とちょっとこっちに来てなかっただけだし、町の風景も変わっていない。
たとえばあそこの公園。
林みたいになって、遊具が一つもなくて。
公園じゃないじゃん!って思ったけど、結構虫は捕れた。
秋になれば虫の声がすごかったなぁ、とか。
たったそれだけの小さなことだけど、道を思い出すきっかけになる。
「あそこの公園の角で曲がって、少し行くと大きな犬がいて…あれ、かなり怖かったんだっけ。」
そうやって歩いていって。
ぶつくさ言ってた鈴蘭も、自然とおもしろがってついてきた。
「あ、ほら鈴蘭、あそこだ!走るぞ!!」
気持ちが弾み、走り出す。
庭に一本、桜がある家。
ご近所さんがお花見に来たりして、ついでにお小遣いももらったりして。
あの桜には本当に感謝した。
懐かしい記憶が、次々と浮かんでくる。
あの自分の家で過ごした日々が。
……自分の家なんだから、別にいいだろう。
冬夜はインターホンを鳴らさずにドアを開けた。

「ただいま!」

約半年前と、同じように。


written by ふーちん


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