小学校3年生だったかな?
同級生にノッポで天然パーマの正ちゃんって
男の子がいた
いっつも青っぱなばっかりたらしていた
正ちゃん家は山奥に農園のあるリンゴ農家で
いっつもお姉ちゃんと2人で
遠くから歩いて学校に通っていた
決して裕福とは言えなかったけど
素直な明るい兄弟だった
ある日ガキ大将3人組にオレがやられていたら
帰り道の正ちゃんがランドセル投げてかかって行って助けようとしてくれた…
結局2人ともボコボコにやられたけど
不思議と気分が良かった
家来いよ!
って言われて正ちゃん家に付いて行った
正ちゃんは家に着くと宝物の戦車のプラモデルを
見せてくれた
2人でいっぱい遊んでいっぱい笑った
帰り際に正ちゃんは
これ食えよ!って箱の中に詰まった真っ赤な
リンゴをくれた
甘くて美味しいリンゴを
帰り道に食べながら帰った
後で聞いた話だけど
そのリンゴは出荷用のやつで
正ちゃんは父ちゃんに随分怒られたらしい
しばらく経ったある日
朝礼で校長先生が
正ちゃんとお姉ちゃんを前に呼んで
突然ですが杉井くんの家が
ダムの建設の為に引っ越す事になりました
と話した
正ちゃんの家はダムが出来るとダムの底に沈んでしまう
地主が土地を売るから正ちゃん家もリンゴが作れない
朝礼の後、正ちゃんの父ちゃんと母ちゃんが
トラックに乗って迎えに来た
みんなは泣きながらトラックに集まって サヨナラを言ってたけど
正ちゃんは涙を我慢してうつむいていた
そしてトラックがゆっくり走り出した時
正ちゃんは大声で泣きながら
みんなバイバイ!
って叫んだ
広島から遠く離れた山口県のリンゴ農園に行くらしい
今でもリンゴを食べると
青っぱなの正ちゃんの泣き顔と
甘くて美味しいリンゴを思い出す