快読日記

日々の読書記録

「福島原発の闇 原発下請け労働者の現実」堀江邦夫/文 水木しげる/絵

2012年05月22日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《5/20読了 朝日新聞出版 2011年刊(「アサヒグラフ」1979年10/26号、11/2号「パイプの森の放浪者」に加筆・修正) 【ノンフィクション 原発】 ほりえ・くにお(1948~) みずき・しげる(1922~)》

30年以上前、すでにこういう記事が出てたんですね。
筆者がその立場を隠して、いわゆる“人夫出し”に雇われ、原発の中で作業員として働いた先入ルポ、というところまでは何かで読んでいて、ある程度の内容は想像してたんですが、それでもやっぱり惨い。

福島で、バルブ据え付け作業のために放り込まれたクリンナップ室(!)は、被爆線量を計るアラームメーターが数分でパンクするほどの高線量エリアだった。
美浜では、放射性物質のヘドロをバケツで汲み上げてビニール袋に移すという作業をし、1時間足らずで気を失いそうになったりします。

作業員は、「労働力を売っているのではなくノルマ分の放射線を浴びることによって賃金を得ている」(85p)と指摘されています。
そういう状況の上にフラフラと立っているわたしたちの日常ってのはいったい何なのか。

この本、もともとが雑誌の記事なのでボリュームもそんなにないし、水木さんのイラストを拡大して他のページに再登場させることでカサを増やしてるような薄~い本なんですが、それでもこの衝撃。
原因を考えてみると、体験記もさることながら、この絵が、水木さんの絵がとにかくすごいからではないか。
設備はまるで生き物のように有機的に描かれ、空気中にみっちりと詰まっている見えないはずの放射性物質が息苦しくなるような点描でこちらに迫ってくる感じ、そして、顔の見えない労働者たち。

やっぱり絵ってすごい。
水木しげるってすごい。

…なんかへんなところに着地しちゃった。


→「朽ちていった命―被曝治療83日間の記録―」 NHK「東海村臨界事故」取材班

→「萩尾望都作品集 なのはな」萩尾望都


/「福島原発の闇 原発下請け労働者の現実」堀江邦夫/文 水木しげる/絵
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