快読日記

日々の読書記録

「不透明な時」三浦和義

2009年06月05日 | エッセイ・自叙伝・手記・紀行
《6/3読了 二見書房 1984年刊 【手記】 みうら・かずよし(1947~2009)》

この本が出た「ロス疑惑」騒動のころ、わたしは小学生でした。
誰だったか忘れたけど、身近な大人が「これ読むと、三浦は潔白なんだと思っちゃうんだよね」と言っていたのを覚えています。
へえ~。いつか読みたいものだ――と思ってから四半世紀が経った先日、図書館で見つけまして。

酒も博打もやらない代わりに、ものすごく女にモテる。
社交的で仕事熱心。
金銭の義理に堅く、一本筋の通った男。
それが、ここに描かれている三浦氏の自画像です。
のちに公開された、コンビニで万引きしてる姿と同じ人とは思えません。

おそらく本人が書いたであろう文章も独特です。
例えば、出会った頃の一美さんの話題では「彼女の存在感は素敵に重たかった」(106p)、ちょっと笑ってしまいますが、全編こんなかんじ。
事件直後、病院のベッドでインタビューに答えて「一美~!一美~!」って場面があったじゃないですか、まさにあれです。
なんだか憎めないというか、「人たらし」とも言われる三浦氏の奇妙な魅力が伝わります。

事件の真相云々はさておき、
叙述ミステリによく登場する「信用できない語り手」のリアル版として読むと、味わい深い1冊でした。
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