快読日記

日々の読書記録

「仮釈放」吉村昭

2020年02月21日 | 日本の小説
2月20日(木)

「仮釈放」(吉村昭 新潮文庫)の畳み掛けるようなラストにふらふらする。
小さくくすぶり続けていた火が、いきなりうなり声を上げて一瞬で家を焼き尽くしました、みたいなショック。

例えば、主人公・菊谷が養鶏場までの通勤にスーツを着ていく、みたいな小さい違和感が人物そのものを表現していて、そういう表現がコツコツ編み上げられて、完成した絵に慄然とするような。

今まで短編しか読んだことなかったけど、全然薄味になってないんですね、参った…。傑作だ…。

そのままエッセイ集「わたしの流儀」(吉村昭 新潮文庫)を読み始めると、なんかこう「正しい大人」な部分が目立って、どうしても松本清張と比べたくなります。

松本清張はコンプレックスが強くて、世の中の隅っこから人間をじっとり見つめてるかんじ、吉村昭はもっと毅然と正面から捉えたかんじかなあ。

むー。どっちも好きだ〜。
(あえて選ぶなら清張派)