(大ナゲシから二子山方面)
今年のGW、ちょっと用事が出来てしまって山に行けない可能性が大きくなってしまいました。そこでGWの頃に歩いた記録をいくつか公開していく予定です。若干古すぎる記録もあるため、現状とはかなり異なる部分もあるかもしれません。
昨年(注:2006年)の秋、妙義山の山頂コースを歩いた。切り立った岩場には恐怖も感じたが、それ以上の興奮も味わうことができた。またあの興奮を味わってみたい。そんな想いから西上州の山をいくつか物色していたところ、秩父の奥地に大ナゲシなる秘峰が聳えているという。大ナゲシへは群馬県側の野栗沢と埼玉県側の小倉沢どちらからも登ることができる。ならば交通費の掛からない埼玉県側から登ることにしようと計画を立てた。
GWのこの日、朝から快晴である。これだけ天気が良いと暑いくらいかもしれない。西武線と秩父鉄道を乗り継ぎ三峰口駅に着くと、バス停は閑散としている。通常であれば登山客が多いのだろうが、今日は出発が遅く、皆既に山に入ってしまっているのだ。それでも観光なのか地元の人なのか、中津川行きのバスは10人くらいの人を乗せて走り出す。バスはあの懐かしの三峰ロープウェイのある大輪を通り過ぎ、更に西へと向かう。二瀬ダムへの道を分けるとますます山奥へと入ってきたという感じがしてくる。所々に点在する集落は多くが山の斜面にへばり付くように建っている。私の住んでいるところと比べ、とても同じ埼玉県とは思えない光景である。やがてダムの建設地に近づくとかの有名なループ橋に差し掛かる。バスも前後を行く車もグングンと高度を上げていく。あまりにも高いところを通過するので恐怖すら感じる。ループ橋を通過すると、道は崖地をトラバースするように進んでいく。崩落などが多いのか度々片側が通行規制されている。中津川大橋を右に入ると次々とトンネルを通過していく。しばらく民家も全く無い道を進むが、途中中双里なるところにやはり斜面にへばり付く集落が見える。ここは両神山へ続く梵天尾根の出発点となっている。気が付くとバスには私とお婆さんの二人だけとなっていた。お婆さんは終点の中津川での観光スポットを運転手に聞いていた。
出合でバスを降りると全く民家などはなく、ただ小倉沢集落に向かうトンネルがあるだけである。ここから小倉沢登山口までは約一時間半の車道歩きだ。短いトンネルを過ぎると神流川の渓谷がそそり立っている。断崖絶壁の上にはアカヤシオのピンクの花が点々と咲いているのが見える。車道を歩いていると次々とツーリングのバイクや車が通っていく。思わずヒッチハイクしたくなるところを我慢する。道が二手に分かれるところで舗装された右の道を進むと雁掛トンネルに差し掛かる。トンネルの中は狭く自動車一台が通れるくらいだろう。内部は手掘りで人間の腸の中のように凸凹としている。車は交互通行となっているらしくトンネルに差し掛かる車は一旦外で待ってから入ってくる。トンネルを通過すると目の前には白い築山が見えてくる。
(神流川の渓谷)
(雁掛トンネル)
築山の正体は細かく砕かれた鉱石の山であった。背後には工場も見える。ようやく小倉沢の集落までやって来た。小倉沢集落はニッチツという会社の鉱山集落で、かつては多くの人が暮らしていたというが、今では廃墟となってしまった建物が多い。まだ営業を続けている郵便局を過ぎると廃墟となった小学校などが侘しく存在している。小学校跡を結ぶ朽ち掛けた橋の向こうには赤岩尾根の岩峰が凄まじい。赤岩橋を通り、いよいよ登山口である。人の住んでいると思しき社宅群の奥に集会場が見える。地形図だとこの辺りから登山道が始まっているはずだが、取り付きがわからない。10分ほどウロウロしていると登山口を示す看板を発見する。看板にはザイルなどが必要云々と書いてある。近年鎖が取り付けられたと聞いたが、もし無ければ引き返してこよう。そう決めて登山道に入る。
(小倉沢集落入口)
(赤岩尾根)
(道標 数は少ない)
(赤岩峠・大ナゲシの入口)
ネット上の記録などでは登山口にあった朽ち掛けた丸太橋は、金属製の橋に付け替えられていた。道は踏み跡のはっきりとした分かりやすいもので、藪っぽさはない。沢沿いの杉の植林が心地よい。振り返るとなかなかの急傾斜のためか何時の間にか小倉沢の集落が眼下に見えるようになる。再び歩き出すとガサガサと音がする。何か動物が近くにいるのだろうか。まさか、熊…?しばらく様子を窺っていると5m先くらいの斜面を頭骨大の岩石が落ちていった。ふぅ、事故が無くてよかった。途中から尾根に上がると西側は落葉樹、東側は植林となる。踏み跡は若干薄くなるが、尾根を忠実に上がっていけばよい。目の前に大岩が立ちはだかると道は東に向きを変える。トラバース気味に進むとザレた九十九折になる。かなりの急斜面で足元が滑りやすい。登るにも一苦労だが、下りは相当の恐怖を感じるに違いない。ザレ場が終わると赤岩峠に飛び出す。
(沢沿いの道)
(尾根に上がった所)
赤岩峠は小さな社と古びた道標があるだけの静かなところである。ただ峠特有の強風が群馬側から吹き付けてきて寒い。周囲は落葉樹が多く冬枯れの雰囲気が残る。峠からは大ナゲシと赤岩岳が木の間越しに見える。赤岩岳にも興味をそそられるが今日は出発時間が遅く、既に13時を回っている。とにかく大ナゲシだけでも登るとしよう。西に延びる道は藪もなく依然として歩きやすい。小ピークを一つ越えるとテープが二箇所に付いている。そのまま尾根通しに進むのが1493のピークへの道で、北に下るのが大ナゲシへの道である。1493のピークの北側を巻いて下りていくと大ナゲシの姿が木の間越しに見える。ここから見るとそれほど難しくないようにも見えるのだが…。この辺りで下山する親子連れとすれ違う。大分遅くなってしまったが、まだ人がいるようなので少し安心する。
(赤岩峠)
(赤岩岳を振り返る)
(大ナゲシ)
鞍部から基部までは比較的フラットな道。基部に来ればいよいよ岩登りの始まりである。ルートを示すペンキに従い登り始める。ゴツゴツとした岩場なのでホールドは豊富にある。岩の間からは潅木が生えてきており、これを使っても良さそうだ。鎖の掛かるところは確かに傾斜が急で補助が欲しいところだ。鎖がなければ滑落の危険が高い。鎖自体は潅木に巻きつけてあるだけなのであまり急な加重を掛けるのは避けたい。一段目の鎖場を登りきると今度はテラス状の岩場を巻くように鎖が付けられている。ここのテラスは微妙に下に傾いていて、やはり鎖がないとバランスが取りにくい。テラスを抜けると潅木の生い茂る急傾斜の登りである。潅木に掴まりながら進むと山頂に出た。
(岩場の基部から見上げる)
(岩場の途中)
(テラス状の岩場 ちょっと斜めで怖い)
大ナゲシ(1532.0)の山頂は多少木が邪魔するものの、360°の展望が得られる。赤岩尾根の向こうには両神山らしきピークが見える。八丁尾根はちょうど赤岩尾根に隠されてしまっている。西に目を向けると二つの尖ったピークが顕著だ。右の山は宗四郎山という名が付いているらしい。その二つのピークの左奥にあるのは南天山であろう。北に目を向けると二子山と叶山が顕著である。但し二子山は他の山のハレーションが酷く、風景に溶け込んでしまってややわかりづらい。頭がスパッと切れて白くなっているのが叶山だろう。大ナゲシ山頂には三角点があるだけで人の座れるスペースはあまりない。5人もいれば一杯となってしまうのではないだろうか。あまりに高いところは苦手なのでそろそろ下山することにする。
(大ナゲシ山頂)
(赤岩尾根)
(おそらく宗四郎山方面)
(おそらく叶山方面と思うのだが違うかもしれない)
下り始めはやはり恐い。潅木に掴まって急斜面を下ると先ほどのテラス。鎖に掴まってそろそろと下ると次は崖の下り。鎖のあるところは楽に下れるが最後の鎖の無いところで難儀する。結局ズルズルと滑りながら何とか基部に着く。これで一先ず安心だ。ここまで来ればそれほどあとは難しくない。往路を忠実に辿り、赤岩岳が目の前に迫ってきた。ぼんやりと歩いていたら峠の手前で滑り落ちる。咄嗟に木に掴まったので足は怪我をしなかったが、腕の筋を伸ばしてしまったようだ。大分痛むが下れない程ではない。赤岩峠で一休みして件のザレ場を下ることにする。
(岩場を下る途中)
(赤岩峠手前から赤岩岳を見上げる)
上から見るとかなり急である。だが前を二人連れが下りて行っている。ゆっくりと下ればそれほど難しくはないようだ。踏み跡を忠実に辿りながら落石を起こさぬように下る。するとザレ場の途中で二人連れを追い越してしまった。時間はもう15時近い。おそらく我々が最後の登山者だろう。ザレ場を過ぎると足は快調に進む。社宅街に着いたのは15時半であった。バスの時間まではあと2時間くらいある。ここまで来ればゆっくりと帰ればいい。そこで廃墟となりつつある小倉沢集落を眺めながら出合へ向かう。
(ザレ場を下る)
(両神山の尾根を眺める)
診療所、共同浴場、学校、労働組合の集会場…。廃墟となった建物はただただ侘しさだけが漂っている。訪れる人といえば廃墟マニアか通りすがりのライダーくらいのものである。郵便局を過ぎれば小倉沢集落ともお別れである。また何時か来よう、そしてそのときには赤岩岳でも登ることにしよう。そのときまでこの集落は時が止まったまま残っているのだろうか。出合に戻るとバス時間までまだ1時間もある。目の前を流れる中津川の流れをぼんやりと眺めながら帰路に着いた。
(診療所跡)
(集会場だったかな?)
(社宅だったと思う)
(公衆浴場跡)
(ミツバツツジ)
(労働組合の建物)
(郵便局 当時これだけは現役だったらしい)
(出合 周囲に民家は無かった)
DATA:
三峰口駅(西武観光バス)11:19出合~12:08赤岩橋~13:13赤岩峠~13:26 1493ピークの分岐~13:56大ナゲシ~14:44赤岩峠~15:31赤岩橋
~16:31出合(西武観光バス)三峰口駅
西武観光バス 三峰口駅~出合 中津川行き
地形図 中津川 両神山
記録が古いのでやや記憶が曖昧なのですが、当ブログにおいては難しい上級コースである、と云っていいと思います。
岩登りの技術がそれなりに必要ですし、分岐もテープ等しか無く、西上州の山にある程度慣れていることが望ましいです。
今年のGW、ちょっと用事が出来てしまって山に行けない可能性が大きくなってしまいました。そこでGWの頃に歩いた記録をいくつか公開していく予定です。若干古すぎる記録もあるため、現状とはかなり異なる部分もあるかもしれません。
昨年(注:2006年)の秋、妙義山の山頂コースを歩いた。切り立った岩場には恐怖も感じたが、それ以上の興奮も味わうことができた。またあの興奮を味わってみたい。そんな想いから西上州の山をいくつか物色していたところ、秩父の奥地に大ナゲシなる秘峰が聳えているという。大ナゲシへは群馬県側の野栗沢と埼玉県側の小倉沢どちらからも登ることができる。ならば交通費の掛からない埼玉県側から登ることにしようと計画を立てた。
GWのこの日、朝から快晴である。これだけ天気が良いと暑いくらいかもしれない。西武線と秩父鉄道を乗り継ぎ三峰口駅に着くと、バス停は閑散としている。通常であれば登山客が多いのだろうが、今日は出発が遅く、皆既に山に入ってしまっているのだ。それでも観光なのか地元の人なのか、中津川行きのバスは10人くらいの人を乗せて走り出す。バスはあの懐かしの三峰ロープウェイのある大輪を通り過ぎ、更に西へと向かう。二瀬ダムへの道を分けるとますます山奥へと入ってきたという感じがしてくる。所々に点在する集落は多くが山の斜面にへばり付くように建っている。私の住んでいるところと比べ、とても同じ埼玉県とは思えない光景である。やがてダムの建設地に近づくとかの有名なループ橋に差し掛かる。バスも前後を行く車もグングンと高度を上げていく。あまりにも高いところを通過するので恐怖すら感じる。ループ橋を通過すると、道は崖地をトラバースするように進んでいく。崩落などが多いのか度々片側が通行規制されている。中津川大橋を右に入ると次々とトンネルを通過していく。しばらく民家も全く無い道を進むが、途中中双里なるところにやはり斜面にへばり付く集落が見える。ここは両神山へ続く梵天尾根の出発点となっている。気が付くとバスには私とお婆さんの二人だけとなっていた。お婆さんは終点の中津川での観光スポットを運転手に聞いていた。
出合でバスを降りると全く民家などはなく、ただ小倉沢集落に向かうトンネルがあるだけである。ここから小倉沢登山口までは約一時間半の車道歩きだ。短いトンネルを過ぎると神流川の渓谷がそそり立っている。断崖絶壁の上にはアカヤシオのピンクの花が点々と咲いているのが見える。車道を歩いていると次々とツーリングのバイクや車が通っていく。思わずヒッチハイクしたくなるところを我慢する。道が二手に分かれるところで舗装された右の道を進むと雁掛トンネルに差し掛かる。トンネルの中は狭く自動車一台が通れるくらいだろう。内部は手掘りで人間の腸の中のように凸凹としている。車は交互通行となっているらしくトンネルに差し掛かる車は一旦外で待ってから入ってくる。トンネルを通過すると目の前には白い築山が見えてくる。
(神流川の渓谷)
(雁掛トンネル)
築山の正体は細かく砕かれた鉱石の山であった。背後には工場も見える。ようやく小倉沢の集落までやって来た。小倉沢集落はニッチツという会社の鉱山集落で、かつては多くの人が暮らしていたというが、今では廃墟となってしまった建物が多い。まだ営業を続けている郵便局を過ぎると廃墟となった小学校などが侘しく存在している。小学校跡を結ぶ朽ち掛けた橋の向こうには赤岩尾根の岩峰が凄まじい。赤岩橋を通り、いよいよ登山口である。人の住んでいると思しき社宅群の奥に集会場が見える。地形図だとこの辺りから登山道が始まっているはずだが、取り付きがわからない。10分ほどウロウロしていると登山口を示す看板を発見する。看板にはザイルなどが必要云々と書いてある。近年鎖が取り付けられたと聞いたが、もし無ければ引き返してこよう。そう決めて登山道に入る。
(小倉沢集落入口)
(赤岩尾根)
(道標 数は少ない)
(赤岩峠・大ナゲシの入口)
ネット上の記録などでは登山口にあった朽ち掛けた丸太橋は、金属製の橋に付け替えられていた。道は踏み跡のはっきりとした分かりやすいもので、藪っぽさはない。沢沿いの杉の植林が心地よい。振り返るとなかなかの急傾斜のためか何時の間にか小倉沢の集落が眼下に見えるようになる。再び歩き出すとガサガサと音がする。何か動物が近くにいるのだろうか。まさか、熊…?しばらく様子を窺っていると5m先くらいの斜面を頭骨大の岩石が落ちていった。ふぅ、事故が無くてよかった。途中から尾根に上がると西側は落葉樹、東側は植林となる。踏み跡は若干薄くなるが、尾根を忠実に上がっていけばよい。目の前に大岩が立ちはだかると道は東に向きを変える。トラバース気味に進むとザレた九十九折になる。かなりの急斜面で足元が滑りやすい。登るにも一苦労だが、下りは相当の恐怖を感じるに違いない。ザレ場が終わると赤岩峠に飛び出す。
(沢沿いの道)
(尾根に上がった所)
赤岩峠は小さな社と古びた道標があるだけの静かなところである。ただ峠特有の強風が群馬側から吹き付けてきて寒い。周囲は落葉樹が多く冬枯れの雰囲気が残る。峠からは大ナゲシと赤岩岳が木の間越しに見える。赤岩岳にも興味をそそられるが今日は出発時間が遅く、既に13時を回っている。とにかく大ナゲシだけでも登るとしよう。西に延びる道は藪もなく依然として歩きやすい。小ピークを一つ越えるとテープが二箇所に付いている。そのまま尾根通しに進むのが1493のピークへの道で、北に下るのが大ナゲシへの道である。1493のピークの北側を巻いて下りていくと大ナゲシの姿が木の間越しに見える。ここから見るとそれほど難しくないようにも見えるのだが…。この辺りで下山する親子連れとすれ違う。大分遅くなってしまったが、まだ人がいるようなので少し安心する。
(赤岩峠)
(赤岩岳を振り返る)
(大ナゲシ)
鞍部から基部までは比較的フラットな道。基部に来ればいよいよ岩登りの始まりである。ルートを示すペンキに従い登り始める。ゴツゴツとした岩場なのでホールドは豊富にある。岩の間からは潅木が生えてきており、これを使っても良さそうだ。鎖の掛かるところは確かに傾斜が急で補助が欲しいところだ。鎖がなければ滑落の危険が高い。鎖自体は潅木に巻きつけてあるだけなのであまり急な加重を掛けるのは避けたい。一段目の鎖場を登りきると今度はテラス状の岩場を巻くように鎖が付けられている。ここのテラスは微妙に下に傾いていて、やはり鎖がないとバランスが取りにくい。テラスを抜けると潅木の生い茂る急傾斜の登りである。潅木に掴まりながら進むと山頂に出た。
(岩場の基部から見上げる)
(岩場の途中)
(テラス状の岩場 ちょっと斜めで怖い)
大ナゲシ(1532.0)の山頂は多少木が邪魔するものの、360°の展望が得られる。赤岩尾根の向こうには両神山らしきピークが見える。八丁尾根はちょうど赤岩尾根に隠されてしまっている。西に目を向けると二つの尖ったピークが顕著だ。右の山は宗四郎山という名が付いているらしい。その二つのピークの左奥にあるのは南天山であろう。北に目を向けると二子山と叶山が顕著である。但し二子山は他の山のハレーションが酷く、風景に溶け込んでしまってややわかりづらい。頭がスパッと切れて白くなっているのが叶山だろう。大ナゲシ山頂には三角点があるだけで人の座れるスペースはあまりない。5人もいれば一杯となってしまうのではないだろうか。あまりに高いところは苦手なのでそろそろ下山することにする。
(大ナゲシ山頂)
(赤岩尾根)
(おそらく宗四郎山方面)
(おそらく叶山方面と思うのだが違うかもしれない)
下り始めはやはり恐い。潅木に掴まって急斜面を下ると先ほどのテラス。鎖に掴まってそろそろと下ると次は崖の下り。鎖のあるところは楽に下れるが最後の鎖の無いところで難儀する。結局ズルズルと滑りながら何とか基部に着く。これで一先ず安心だ。ここまで来ればそれほどあとは難しくない。往路を忠実に辿り、赤岩岳が目の前に迫ってきた。ぼんやりと歩いていたら峠の手前で滑り落ちる。咄嗟に木に掴まったので足は怪我をしなかったが、腕の筋を伸ばしてしまったようだ。大分痛むが下れない程ではない。赤岩峠で一休みして件のザレ場を下ることにする。
(岩場を下る途中)
(赤岩峠手前から赤岩岳を見上げる)
上から見るとかなり急である。だが前を二人連れが下りて行っている。ゆっくりと下ればそれほど難しくはないようだ。踏み跡を忠実に辿りながら落石を起こさぬように下る。するとザレ場の途中で二人連れを追い越してしまった。時間はもう15時近い。おそらく我々が最後の登山者だろう。ザレ場を過ぎると足は快調に進む。社宅街に着いたのは15時半であった。バスの時間まではあと2時間くらいある。ここまで来ればゆっくりと帰ればいい。そこで廃墟となりつつある小倉沢集落を眺めながら出合へ向かう。
(ザレ場を下る)
(両神山の尾根を眺める)
診療所、共同浴場、学校、労働組合の集会場…。廃墟となった建物はただただ侘しさだけが漂っている。訪れる人といえば廃墟マニアか通りすがりのライダーくらいのものである。郵便局を過ぎれば小倉沢集落ともお別れである。また何時か来よう、そしてそのときには赤岩岳でも登ることにしよう。そのときまでこの集落は時が止まったまま残っているのだろうか。出合に戻るとバス時間までまだ1時間もある。目の前を流れる中津川の流れをぼんやりと眺めながら帰路に着いた。
(診療所跡)
(集会場だったかな?)
(社宅だったと思う)
(公衆浴場跡)
(ミツバツツジ)
(労働組合の建物)
(郵便局 当時これだけは現役だったらしい)
(出合 周囲に民家は無かった)
DATA:
三峰口駅(西武観光バス)11:19出合~12:08赤岩橋~13:13赤岩峠~13:26 1493ピークの分岐~13:56大ナゲシ~14:44赤岩峠~15:31赤岩橋
~16:31出合(西武観光バス)三峰口駅
西武観光バス 三峰口駅~出合 中津川行き
地形図 中津川 両神山
記録が古いのでやや記憶が曖昧なのですが、当ブログにおいては難しい上級コースである、と云っていいと思います。
岩登りの技術がそれなりに必要ですし、分岐もテープ等しか無く、西上州の山にある程度慣れていることが望ましいです。