(秩父御岳山頂上)
奥秩父の玄関口である秩父鉄道三峰口駅の北西に秩父御岳山という山がある。木曽御嶽山王滝口を開いたことで知られる普寛行者が開山した山であり、南麓の落合地区は普寛の出身地としても知られている。現在は三峰口駅から歩いて登ることができる山として親しまれており、奥秩父の初歩的な存在であるともいえる。
山歩きを始めた十数年前から歩いてみたいと思っていた山であったが、中途半端に遠い場所にあり、熊倉山とともにこれまで後回しになっていた。ところが一昨年に熊倉山、昨年は釜ノ沢五峰と奥武蔵の主要ピークはほぼ歩き終わったため、いよいよ秩父御岳山に取り掛かることにした。登山ルートは三峰口駅近くの贄川(にえがわ)町分からスタートし、山頂を経て杉ノ峠へと下る。その後、通常は温泉のある落合か駅近の強石(こわいし)へと下るのだが、今回は落合へ下る途中にある林道を使って大達原(おおだはら)地区へ寄り、手掘りの隧道(トンネル)を通って三峰口駅へ戻る計画を立てた。
三峰口駅から高岩
1月から続いていた仕事から解放され、久しぶりに平日登山をすることにした。小手指駅出発ということもあり、特に通勤ラッシュに巻き込まれることもなく、三峰口駅に着く。駅を降りたのは登山客あるいは観光客らしき人が多い。駅舎横のベンチで出発準備をしていると掃除をしていた地元の男性に声を掛けられる。どうやらボクより先に秩父御岳山へと向かった人がいるらしい。平日ということもあり、心細かったのだが、とりあえず独りぼっちの登山は避けられそうだ。駅前の道路に出ると眼前に山並みが迫る。奥に見える白い筋の入った山が秩父御岳山であるらしい。
(三峰口駅前から 左奥の山が御岳山であるらしい)
道路を西に進み、荒川に架かる白川橋を渡る。荒川がつくった谷はかなり深い。橋から40,50mはありそうだ。国道140号に出て、東へ少し下る。すると歩道橋が置かれた辺りに贄川宿への道が分岐している。かかしの里と書かれた看板があり、可愛い案山子が出迎えてくれる。贄川宿への道を上がると観光トイレがあり、その脇に秩父御岳山の登山口を示す看板が立っている。舗装路を進むと開けた農地に出て、その中を山道が延びている。
(白川橋から荒川を見下ろす)
(贄川宿の入口)
(農地の中に登山口がある)
農地を抜けるとまずは九十九折の道が待ち受ける。登山口から標高差200mほどの急坂を登っていかなければならない。早朝からなかなか辛い道だが、洗堀されている割には歩きやすく整備されている。暗い杉の植林帯を登っていくと開けた送電鉄塔(三峰線26号)下に出る。見晴らしの良い岩尾根からは三峰口駅から白久駅にかけての集落を見渡すことができる。そして荒川がつくった谷の向こうには三角の山頂を突き出した武甲山が顕著だ。
(九十九折を登る 山中にいくつかお墓があるため石段が設置されている)
(送電鉄塔下の岩場)
(岩場からの眺め 三峰口駅が見えるので駅からこの岩場が見えるのではないかと思う)
(送電鉄塔 岩場は鉄塔とは反対側を下った所にある)
尾根を外れ、トラバースしながら再びきつい九十九折を登っていく。まだ序盤なので体力は使いたくないのだが、つい頑張ってしまう。尾根に出るところでカラフルな服を着た先行者を見かける。山頂に着くまでには追い付きそうだ。尾根の東端は開けた岩場になっていて、眺めが良さそうだ。木に括りつけられた標識によると高岩(たかや)というらしい。思ったよりも狭い岩からは先ほどと同じように三峰口から白久にかけての集落と武甲山を望むことができる。
(高岩)
(高岩からの眺め)
(高岩のすぐそばにこの標識があるので見落とすことはないだろう)
秩父御岳山の山頂へ
縦走路に戻り、雑木林の尾根を行く。やや急な坂が続くが、檜の植林帯に入ると広い平場に出る。スマホの地図ロイドで位置を調べるとちょうど名無しの双耳峰の鞍部に乗り上げたところであった。ここから縦走路は顕著なピークを巻きながら猪狩山分岐であるタツミチまでダラダラとした長い登りとなる。所々傾斜の急な所を挟み、九十九折に付けられている道も多い。植林帯の中、単調な道が続き、精神的にやや辛い。道標が立つ平場で途中先行していた男性を追い抜く。この道に大分苦戦しているようだ。
(鉄塔を過ぎるとしばしフラットな尾根が続く この先は急坂となる)
(双耳峰の鞍部に出る)
(顕著なピークは巻いてしまうので平場は鞍部となっていることが多い)
タツミチ手前の東に派生した尾根に付けられた急坂を登りきると冷たい北風が吹きつけてくる。ようやく御岳山が近づいてきたという実感が湧いてくる。そのままの勢いで猪狩山・古池の分岐を示す道標が立つタツミチに出る。南側は檜の植林、北側は雑木林となっていて、北の猪狩山に向かって良い道が延びている。御岳山頂上に向かってはやや細い岩尾根が続き、若干歩きにくい所もある。しばらくフラットな尾根を行くと頭上高くに斜面が迫ってくる。ここが最後の難所で標高差は80mくらいだろうか。植林帯の尾根を左からトラバースしていき、九十九折に登っていく。九十九折が終わると御岳山の肩のような所に出る。山頂まではあと少し。すると前方から女性二人組がやってくる。結局山中で出会ったのはこの女性たちと追い抜いた男性だけであった。
(タツミチ)
(タツミチから秩父御岳山側を見る)
(細い岩尾根を行く 北側が明るい)
(頭上高くまで尾根が延びる ここの登りはきつかった…)
(急斜面の九十九折 直線的に登らないだけ良い)
山頂手前は細い岩尾根で疲れた体だと少々怖い。ここを過ぎると杉ノ峠分岐に出る。植林に覆われた暗い所だが、ベンチがあるので、昼食はここで取ることにしよう。分岐の先は明るい雑木林が山頂まで続く。不動明王のお堂を過ぎ、狛犬の置かれた石段を上がると普寛行者が祀られたお堂が立つ秩父御岳山頂上(1080.4)に着く。お堂の裏手に回ると山座同定盤があり、やや枝に邪魔されつつも西に向かって展望が得られる。
(杉ノ峠分岐 強石分岐となっているが落合へも下れるので杉ノ峠分岐とした)
(不動明王のお堂 奥が山頂)
(狛犬)
(秩父御岳山頂上 左後ろに両神山が見えるなどロケーションは良い)
(山座同定盤があるが錆び付いてよくわからない)
南側には手前に三峰神社のある尾根が左へ向かって延びる。途中折り返すように奥の尾根が右に延びて白岩山・芋ノ木ドッケを経て雲取山が控えめに盛り上がる。更に右へ大きな谷を有する鈍重なピークは飛竜山(と山座同定盤には書かれてるように見えたのだが、やはりどう考えても和名倉山だろう)。それより西の山は図体の大きな和名倉山に隠れてしまっているが、木賊山・甲武信ヶ岳・三宝山の三連は見えているようだ。西は御岳山から両神山へと続く尾根が見渡せ、櫛形の両神山が大きく聳える。両神山の右には白い雪を被った浅間山もよく見える。山頂の北側も木に邪魔される所が多いが、御荷鉾山の双耳峰が目立つ。冬枯れの時期限定ではあるが、なかなかの好展望だといえる。
(南側の展望 三峰山から和名倉山にかけて)
(西側の展望 右に見える両神山が顕著)
(北側の展望 左に見える目立つ双耳峰は御荷鉾山)
険しい岩尾根を下って杉ノ峠
山頂から杉ノ峠分岐に戻って昼食の準備をする。ベンチでカップラーメンを作るが、ベンチの隙間に溜まった水が凍ってカチカチになっている位に寒い場所だと早く気付くべきだった。お湯を沸かすがなかなか沸騰しない。ラーメンが出来て食べ始める頃には吹き付ける風のせいですっかり体が冷えてしまった。ラーメン作りに悪戦苦闘していると先ほど追い抜いた男性がやって来た。表情を見ていると疲労の色が濃い。確かにしんどい道だった。ラーメンを食べ終えるとすぐに出発。食べてすぐに動くのは食道炎には良くないのだが、40分以上も滞在していたのでそろそろ下らないと大達原のトンネルに行くのが難しくなってしまう。
杉ノ峠への分岐に立つ案内板には「急坂のヤセ尾根で注意が必要」とあったが、下り始めは広く緩やかな尾根が続く。広い鞍部に出ると緩く登り返す。一様に下っていくものとばかり思っていたが、地形図を見ると二か所顕著なピークがある。この先と杉ノ峠の手前だ。細長い山頂を越えると案内板にあったとおりの急坂が始まる。ザレたヤセ尾根で足元は不安定。路肩は切り立っているため、立木に寄り掛かるのも難しい。秩父御岳山までの登りでかなり体力を使ってしまったので、この厳しい下りにかなり手古摺る。唯一周囲が雑木林で明るいのが救いだ。
(広い尾根の鞍部 ここまでは歩きやすい道だ)
(御岳山南東にあるピークの頂上付近)
(次第に傾斜が急になる)
(歩きにくい岩尾根 傾斜が急なだけでなく、足の踏み場が小さいのが問題)
植林帯に入ると尾根が広がる。傾斜は急なままだが、大分歩きやすい。ジグザグに下りていくと林道が現れる。手持ちの地形図になかったので面食らったが、林道に下りると御岳山線という名が付けられていることがわかった。御岳山線を横切るとフラットな歩きやすい尾根が続く。下るにつれて尾根は広がり、838m峰手前の鞍部には錆び付いた看板が道端に横たわっている。かすかに剣ヶ峰という文字が読み取れたのだが、どの辺りを指すのだろう?鞍部からは緩やかに登り返す。途中巨大な白い看板が立てられていたが、荒川ダム総合管理所が管理する反射板だという。
(尾根が広がれば緊張からは解放される)
(ここを下りきれば急な所はない)
(林道御岳山線)
(ダムの反射板)
反射板を過ぎて5分と掛からない内に送電鉄塔の立つ838m峰に着く。現地の案内板にも眺めが良いと書かれていたように、鉄塔の周囲は伐採され、東西それぞれで展望を得られる。東側は眼下に強石、三峰口駅周辺の集落が見渡せ、その奥に武甲山などの秩父盆地を取り囲む山並みが見える。西側で顕著なのはエメラルドグリーンの水を湛える滝沢ダム(奥秩父もみじ湖)だ。滝沢ダムの右側(北側)には詳細不明な山並みがいくつも聳え、秩父御岳山は手前にある山頂を天に突き出す鋭鋒によって隠れてしまっている。倒れていた看板に書かれていた剣ヶ峰とはこの鋭鋒のことではないだろうか。
(838m峰に着く)
(東側の展望 右端は武甲山 中央手前の集落が強石地区)
(西側の展望 左に見えるのが滝沢ダム 右の鋭鋒が剣ヶ峰ではないかと思う)
838m峰を越えると尾根が二手に分かれる。道標に従って左に行き、小ピークを越えると最後の急坂だ。眼前に数本の杉の大木が見えてくれば杉ノ峠に着く。鞍部に作られたシンプルな峠で、強石と落合の両集落からの道が現在でも延びている。荒川沿いの国道が整備され、クルマを気軽に所有できるようになる前は、この峠を越えるのが近道であったに違いない。案内板を改めて見てみるとどちらの峠道も昨年の台風19号の影響で道が悪くなっているらしい。林道御岳山線も不通となっているが、大達原へ行くことは可能なのだろうか?
(杉ノ峠)
(写真ではわかりにくいが背後の杉もなかなかの大木)
(強石側の様子)
長い林道歩きを経て大達原の手掘り隧道
峠から落合へ下る道に入る。古から存在する峠道にしては踏み跡が薄い。下ってすぐに作業用の林道が見えてくる。踏み跡が薄かったのはこの林道建設の影響があるのかもしれない。林道はいくつも分岐があるが、只管下っていけばいい。広い九十九折を快調に下っていくと林道御岳山線に出る手前で台風による土砂崩れ現場に出くわす。作業道は埋め尽くされているが、その上を越えていくことはできる。御岳山線へ下ると落合への登山道が延びており、一見したところでは特に台風の影響は受けていないように感じた。
(落合への道に入るとすぐに林道にぶつかる)
(台風19号による土砂崩れの跡)
(林道御岳山線が通っている)
(落合への道 通行止の看板は御岳山線に対してのもの)
さてこのまま落合へ下っても良いのだが、まだ正午を回ってそれほど経っていない。予定通り大達原へ向かおう。林道御岳山線は未舗装で抉れた所などもあって少々歩きにくい。ただ下り坂が続くので下山ルートとしては助かる。5分ほど下ると落合へ下る林道が分岐する。案内板によると杉ノ峠線という名が付いているようだ。この分岐を過ぎると長い未舗装の林道歩きが続く。展望が開ける所があるでもなく、単調な道が続いて精神的にはかなり疲れる。
(右に下るのが杉ノ峠線 杉ノ峠線を下っても落合へ下れるが通行止となっていた)
無心で歩いていくと道が舗装路へ変わる。すると間もなく神岡への分岐に出る。ここから先は林道大輪線だ。林道は南西へ突き出た尾根を越えるため、結構急な上り坂となる。しんどい所ではあるが、メガソーラーの設置によって大きく伐採され、神岡地区を見下ろす眺めは良い。尾根を越えると再び暗い植林帯を抜けていく。微妙にアップダウンがあるのが厭らしい。大達原地区に入る手前に大輪分岐があり、純然たる山道が下っている。若干荒れ気味だがエスケープには使えそうだ。
(林道大輪線に出る 左が大達原への道だ)
(神岡地区を見下ろす)
(林道大輪線 若干のアップダウンがある)
(大輪分岐 上から見た限りでも荒れた感じであった)
大輪分岐を過ぎると大達原地区だ。山の中腹の緩斜面に作られた集落で建物は思ったよりも多い。集落の中心には稲荷神社があり、神楽殿も設けられている。稲荷神社の隣には屋号を掲げた大きな民家があり、その脇には高札場が保存されている。大きな民家はかつて村の名主だったという。高札場を過ぎると道標が立ち、道路は国道へ向かって下っていく。道標に従い強石方面へ入ると民家の前で舗装路は途切れている。ちょっと迷ったが、そのまま舗装路の先へ進むと植林の中に山道が延びている。山道に入ると道標があり、道が間違いではないことがわかって安心する。なお、山道と書かれた方へ登っていくと現在は不通の大達原峠に行くことができるというが、ボクはその事実を知らなかったのでそのまま通過してしまった。
(大達原地区に入る)
(大達原稲荷神社)
(大達原の高札場 そばにある枝垂桜も有名だとか)
(前の道路を下ると国道に出る トンネルに向かうなら民家前の道を進む必要がある)
(民家脇を抜けると道が延び、この道標がある 左斜め上に向かうのは大達原峠への道)
暗い植林帯を抜けると資材が置かれ、道は行き止まりだ。トンネルはどこだと訝しがりながら資材置き場へ近づくと脇の岩場に小さなトンネルが現れる。これが大達原の手掘り隧道だ。トンネルを抜けた先にある案内板によると明治中期以後に掘られたもので、幅は3.45m、高さは4.8m、長さは40.5mあるという。中は手掘りの跡を感じさせるゴツゴツとした岩が剥き出しになっている。思ったよりも広く小さいと言っては失礼だろう。トンネルを抜けるとベンチが置かれているので、ザックを下ろしてトンネルを振り返る。石仏や馬頭観音の石碑も気にはなったが、何より驚いたのはオーバーハング気味に覆いかぶさろうとする大きな岩場であった。
(大達原の手掘り隧道 第一印象だと小さく感じる)
(大達原側の入口)
(内部はこんな感じ 手掘りの跡が良い)
(強石側に出る ベンチがあるので休んでいくにも良い)
(強石側から振り返る)
(トンネルの案内板)
(強石側から見たトンネル入口)
(オーバーハング気味の岩壁に圧倒される)
トラバース道を下って三峰口駅へ戻る
今日二つ目の目的も達成し、後は駅へ戻るだけだ。トンネルを抜けた先にも道は続いており、地形図を見た限りでは強石地区の手前まで延びているらしい。明治大正期の古い地形図にはここがメインルートとして描かれていて、荒川沿いの国道はまだ存在していなかった。国道が描かれ、このルートが旧道扱いになったのは昭和初期の地形図の頃からだ。始めは割と整備された道が下っているが、急な崖地に作られたこともあり、土砂で埋もれてしまっている所が多い。転落防止用の金属製フェンスがぐにゃりと折れ曲がって用をなさなくなっている。幸い、今でも整備は入っているらしく、ロープで仕切ってあるので、谷側に寄り過ぎなければ問題はない。怖いのは不意の落石くらいだ。
(トンネル付近は割と良い道)
(馬頭尊)
(金属製フェンスは意味を成していない)
(土砂崩れで埋もれてしまってその上に新たにロープの仕切りがある)
(この辺りが一番歩きにくい)
トンネルから10分弱で荒れた道も終わる。広く整備された道が続き、本来は軽いハイキングルートとして楽しめる所なのだろう。かつて山歩きを始める十数年前に母親と三峰ロープウェイに乗りに来たことがあったが、その頃西武鉄道が発行していたハイキングマップにはこの辺りのルートが掲載されていた記憶がある。山歩きが定着したレジャーとなった現在、こうした山頂を目指さないルートにもっと脚光が当たってほしいと願う。
(ようやく道が落ち着く それでも落石には要注意)
(このくらいの道が続くなら十分軽いハイキングルートなのだが)
旧光岩小学校を示す道標が立つ所で一旦林道に出る。林道を進むと光岩の稲荷神社がある。稲荷神社を過ぎると再び道標が立ち、国道への道が下っている。入口はロープで仕切られているが、看板には通行注意としか書かれていないので、下ることはできるようだ。山道に入ると特に支障となるような所はなく、むしろ歩きやすいと言っていい。流石はかつての生活道路だと感心していると一か所だけ土砂で道が流されている所がある。ただこの程度なら通常の登山道のほうが危険と感じられるレベルだろう。一応落石には注意するが難なく通過する。石段を下れば後は国道に出るだけだが、ここもロープで仕切ってある。ご丁寧にこちらは上下で止めているので通り抜けるのに一苦労だ。ここまで厳重にするのであればいっそ通行止めにしたほうがいい。
(林道に出るとすぐに光岩の稲荷神社がある 神社へはちょっとした登りがある)
(ここを下りきれば国道に出られる)
(岩の切通しがある 良く整備された道だ)
(一か所だけ崩落がある)
(国道の入口部分 これは通るの大変でっせ)
国道の歩道を進み、強石の集落に着く。杉ノ峠から直接下ってきた場合は40分程度しか掛からないというから、1時間以上余分に掛かったことになる。万年橋で荒川を渡り、右岸の道を行く。しっかり整備された道路だが、クルマは全く通らない。静かな道を歩きたい人にはこの右岸の道がおススメだ。朝渡った白川橋が見えてくれば三峰口駅は近い。駅に着く直前、バスが追い抜いて駅で乗客を降ろしている。「これはすぐに電車がやって来そうだな」と思って駅舎に入ると予想通り上りの電車が入って来たのであった。
(強石地区 右へ下るのが万年橋への道)
(荒川に作られた水力発電所)
(万年橋)
(橋から見た水力発電所)
(橋から下流を覗く)
(右岸の道路は交通量が少ない)
(白川橋が見えてきた)
(地元の丸太で出来た東屋)
(三峰口駅の駅舎 右奥に屋根付きのベンチがあり、休憩に良い)
DATA:
三峰口駅8:24→8:35贄川宿観光トイレ→8:39御岳山登山口→8:51三峰線26号鉄塔→9:04二番高岩→10:02猪狩山分岐(タツミチ)→10:30秩父御岳山(1080.4)11:12→11:39林道御岳山線→11:58三峰線鉄塔(838m峰)→12:10杉ノ峠→12:24林道御岳山線(落合分岐)→12:30林道杉ノ峠線との分岐→12:52神岡分岐→13:12大輪分岐→13:13大達原地区→13:22大達原の手掘りの隧道→13:40旧光岩小学校分岐→13:49国道140号→13:56万年橋→14:20三峰口駅
地形図 三峰
トイレ 贄川宿観光トイレ
交通機関
西武池袋・秩父線 小手指~西武秩父 510円(往復)
秩父鉄道秩父線 御花畑~三峰口 450円(往復)
以上、秩父フリーきっぷで1820円
参考図書 大久根茂著「奥武蔵・秩父 峠歩きガイド」(株式会社さきたま出版会)
今回歩いたルートに関しては台風による危険個所は特にありません。むしろ秩父御岳山頂上付近の岩尾根や杉ノ峠へ下りる途中の岩尾根のほうが危険度は高いでしょう。
奥秩父の玄関口である秩父鉄道三峰口駅の北西に秩父御岳山という山がある。木曽御嶽山王滝口を開いたことで知られる普寛行者が開山した山であり、南麓の落合地区は普寛の出身地としても知られている。現在は三峰口駅から歩いて登ることができる山として親しまれており、奥秩父の初歩的な存在であるともいえる。
山歩きを始めた十数年前から歩いてみたいと思っていた山であったが、中途半端に遠い場所にあり、熊倉山とともにこれまで後回しになっていた。ところが一昨年に熊倉山、昨年は釜ノ沢五峰と奥武蔵の主要ピークはほぼ歩き終わったため、いよいよ秩父御岳山に取り掛かることにした。登山ルートは三峰口駅近くの贄川(にえがわ)町分からスタートし、山頂を経て杉ノ峠へと下る。その後、通常は温泉のある落合か駅近の強石(こわいし)へと下るのだが、今回は落合へ下る途中にある林道を使って大達原(おおだはら)地区へ寄り、手掘りの隧道(トンネル)を通って三峰口駅へ戻る計画を立てた。
三峰口駅から高岩
1月から続いていた仕事から解放され、久しぶりに平日登山をすることにした。小手指駅出発ということもあり、特に通勤ラッシュに巻き込まれることもなく、三峰口駅に着く。駅を降りたのは登山客あるいは観光客らしき人が多い。駅舎横のベンチで出発準備をしていると掃除をしていた地元の男性に声を掛けられる。どうやらボクより先に秩父御岳山へと向かった人がいるらしい。平日ということもあり、心細かったのだが、とりあえず独りぼっちの登山は避けられそうだ。駅前の道路に出ると眼前に山並みが迫る。奥に見える白い筋の入った山が秩父御岳山であるらしい。
(三峰口駅前から 左奥の山が御岳山であるらしい)
道路を西に進み、荒川に架かる白川橋を渡る。荒川がつくった谷はかなり深い。橋から40,50mはありそうだ。国道140号に出て、東へ少し下る。すると歩道橋が置かれた辺りに贄川宿への道が分岐している。かかしの里と書かれた看板があり、可愛い案山子が出迎えてくれる。贄川宿への道を上がると観光トイレがあり、その脇に秩父御岳山の登山口を示す看板が立っている。舗装路を進むと開けた農地に出て、その中を山道が延びている。
(白川橋から荒川を見下ろす)
(贄川宿の入口)
(農地の中に登山口がある)
農地を抜けるとまずは九十九折の道が待ち受ける。登山口から標高差200mほどの急坂を登っていかなければならない。早朝からなかなか辛い道だが、洗堀されている割には歩きやすく整備されている。暗い杉の植林帯を登っていくと開けた送電鉄塔(三峰線26号)下に出る。見晴らしの良い岩尾根からは三峰口駅から白久駅にかけての集落を見渡すことができる。そして荒川がつくった谷の向こうには三角の山頂を突き出した武甲山が顕著だ。
(九十九折を登る 山中にいくつかお墓があるため石段が設置されている)
(送電鉄塔下の岩場)
(岩場からの眺め 三峰口駅が見えるので駅からこの岩場が見えるのではないかと思う)
(送電鉄塔 岩場は鉄塔とは反対側を下った所にある)
尾根を外れ、トラバースしながら再びきつい九十九折を登っていく。まだ序盤なので体力は使いたくないのだが、つい頑張ってしまう。尾根に出るところでカラフルな服を着た先行者を見かける。山頂に着くまでには追い付きそうだ。尾根の東端は開けた岩場になっていて、眺めが良さそうだ。木に括りつけられた標識によると高岩(たかや)というらしい。思ったよりも狭い岩からは先ほどと同じように三峰口から白久にかけての集落と武甲山を望むことができる。
(高岩)
(高岩からの眺め)
(高岩のすぐそばにこの標識があるので見落とすことはないだろう)
秩父御岳山の山頂へ
縦走路に戻り、雑木林の尾根を行く。やや急な坂が続くが、檜の植林帯に入ると広い平場に出る。スマホの地図ロイドで位置を調べるとちょうど名無しの双耳峰の鞍部に乗り上げたところであった。ここから縦走路は顕著なピークを巻きながら猪狩山分岐であるタツミチまでダラダラとした長い登りとなる。所々傾斜の急な所を挟み、九十九折に付けられている道も多い。植林帯の中、単調な道が続き、精神的にやや辛い。道標が立つ平場で途中先行していた男性を追い抜く。この道に大分苦戦しているようだ。
(鉄塔を過ぎるとしばしフラットな尾根が続く この先は急坂となる)
(双耳峰の鞍部に出る)
(顕著なピークは巻いてしまうので平場は鞍部となっていることが多い)
タツミチ手前の東に派生した尾根に付けられた急坂を登りきると冷たい北風が吹きつけてくる。ようやく御岳山が近づいてきたという実感が湧いてくる。そのままの勢いで猪狩山・古池の分岐を示す道標が立つタツミチに出る。南側は檜の植林、北側は雑木林となっていて、北の猪狩山に向かって良い道が延びている。御岳山頂上に向かってはやや細い岩尾根が続き、若干歩きにくい所もある。しばらくフラットな尾根を行くと頭上高くに斜面が迫ってくる。ここが最後の難所で標高差は80mくらいだろうか。植林帯の尾根を左からトラバースしていき、九十九折に登っていく。九十九折が終わると御岳山の肩のような所に出る。山頂まではあと少し。すると前方から女性二人組がやってくる。結局山中で出会ったのはこの女性たちと追い抜いた男性だけであった。
(タツミチ)
(タツミチから秩父御岳山側を見る)
(細い岩尾根を行く 北側が明るい)
(頭上高くまで尾根が延びる ここの登りはきつかった…)
(急斜面の九十九折 直線的に登らないだけ良い)
山頂手前は細い岩尾根で疲れた体だと少々怖い。ここを過ぎると杉ノ峠分岐に出る。植林に覆われた暗い所だが、ベンチがあるので、昼食はここで取ることにしよう。分岐の先は明るい雑木林が山頂まで続く。不動明王のお堂を過ぎ、狛犬の置かれた石段を上がると普寛行者が祀られたお堂が立つ秩父御岳山頂上(1080.4)に着く。お堂の裏手に回ると山座同定盤があり、やや枝に邪魔されつつも西に向かって展望が得られる。
(杉ノ峠分岐 強石分岐となっているが落合へも下れるので杉ノ峠分岐とした)
(不動明王のお堂 奥が山頂)
(狛犬)
(秩父御岳山頂上 左後ろに両神山が見えるなどロケーションは良い)
(山座同定盤があるが錆び付いてよくわからない)
南側には手前に三峰神社のある尾根が左へ向かって延びる。途中折り返すように奥の尾根が右に延びて白岩山・芋ノ木ドッケを経て雲取山が控えめに盛り上がる。更に右へ大きな谷を有する鈍重なピークは
(南側の展望 三峰山から和名倉山にかけて)
(西側の展望 右に見える両神山が顕著)
(北側の展望 左に見える目立つ双耳峰は御荷鉾山)
険しい岩尾根を下って杉ノ峠
山頂から杉ノ峠分岐に戻って昼食の準備をする。ベンチでカップラーメンを作るが、ベンチの隙間に溜まった水が凍ってカチカチになっている位に寒い場所だと早く気付くべきだった。お湯を沸かすがなかなか沸騰しない。ラーメンが出来て食べ始める頃には吹き付ける風のせいですっかり体が冷えてしまった。ラーメン作りに悪戦苦闘していると先ほど追い抜いた男性がやって来た。表情を見ていると疲労の色が濃い。確かにしんどい道だった。ラーメンを食べ終えるとすぐに出発。食べてすぐに動くのは食道炎には良くないのだが、40分以上も滞在していたのでそろそろ下らないと大達原のトンネルに行くのが難しくなってしまう。
杉ノ峠への分岐に立つ案内板には「急坂のヤセ尾根で注意が必要」とあったが、下り始めは広く緩やかな尾根が続く。広い鞍部に出ると緩く登り返す。一様に下っていくものとばかり思っていたが、地形図を見ると二か所顕著なピークがある。この先と杉ノ峠の手前だ。細長い山頂を越えると案内板にあったとおりの急坂が始まる。ザレたヤセ尾根で足元は不安定。路肩は切り立っているため、立木に寄り掛かるのも難しい。秩父御岳山までの登りでかなり体力を使ってしまったので、この厳しい下りにかなり手古摺る。唯一周囲が雑木林で明るいのが救いだ。
(広い尾根の鞍部 ここまでは歩きやすい道だ)
(御岳山南東にあるピークの頂上付近)
(次第に傾斜が急になる)
(歩きにくい岩尾根 傾斜が急なだけでなく、足の踏み場が小さいのが問題)
植林帯に入ると尾根が広がる。傾斜は急なままだが、大分歩きやすい。ジグザグに下りていくと林道が現れる。手持ちの地形図になかったので面食らったが、林道に下りると御岳山線という名が付けられていることがわかった。御岳山線を横切るとフラットな歩きやすい尾根が続く。下るにつれて尾根は広がり、838m峰手前の鞍部には錆び付いた看板が道端に横たわっている。かすかに剣ヶ峰という文字が読み取れたのだが、どの辺りを指すのだろう?鞍部からは緩やかに登り返す。途中巨大な白い看板が立てられていたが、荒川ダム総合管理所が管理する反射板だという。
(尾根が広がれば緊張からは解放される)
(ここを下りきれば急な所はない)
(林道御岳山線)
(ダムの反射板)
反射板を過ぎて5分と掛からない内に送電鉄塔の立つ838m峰に着く。現地の案内板にも眺めが良いと書かれていたように、鉄塔の周囲は伐採され、東西それぞれで展望を得られる。東側は眼下に強石、三峰口駅周辺の集落が見渡せ、その奥に武甲山などの秩父盆地を取り囲む山並みが見える。西側で顕著なのはエメラルドグリーンの水を湛える滝沢ダム(奥秩父もみじ湖)だ。滝沢ダムの右側(北側)には詳細不明な山並みがいくつも聳え、秩父御岳山は手前にある山頂を天に突き出す鋭鋒によって隠れてしまっている。倒れていた看板に書かれていた剣ヶ峰とはこの鋭鋒のことではないだろうか。
(838m峰に着く)
(東側の展望 右端は武甲山 中央手前の集落が強石地区)
(西側の展望 左に見えるのが滝沢ダム 右の鋭鋒が剣ヶ峰ではないかと思う)
838m峰を越えると尾根が二手に分かれる。道標に従って左に行き、小ピークを越えると最後の急坂だ。眼前に数本の杉の大木が見えてくれば杉ノ峠に着く。鞍部に作られたシンプルな峠で、強石と落合の両集落からの道が現在でも延びている。荒川沿いの国道が整備され、クルマを気軽に所有できるようになる前は、この峠を越えるのが近道であったに違いない。案内板を改めて見てみるとどちらの峠道も昨年の台風19号の影響で道が悪くなっているらしい。林道御岳山線も不通となっているが、大達原へ行くことは可能なのだろうか?
(杉ノ峠)
(写真ではわかりにくいが背後の杉もなかなかの大木)
(強石側の様子)
長い林道歩きを経て大達原の手掘り隧道
峠から落合へ下る道に入る。古から存在する峠道にしては踏み跡が薄い。下ってすぐに作業用の林道が見えてくる。踏み跡が薄かったのはこの林道建設の影響があるのかもしれない。林道はいくつも分岐があるが、只管下っていけばいい。広い九十九折を快調に下っていくと林道御岳山線に出る手前で台風による土砂崩れ現場に出くわす。作業道は埋め尽くされているが、その上を越えていくことはできる。御岳山線へ下ると落合への登山道が延びており、一見したところでは特に台風の影響は受けていないように感じた。
(落合への道に入るとすぐに林道にぶつかる)
(台風19号による土砂崩れの跡)
(林道御岳山線が通っている)
(落合への道 通行止の看板は御岳山線に対してのもの)
さてこのまま落合へ下っても良いのだが、まだ正午を回ってそれほど経っていない。予定通り大達原へ向かおう。林道御岳山線は未舗装で抉れた所などもあって少々歩きにくい。ただ下り坂が続くので下山ルートとしては助かる。5分ほど下ると落合へ下る林道が分岐する。案内板によると杉ノ峠線という名が付いているようだ。この分岐を過ぎると長い未舗装の林道歩きが続く。展望が開ける所があるでもなく、単調な道が続いて精神的にはかなり疲れる。
(右に下るのが杉ノ峠線 杉ノ峠線を下っても落合へ下れるが通行止となっていた)
無心で歩いていくと道が舗装路へ変わる。すると間もなく神岡への分岐に出る。ここから先は林道大輪線だ。林道は南西へ突き出た尾根を越えるため、結構急な上り坂となる。しんどい所ではあるが、メガソーラーの設置によって大きく伐採され、神岡地区を見下ろす眺めは良い。尾根を越えると再び暗い植林帯を抜けていく。微妙にアップダウンがあるのが厭らしい。大達原地区に入る手前に大輪分岐があり、純然たる山道が下っている。若干荒れ気味だがエスケープには使えそうだ。
(林道大輪線に出る 左が大達原への道だ)
(神岡地区を見下ろす)
(林道大輪線 若干のアップダウンがある)
(大輪分岐 上から見た限りでも荒れた感じであった)
大輪分岐を過ぎると大達原地区だ。山の中腹の緩斜面に作られた集落で建物は思ったよりも多い。集落の中心には稲荷神社があり、神楽殿も設けられている。稲荷神社の隣には屋号を掲げた大きな民家があり、その脇には高札場が保存されている。大きな民家はかつて村の名主だったという。高札場を過ぎると道標が立ち、道路は国道へ向かって下っていく。道標に従い強石方面へ入ると民家の前で舗装路は途切れている。ちょっと迷ったが、そのまま舗装路の先へ進むと植林の中に山道が延びている。山道に入ると道標があり、道が間違いではないことがわかって安心する。なお、山道と書かれた方へ登っていくと現在は不通の大達原峠に行くことができるというが、ボクはその事実を知らなかったのでそのまま通過してしまった。
(大達原地区に入る)
(大達原稲荷神社)
(大達原の高札場 そばにある枝垂桜も有名だとか)
(前の道路を下ると国道に出る トンネルに向かうなら民家前の道を進む必要がある)
(民家脇を抜けると道が延び、この道標がある 左斜め上に向かうのは大達原峠への道)
暗い植林帯を抜けると資材が置かれ、道は行き止まりだ。トンネルはどこだと訝しがりながら資材置き場へ近づくと脇の岩場に小さなトンネルが現れる。これが大達原の手掘り隧道だ。トンネルを抜けた先にある案内板によると明治中期以後に掘られたもので、幅は3.45m、高さは4.8m、長さは40.5mあるという。中は手掘りの跡を感じさせるゴツゴツとした岩が剥き出しになっている。思ったよりも広く小さいと言っては失礼だろう。トンネルを抜けるとベンチが置かれているので、ザックを下ろしてトンネルを振り返る。石仏や馬頭観音の石碑も気にはなったが、何より驚いたのはオーバーハング気味に覆いかぶさろうとする大きな岩場であった。
(大達原の手掘り隧道 第一印象だと小さく感じる)
(大達原側の入口)
(内部はこんな感じ 手掘りの跡が良い)
(強石側に出る ベンチがあるので休んでいくにも良い)
(強石側から振り返る)
(トンネルの案内板)
(強石側から見たトンネル入口)
(オーバーハング気味の岩壁に圧倒される)
トラバース道を下って三峰口駅へ戻る
今日二つ目の目的も達成し、後は駅へ戻るだけだ。トンネルを抜けた先にも道は続いており、地形図を見た限りでは強石地区の手前まで延びているらしい。明治大正期の古い地形図にはここがメインルートとして描かれていて、荒川沿いの国道はまだ存在していなかった。国道が描かれ、このルートが旧道扱いになったのは昭和初期の地形図の頃からだ。始めは割と整備された道が下っているが、急な崖地に作られたこともあり、土砂で埋もれてしまっている所が多い。転落防止用の金属製フェンスがぐにゃりと折れ曲がって用をなさなくなっている。幸い、今でも整備は入っているらしく、ロープで仕切ってあるので、谷側に寄り過ぎなければ問題はない。怖いのは不意の落石くらいだ。
(トンネル付近は割と良い道)
(馬頭尊)
(金属製フェンスは意味を成していない)
(土砂崩れで埋もれてしまってその上に新たにロープの仕切りがある)
(この辺りが一番歩きにくい)
トンネルから10分弱で荒れた道も終わる。広く整備された道が続き、本来は軽いハイキングルートとして楽しめる所なのだろう。かつて山歩きを始める十数年前に母親と三峰ロープウェイに乗りに来たことがあったが、その頃西武鉄道が発行していたハイキングマップにはこの辺りのルートが掲載されていた記憶がある。山歩きが定着したレジャーとなった現在、こうした山頂を目指さないルートにもっと脚光が当たってほしいと願う。
(ようやく道が落ち着く それでも落石には要注意)
(このくらいの道が続くなら十分軽いハイキングルートなのだが)
旧光岩小学校を示す道標が立つ所で一旦林道に出る。林道を進むと光岩の稲荷神社がある。稲荷神社を過ぎると再び道標が立ち、国道への道が下っている。入口はロープで仕切られているが、看板には通行注意としか書かれていないので、下ることはできるようだ。山道に入ると特に支障となるような所はなく、むしろ歩きやすいと言っていい。流石はかつての生活道路だと感心していると一か所だけ土砂で道が流されている所がある。ただこの程度なら通常の登山道のほうが危険と感じられるレベルだろう。一応落石には注意するが難なく通過する。石段を下れば後は国道に出るだけだが、ここもロープで仕切ってある。ご丁寧にこちらは上下で止めているので通り抜けるのに一苦労だ。ここまで厳重にするのであればいっそ通行止めにしたほうがいい。
(林道に出るとすぐに光岩の稲荷神社がある 神社へはちょっとした登りがある)
(ここを下りきれば国道に出られる)
(岩の切通しがある 良く整備された道だ)
(一か所だけ崩落がある)
(国道の入口部分 これは通るの大変でっせ)
国道の歩道を進み、強石の集落に着く。杉ノ峠から直接下ってきた場合は40分程度しか掛からないというから、1時間以上余分に掛かったことになる。万年橋で荒川を渡り、右岸の道を行く。しっかり整備された道路だが、クルマは全く通らない。静かな道を歩きたい人にはこの右岸の道がおススメだ。朝渡った白川橋が見えてくれば三峰口駅は近い。駅に着く直前、バスが追い抜いて駅で乗客を降ろしている。「これはすぐに電車がやって来そうだな」と思って駅舎に入ると予想通り上りの電車が入って来たのであった。
(強石地区 右へ下るのが万年橋への道)
(荒川に作られた水力発電所)
(万年橋)
(橋から見た水力発電所)
(橋から下流を覗く)
(右岸の道路は交通量が少ない)
(白川橋が見えてきた)
(地元の丸太で出来た東屋)
(三峰口駅の駅舎 右奥に屋根付きのベンチがあり、休憩に良い)
DATA:
三峰口駅8:24→8:35贄川宿観光トイレ→8:39御岳山登山口→8:51三峰線26号鉄塔→9:04二番高岩→10:02猪狩山分岐(タツミチ)→10:30秩父御岳山(1080.4)11:12→11:39林道御岳山線→11:58三峰線鉄塔(838m峰)→12:10杉ノ峠→12:24林道御岳山線(落合分岐)→12:30林道杉ノ峠線との分岐→12:52神岡分岐→13:12大輪分岐→13:13大達原地区→13:22大達原の手掘りの隧道→13:40旧光岩小学校分岐→13:49国道140号→13:56万年橋→14:20三峰口駅
地形図 三峰
トイレ 贄川宿観光トイレ
交通機関
西武池袋・秩父線 小手指~西武秩父 510円(往復)
秩父鉄道秩父線 御花畑~三峰口 450円(往復)
以上、秩父フリーきっぷで1820円
参考図書 大久根茂著「奥武蔵・秩父 峠歩きガイド」(株式会社さきたま出版会)
今回歩いたルートに関しては台風による危険個所は特にありません。むしろ秩父御岳山頂上付近の岩尾根や杉ノ峠へ下りる途中の岩尾根のほうが危険度は高いでしょう。