(しょうじくぼの頭付近から両神山を望む)
ここのところ雑事に追われていたのですが、何とか時間を作って山歩きをしてきました。当初はしばらく歩いていない二子山から武川岳の縦走ルートを歩くつもりだったのですが、都心でも積もった雪を考え、比較的なだらかな蕨山を歩きに行くことにしました。
飯能駅7時10分発湯ノ沢行きは僕の中でもうお馴染みのものとなっている。祭りともなれば立派な山車も練り歩く飯能駅周辺はとても賑やかな街だ。それが1時間もバスに乗れば人家も疎らな山奥へと連れて行ってくれる。この湯ノ沢行きのバスはそのギャップを如実に感じさせてくれるのが良いのだ。飯能駅周辺の市街地を過ぎ、多峯主山(とおのすやま)の登山口のある永田に差し掛かる頃から周囲は山郷の雰囲気となってくる。入間川に沿いながら原市場の集落へと入っていくと意外にも多くの家が立ち並ぶことにいつもながら驚かされる。心配していた雪はこの辺りは殆ど残っていない。それほど雪は積もっていないかもしれないと思っていると白雪を頂く棒ノ嶺の山頂が目に入った。標高の高い所はまだ大分雪が残っているようだ。さわらびの湯を過ぎると人家はめっきりと減る。名郷では私を含めた乗客全員がバスを降りる。道を少し戻ったところにあるトイレで準備をしている間にみな蕨山へ向かったらしい。
(名郷から鳥首峠・妻坂峠へ向かう道)
まずは鳥首峠へ向かう。昨年の秋にも歩いた所なのでそれほど変化はない。ただキャンプ場沿いに流れる沢が所々凍りついているのが印象的であった。大場戸橋で山中林道を分け、30分弱で鳥首峠の登山口であるJFEミネラルの工場前に出る。工場の上には白岩集落のシンボルである石灰岩が見える。4年前に訪れた時と比べるといくらか小さくなったようだ。工場の敷地を抜け、暗い植林帯に入るとジグザグを描いて道は上がっていく。如何にも峠道という感じだ。ここまで雪は殆ど無かったが、白岩の廃集落へ入ると足首を没するほどの積雪がある。廃屋の屋根にも雪が積もっているが、建物を壊してしまうほどではないようだ。
(JFEミネラルと白岩)
(なお参考までに4年前の様子)
(白岩廃集落)
廃集落を過ぎると鳥首峠までは三回沢を横切ることになる。この辺りから道の凍結が目立ったきた。そこで4本爪の軽アイゼンを着けることにする。普段はそれほど難しく感じない道も、雪でトレースが消えて、沢を横切る度に少々戸惑う。三つ目の沢に差し掛かる所で先行のカップルを追い抜く。バスを使ったのでは僕より先には来れないはずなので、途中林道脇に停めていたクルマで来たのだろう。最後の九十九折を登りきると薄暗い鳥首峠に出る。稜線に出ると流石に雪が多い。踏み跡は大持山・滝入ノ頭方面双方に付けられているほか、冠岩方面へ向かう踏み跡もあった。降雪以後も結構人は入っているらしい。風が吹きぬける所なので、少し冠岩側へ下って休憩を取る。これだけで随分風除けになる。
(凍りつく登山道)
(鳥首峠)
先ほど追い抜いたカップルが上がってきたところで出発。峠から直ぐの953のピークには送電鉄塔が立つ。ここからは東西に展望が得られる。東側を見ると白岩の石灰岩採掘場が広がる。あの白さは石灰岩だけでなく、雪が積もっているためであろう。その背後には伊豆ヶ岳と古御岳のフタコブラクダがよく目立つ。子ノ権現も見えているようだ。鉄塔のピークから先は雪が深くなる。先行者の踏み跡を利用しながら進んでいくと前方に急斜面が立ち塞がる。ここには4年前訪れたときは補助ロープが括り付けられていたはずだが、どうも外されてしまったらしい。雪の付いた斜面に取り付くが、雪の深さが中途半端で踏ん張ることが出来ない。前爪付きのアイゼンでも容易でないだろう。
(送電鉄塔)
(鉄塔のピークから西側の眺め)
(東側の眺め)
(ロープが付いていたはずの急斜面)
斜面に手を付きながら何とか登り上げると西側が大きく伐採されている。振り返れば木の間越しに大持山が大きい。ここから先は西側に伐採地が続く。4年前に来たときはまだ檜の植林と雑木林との混合林が広がっていた。伐採地には獣除けらしき網が張られている。昨年歩いた棒ノ嶺北東尾根と同じ理由によるものなのだろう。伐採されたためか積雪量がかなり多い。つぼ足だとどうしても足を捕られ、なかなか進むことが出来ない。踏み跡をよく見るとスノーシューで歩いた跡がある。確かにスノーシューなら足を捕られることもない。滝入ノ頭へ向かっては小さなアップダウンを繰り返す。奥多摩方面のほか両神山の展望が良い。両神山から右に見える雪山は浅間山だ。今日は噴煙を上げていないためか綺麗に見える。
(広がる伐採地)
(振り返ると両神山)
(細かいアップダウンが続く)
(浅間山)
木製の標識が見えてくると滝入ノ頭(1070.9)だ。直ぐ側の木には達筆標識が掛けられている。この辺りは雪の深さが膝下くらいまである。標識の側に行くにはラッセルを強いられる。無理はやめておこう。滝入ノ頭から少し下ると網が邪魔にならない程度に展望が得られる。有間山から奥多摩へと続く尾根が眺められる。振り返れば両神山と大持山。両神山は直ぐ側まで行ったことはあるが、まだ山頂まで行ったことは無い。岩山は苦手なほうなのだが、いつか泊りで行ってみたいものである。
(滝入ノ頭)
(滝入ノ頭付近のパノラマ)
鞍部から登り返すとしょうじくぼの頭。標識の側にある木にテープが巻きつけられている。ここから東に下る尾根を下ると三十三尋の滝がある。だがこれだけ雪が深いと相当なラッセルを強いられるだろう。しょうじくぼの滝から先は獣避けの網は掛けられていない。西側の日の当たる斜面にはあまり雪が残っていない。そこで出来るだけ西側に寄って雪を避けることにした。緩やかに登るとヤシンタイの頭(1100)の山頂だ。ここにも達筆標識があるが、だいぶ退色してしまっている。色を塗り直してあげたいところなのだが。
(しょうじくぼの頭)
(ヤシンタイの頭)
一旦大きく下ると東側の展望が得られる所がある。蕨山の尾根らしきものが見えた後は子ノ権現方面の展望が得られる。更に関八州見晴台や顔振峠辺りも見えるようだ。橋小屋の頭が近づいてくるとともに積雪も多くなっていく。先行者の踏み跡を辿っていくが、僕のほうが体重が重いせいか何度も踏み抜いてしまう。もうこうなったら自分でラッセルしてやろう。新雪を掻き分けて登っていくと植林に覆われたピークが見えてきた。橋小屋の頭(1163)にようやく到着。名郷を出発してちょうど3時間掛かった。橋小屋の頭は有間山の一部だがここは最高峰ではない。時間が許せば最高峰のタタラの頭まで行ってみようかとも思っていたのだが、この積雪では相当に時間が掛かりそうだ。已む無く蕨山へ向かって下っていくことにした。
(子ノ権現を望む)
(関八州見晴台)
(動物の足跡もある)
(橋小屋の頭)
蕨山へはしばらく急坂が続く。夏道だと下るのに少々難儀する所だ。だが今日は雪が深いため雪に潜りながらどんどん下っていける。雪道だと下りは楽だ。少し下ると尾根が二手に分かれる。すると左手に下る尾根に細いながらも踏み跡が付いている。夏道の踏み跡は全く隠されてしまっているのでコンパスを出して方向を確認する。踏み跡が付いている方向で間違いないようだ。ここで間違って右手の尾根を下ってしまうと林道上の崖地に出てしまって進退窮まる可能性がある。傾斜が緩むと東屋が見えてきた。その先の広い鞍部が逆川乗越だ。以前遭難事故が起きた際にここまでレスキューの消防車が登ってきたのを見たことがある。今日は誰も居ないかと思ったらオレンジのベストを着た猟師のオジサンがいた。そういえばずっと犬の鳴き声がしたし、橋小屋の頭にいたときは発砲音もしていた。これから3月末くらいまでは猟期なので、入山する人は鳴り物などを付けたほうが良いだろう。
(蕨山へと続く急坂)
(逆川乗越)
逆川乗越から蕨山へは広くてなだらかな尾根が続く。普段は楽な道だが、雪に足を捕られ、なかなか進めない。南側に檜の植林が現れると蕨山の山頂(1044)だ。ちょっとした尾根の高まりで山頂を示すものは何も無い。山頂へ上がってみようと思っていたら、ちょうど高校生くらいのグループが山頂へ上がるところであった。引率の先生らしき人たちもいたので、高校の山岳部かもしれない。邪魔しても悪いので先へ進む。山頂を見送ると名郷からのルートに合流する。ここから蕨山展望台へは圧雪された歩きやすい道が続く。アイゼンの歯を利かせ、鞍部を登り返すと蕨山展望台(1033)だ。展望台には10人超の中高年グループが休憩を取っている。みな名郷から登ってきたのだろう。あまり居心地が良いとは言えないが、雪の上にザックを下ろして休憩を取ることにした。ここに来るのは三度目だが、相変わらず展望台という割には見晴らしが良くない。それでも冬枯れの時期なのでこれまで訪れたことのある夏場よりは展望が利く。北側は大持山が顕著だ。そこから妻坂峠へ向かって大きく下って登り返すと武川岳。夏場は全く姿を隠してしまうだろう。南側は遠くに大岳山が見える。台形の上にポコンとドームを突き出した姿はどこからでもよく目立つ。そして山頂に白いものが目立つのが棒ノ嶺(棒ノ折山)だ。畠山重忠の伝説から棒ノ折山と名付けられているが、山頂がカヤトの原だから坊主の嶺、つまり棒ノ嶺という説もある。ここから見ると棒ノ嶺説も十分有力であると思われる。
(蕨山への登り 積雪30cm)
(蕨山展望台)
(大持山おそらく武甲山 で手前の尾根が大持山の尾根)
(武川岳)
(右に大岳山)
(棒ノ嶺)
先ほど蕨山の山頂で擦れ違った高校生らしきグループがやって来た。そろそろ出発しよう。やや急な斜面を下ると蕨山までとは異なり積雪量が少なくなってきた。圧雪された所は滑るし、かといって雪に足を潜らせるほど深くもない。少々下りづらくなったような気がする。しばらく下るとフラットで広い尾根となる。この辺りは雑木林で雪も深い。そろそろ雪も飽きてきた。鞍部から登り返した辺りで西平山への尾根が延びている。道標は雪に埋もれたのか、赤テープだけがそれを示している。少々面倒な登りをこなすと藤棚山(920.2)だ。新緑の頃はグリーンシャワーが気持ちの良い所なのだが、今日は冬枯れの林が広がるだけだ。
(西平山への分岐)
(藤棚山)
藤棚山から金比羅山へは緩やかな下りが続く。夏場はのんびりと歩ける僕の好きなルートだ。日当たりの良い南側の斜面になると地面が露出している。アイゼンを着けていると歩きにくい。だが樹林帯に入るとアイスバーンと化した雪道が出てくるので、なかなか外す機会が無い。道が尾根を外れて南側をトラバースするようになると有間谷に張り巡らされた林道が見えてくる。林道は除雪されているためか時々バイクのけたたましいエンジン音が有間谷に響き渡る。長尾丸山方面を眺めつつ大ヨケノ頭(771)に到着。ここからは落合へ下ることもできるが、エアリアでは廃道扱いになっているようだ。
(長尾丸山方面)
(大ヨケの頭)
柵の付いた細い尾根を進むと林道が尾根を乗り越していく。この林道は炭谷入林道のほか西平山を回りこむ林道へとつながっている。林道が乗り越す鞍部から登り返した所が小ヨケノ頭だが、道はこのピークを南に巻いていく。小ヨケノ頭を巻き終わるとなだらかな尾根の中心を進んでいく。檜の植林が広がる小平地には苗木が植えられている。ヤマザクラなどと書かれているものもあり、将来的には檜を伐採した後雑木林へと姿を変えていくのかもしれない。717のピークの手前が中登坂(ちゅうとうざか)。ここから小ヨケの滝・大ヨケの滝へと下ることもできる。
(林道が乗り越す鞍部から小ヨケの頭を望む)
(苗木の植えられた小平地)
(中登坂)
717のピークを少し下った所に夏場は笹原となっているビュースポットがある。ここからは林道によって削られた西平山が顕著だ。西平山の右奥にあるのは伊豆ヶ岳だろう。子ノ権現辺りも見える。緩やかに下ってきた道も金比羅山を前にして急坂となる。縦走路は金比羅山を巻いていくので、金比羅山へと行きたい人は道標の裏の尾根を辿っていってほしい。金比羅山を巻き終わればまた緩やかな尾根道へと戻る。地形図で神社記号のある辺りが金比羅神社跡だ。ここだけは雪が残るがここから下はもう雪は残っていないようだ。アイゼンを外すことにした。
(西平山を望む 奥は伊豆ヶ岳)
(子ノ権現)
(金比羅山分岐 奥の尾根を登ると金比羅山)
(金比羅神社跡)
金比羅神社跡から先はやや急な斜面が続く。
奥武蔵の山ではお馴染みの土留めの木段などを下っていくと周囲の木が少し低くなったように感じる。地形図で大きな崩壊地が描かれた辺りから名栗湖を見下せるようになる。現地の看板に見晴らしと書かれた所からは名栗湖を見下す展望デッキへと下ることもできるが、車道歩きが面倒なのでこのままさわらびの湯バス停まで尾根を下っていくことにする。尾根から沢地形を下っていくようになると河又の集落が木の間越しに見えてくる。自然と歩みも速くなる。林を抜け墓地の脇に出ると向いはさわらびの湯バス停だ。バス停に辿り着くとどっと疲れが出た。久しぶりに温泉に浸かっていきたかったが、そのままバスに乗り込み帰路に着いた。
(名栗湖を見下す)
二年ぶりに雪道を歩きましたがやっぱり疲れますね。登りはエアリアのコースタイム五割増で良いと思います。危険箇所は送電鉄塔のピークから滝入ノ頭へと向かう途中の急坂です。ロープが埋まっているらしいので登り下りどちらも滑落要注意。あと凍結箇所多数のためアイゼンはお持ち下さい。
<ちょっと寄り道>
国際興業バスの名郷・さわらびの湯・湯ノ沢・中沢・中藤行きに乗ると途中永田大杉と永田のバス停の間に「大里屋本店」という和菓子屋さんがあります。ここで売られている「四里餅(しりもち)」はスイーツ好きにお薦め。小判型のお餅で中に餡子(つぶ・こし)が入っています。特筆すべきはその柔らかさ。持ったそばから零れ落ちてしまいそうなほどです。なお、かなりの人気商品なので14時くらいには売切れてしまうことが多々あります。山帰りで遅くなりそうなのであれば、連絡を入れておくと取り置きしておいてくれるそうです。また柔らかい商品なので賞味期限が一日しかなく、傾けておくとお餅が潰れてしまうなど結構デリケートなところがあります。ご注意下さい。
DATA:
飯能駅(国際興業バス60分)名郷8:12~8:25大場戸橋~8:48JFEミネラル~9:08白岩集落~9:45鳥首峠~10:26滝入ノ頭
~10:40しょうじくぼの頭~10:48ヤシンタイの頭~11:12橋小屋の頭~11:55蕨山展望台~12:22藤棚山~12:48大ヨケの頭
~13:08中登坂~13:30金比羅神社跡~13:58さわらびの湯バス停(国際興業バス45分)飯能駅
国際興業バス 飯能駅~名郷 790円 さわらびの湯~飯能駅 600円
地形図 原市場 武蔵日原
山と高原地図 奥武蔵・秩父 2010年度版
ここのところ雑事に追われていたのですが、何とか時間を作って山歩きをしてきました。当初はしばらく歩いていない二子山から武川岳の縦走ルートを歩くつもりだったのですが、都心でも積もった雪を考え、比較的なだらかな蕨山を歩きに行くことにしました。
飯能駅7時10分発湯ノ沢行きは僕の中でもうお馴染みのものとなっている。祭りともなれば立派な山車も練り歩く飯能駅周辺はとても賑やかな街だ。それが1時間もバスに乗れば人家も疎らな山奥へと連れて行ってくれる。この湯ノ沢行きのバスはそのギャップを如実に感じさせてくれるのが良いのだ。飯能駅周辺の市街地を過ぎ、多峯主山(とおのすやま)の登山口のある永田に差し掛かる頃から周囲は山郷の雰囲気となってくる。入間川に沿いながら原市場の集落へと入っていくと意外にも多くの家が立ち並ぶことにいつもながら驚かされる。心配していた雪はこの辺りは殆ど残っていない。それほど雪は積もっていないかもしれないと思っていると白雪を頂く棒ノ嶺の山頂が目に入った。標高の高い所はまだ大分雪が残っているようだ。さわらびの湯を過ぎると人家はめっきりと減る。名郷では私を含めた乗客全員がバスを降りる。道を少し戻ったところにあるトイレで準備をしている間にみな蕨山へ向かったらしい。
(名郷から鳥首峠・妻坂峠へ向かう道)
まずは鳥首峠へ向かう。昨年の秋にも歩いた所なのでそれほど変化はない。ただキャンプ場沿いに流れる沢が所々凍りついているのが印象的であった。大場戸橋で山中林道を分け、30分弱で鳥首峠の登山口であるJFEミネラルの工場前に出る。工場の上には白岩集落のシンボルである石灰岩が見える。4年前に訪れた時と比べるといくらか小さくなったようだ。工場の敷地を抜け、暗い植林帯に入るとジグザグを描いて道は上がっていく。如何にも峠道という感じだ。ここまで雪は殆ど無かったが、白岩の廃集落へ入ると足首を没するほどの積雪がある。廃屋の屋根にも雪が積もっているが、建物を壊してしまうほどではないようだ。
(JFEミネラルと白岩)
(なお参考までに4年前の様子)
(白岩廃集落)
廃集落を過ぎると鳥首峠までは三回沢を横切ることになる。この辺りから道の凍結が目立ったきた。そこで4本爪の軽アイゼンを着けることにする。普段はそれほど難しく感じない道も、雪でトレースが消えて、沢を横切る度に少々戸惑う。三つ目の沢に差し掛かる所で先行のカップルを追い抜く。バスを使ったのでは僕より先には来れないはずなので、途中林道脇に停めていたクルマで来たのだろう。最後の九十九折を登りきると薄暗い鳥首峠に出る。稜線に出ると流石に雪が多い。踏み跡は大持山・滝入ノ頭方面双方に付けられているほか、冠岩方面へ向かう踏み跡もあった。降雪以後も結構人は入っているらしい。風が吹きぬける所なので、少し冠岩側へ下って休憩を取る。これだけで随分風除けになる。
(凍りつく登山道)
(鳥首峠)
先ほど追い抜いたカップルが上がってきたところで出発。峠から直ぐの953のピークには送電鉄塔が立つ。ここからは東西に展望が得られる。東側を見ると白岩の石灰岩採掘場が広がる。あの白さは石灰岩だけでなく、雪が積もっているためであろう。その背後には伊豆ヶ岳と古御岳のフタコブラクダがよく目立つ。子ノ権現も見えているようだ。鉄塔のピークから先は雪が深くなる。先行者の踏み跡を利用しながら進んでいくと前方に急斜面が立ち塞がる。ここには4年前訪れたときは補助ロープが括り付けられていたはずだが、どうも外されてしまったらしい。雪の付いた斜面に取り付くが、雪の深さが中途半端で踏ん張ることが出来ない。前爪付きのアイゼンでも容易でないだろう。
(送電鉄塔)
(鉄塔のピークから西側の眺め)
(東側の眺め)
(ロープが付いていたはずの急斜面)
斜面に手を付きながら何とか登り上げると西側が大きく伐採されている。振り返れば木の間越しに大持山が大きい。ここから先は西側に伐採地が続く。4年前に来たときはまだ檜の植林と雑木林との混合林が広がっていた。伐採地には獣除けらしき網が張られている。昨年歩いた棒ノ嶺北東尾根と同じ理由によるものなのだろう。伐採されたためか積雪量がかなり多い。つぼ足だとどうしても足を捕られ、なかなか進むことが出来ない。踏み跡をよく見るとスノーシューで歩いた跡がある。確かにスノーシューなら足を捕られることもない。滝入ノ頭へ向かっては小さなアップダウンを繰り返す。奥多摩方面のほか両神山の展望が良い。両神山から右に見える雪山は浅間山だ。今日は噴煙を上げていないためか綺麗に見える。
(広がる伐採地)
(振り返ると両神山)
(細かいアップダウンが続く)
(浅間山)
木製の標識が見えてくると滝入ノ頭(1070.9)だ。直ぐ側の木には達筆標識が掛けられている。この辺りは雪の深さが膝下くらいまである。標識の側に行くにはラッセルを強いられる。無理はやめておこう。滝入ノ頭から少し下ると網が邪魔にならない程度に展望が得られる。有間山から奥多摩へと続く尾根が眺められる。振り返れば両神山と大持山。両神山は直ぐ側まで行ったことはあるが、まだ山頂まで行ったことは無い。岩山は苦手なほうなのだが、いつか泊りで行ってみたいものである。
(滝入ノ頭)
(滝入ノ頭付近のパノラマ)
鞍部から登り返すとしょうじくぼの頭。標識の側にある木にテープが巻きつけられている。ここから東に下る尾根を下ると三十三尋の滝がある。だがこれだけ雪が深いと相当なラッセルを強いられるだろう。しょうじくぼの滝から先は獣避けの網は掛けられていない。西側の日の当たる斜面にはあまり雪が残っていない。そこで出来るだけ西側に寄って雪を避けることにした。緩やかに登るとヤシンタイの頭(1100)の山頂だ。ここにも達筆標識があるが、だいぶ退色してしまっている。色を塗り直してあげたいところなのだが。
(しょうじくぼの頭)
(ヤシンタイの頭)
一旦大きく下ると東側の展望が得られる所がある。蕨山の尾根らしきものが見えた後は子ノ権現方面の展望が得られる。更に関八州見晴台や顔振峠辺りも見えるようだ。橋小屋の頭が近づいてくるとともに積雪も多くなっていく。先行者の踏み跡を辿っていくが、僕のほうが体重が重いせいか何度も踏み抜いてしまう。もうこうなったら自分でラッセルしてやろう。新雪を掻き分けて登っていくと植林に覆われたピークが見えてきた。橋小屋の頭(1163)にようやく到着。名郷を出発してちょうど3時間掛かった。橋小屋の頭は有間山の一部だがここは最高峰ではない。時間が許せば最高峰のタタラの頭まで行ってみようかとも思っていたのだが、この積雪では相当に時間が掛かりそうだ。已む無く蕨山へ向かって下っていくことにした。
(子ノ権現を望む)
(関八州見晴台)
(動物の足跡もある)
(橋小屋の頭)
蕨山へはしばらく急坂が続く。夏道だと下るのに少々難儀する所だ。だが今日は雪が深いため雪に潜りながらどんどん下っていける。雪道だと下りは楽だ。少し下ると尾根が二手に分かれる。すると左手に下る尾根に細いながらも踏み跡が付いている。夏道の踏み跡は全く隠されてしまっているのでコンパスを出して方向を確認する。踏み跡が付いている方向で間違いないようだ。ここで間違って右手の尾根を下ってしまうと林道上の崖地に出てしまって進退窮まる可能性がある。傾斜が緩むと東屋が見えてきた。その先の広い鞍部が逆川乗越だ。以前遭難事故が起きた際にここまでレスキューの消防車が登ってきたのを見たことがある。今日は誰も居ないかと思ったらオレンジのベストを着た猟師のオジサンがいた。そういえばずっと犬の鳴き声がしたし、橋小屋の頭にいたときは発砲音もしていた。これから3月末くらいまでは猟期なので、入山する人は鳴り物などを付けたほうが良いだろう。
(蕨山へと続く急坂)
(逆川乗越)
逆川乗越から蕨山へは広くてなだらかな尾根が続く。普段は楽な道だが、雪に足を捕られ、なかなか進めない。南側に檜の植林が現れると蕨山の山頂(1044)だ。ちょっとした尾根の高まりで山頂を示すものは何も無い。山頂へ上がってみようと思っていたら、ちょうど高校生くらいのグループが山頂へ上がるところであった。引率の先生らしき人たちもいたので、高校の山岳部かもしれない。邪魔しても悪いので先へ進む。山頂を見送ると名郷からのルートに合流する。ここから蕨山展望台へは圧雪された歩きやすい道が続く。アイゼンの歯を利かせ、鞍部を登り返すと蕨山展望台(1033)だ。展望台には10人超の中高年グループが休憩を取っている。みな名郷から登ってきたのだろう。あまり居心地が良いとは言えないが、雪の上にザックを下ろして休憩を取ることにした。ここに来るのは三度目だが、相変わらず展望台という割には見晴らしが良くない。それでも冬枯れの時期なのでこれまで訪れたことのある夏場よりは展望が利く。北側は大持山が顕著だ。そこから妻坂峠へ向かって大きく下って登り返すと武川岳。夏場は全く姿を隠してしまうだろう。南側は遠くに大岳山が見える。台形の上にポコンとドームを突き出した姿はどこからでもよく目立つ。そして山頂に白いものが目立つのが棒ノ嶺(棒ノ折山)だ。畠山重忠の伝説から棒ノ折山と名付けられているが、山頂がカヤトの原だから坊主の嶺、つまり棒ノ嶺という説もある。ここから見ると棒ノ嶺説も十分有力であると思われる。
(蕨山への登り 積雪30cm)
(蕨山展望台)
(
(武川岳)
(右に大岳山)
(棒ノ嶺)
先ほど蕨山の山頂で擦れ違った高校生らしきグループがやって来た。そろそろ出発しよう。やや急な斜面を下ると蕨山までとは異なり積雪量が少なくなってきた。圧雪された所は滑るし、かといって雪に足を潜らせるほど深くもない。少々下りづらくなったような気がする。しばらく下るとフラットで広い尾根となる。この辺りは雑木林で雪も深い。そろそろ雪も飽きてきた。鞍部から登り返した辺りで西平山への尾根が延びている。道標は雪に埋もれたのか、赤テープだけがそれを示している。少々面倒な登りをこなすと藤棚山(920.2)だ。新緑の頃はグリーンシャワーが気持ちの良い所なのだが、今日は冬枯れの林が広がるだけだ。
(西平山への分岐)
(藤棚山)
藤棚山から金比羅山へは緩やかな下りが続く。夏場はのんびりと歩ける僕の好きなルートだ。日当たりの良い南側の斜面になると地面が露出している。アイゼンを着けていると歩きにくい。だが樹林帯に入るとアイスバーンと化した雪道が出てくるので、なかなか外す機会が無い。道が尾根を外れて南側をトラバースするようになると有間谷に張り巡らされた林道が見えてくる。林道は除雪されているためか時々バイクのけたたましいエンジン音が有間谷に響き渡る。長尾丸山方面を眺めつつ大ヨケノ頭(771)に到着。ここからは落合へ下ることもできるが、エアリアでは廃道扱いになっているようだ。
(長尾丸山方面)
(大ヨケの頭)
柵の付いた細い尾根を進むと林道が尾根を乗り越していく。この林道は炭谷入林道のほか西平山を回りこむ林道へとつながっている。林道が乗り越す鞍部から登り返した所が小ヨケノ頭だが、道はこのピークを南に巻いていく。小ヨケノ頭を巻き終わるとなだらかな尾根の中心を進んでいく。檜の植林が広がる小平地には苗木が植えられている。ヤマザクラなどと書かれているものもあり、将来的には檜を伐採した後雑木林へと姿を変えていくのかもしれない。717のピークの手前が中登坂(ちゅうとうざか)。ここから小ヨケの滝・大ヨケの滝へと下ることもできる。
(林道が乗り越す鞍部から小ヨケの頭を望む)
(苗木の植えられた小平地)
(中登坂)
717のピークを少し下った所に夏場は笹原となっているビュースポットがある。ここからは林道によって削られた西平山が顕著だ。西平山の右奥にあるのは伊豆ヶ岳だろう。子ノ権現辺りも見える。緩やかに下ってきた道も金比羅山を前にして急坂となる。縦走路は金比羅山を巻いていくので、金比羅山へと行きたい人は道標の裏の尾根を辿っていってほしい。金比羅山を巻き終わればまた緩やかな尾根道へと戻る。地形図で神社記号のある辺りが金比羅神社跡だ。ここだけは雪が残るがここから下はもう雪は残っていないようだ。アイゼンを外すことにした。
(西平山を望む 奥は伊豆ヶ岳)
(子ノ権現)
(金比羅山分岐 奥の尾根を登ると金比羅山)
(金比羅神社跡)
金比羅神社跡から先はやや急な斜面が続く。
奥武蔵の山ではお馴染みの土留めの木段などを下っていくと周囲の木が少し低くなったように感じる。地形図で大きな崩壊地が描かれた辺りから名栗湖を見下せるようになる。現地の看板に見晴らしと書かれた所からは名栗湖を見下す展望デッキへと下ることもできるが、車道歩きが面倒なのでこのままさわらびの湯バス停まで尾根を下っていくことにする。尾根から沢地形を下っていくようになると河又の集落が木の間越しに見えてくる。自然と歩みも速くなる。林を抜け墓地の脇に出ると向いはさわらびの湯バス停だ。バス停に辿り着くとどっと疲れが出た。久しぶりに温泉に浸かっていきたかったが、そのままバスに乗り込み帰路に着いた。
(名栗湖を見下す)
二年ぶりに雪道を歩きましたがやっぱり疲れますね。登りはエアリアのコースタイム五割増で良いと思います。危険箇所は送電鉄塔のピークから滝入ノ頭へと向かう途中の急坂です。ロープが埋まっているらしいので登り下りどちらも滑落要注意。あと凍結箇所多数のためアイゼンはお持ち下さい。
<ちょっと寄り道>
国際興業バスの名郷・さわらびの湯・湯ノ沢・中沢・中藤行きに乗ると途中永田大杉と永田のバス停の間に「大里屋本店」という和菓子屋さんがあります。ここで売られている「四里餅(しりもち)」はスイーツ好きにお薦め。小判型のお餅で中に餡子(つぶ・こし)が入っています。特筆すべきはその柔らかさ。持ったそばから零れ落ちてしまいそうなほどです。なお、かなりの人気商品なので14時くらいには売切れてしまうことが多々あります。山帰りで遅くなりそうなのであれば、連絡を入れておくと取り置きしておいてくれるそうです。また柔らかい商品なので賞味期限が一日しかなく、傾けておくとお餅が潰れてしまうなど結構デリケートなところがあります。ご注意下さい。
DATA:
飯能駅(国際興業バス60分)名郷8:12~8:25大場戸橋~8:48JFEミネラル~9:08白岩集落~9:45鳥首峠~10:26滝入ノ頭
~10:40しょうじくぼの頭~10:48ヤシンタイの頭~11:12橋小屋の頭~11:55蕨山展望台~12:22藤棚山~12:48大ヨケの頭
~13:08中登坂~13:30金比羅神社跡~13:58さわらびの湯バス停(国際興業バス45分)飯能駅
国際興業バス 飯能駅~名郷 790円 さわらびの湯~飯能駅 600円
地形図 原市場 武蔵日原
山と高原地図 奥武蔵・秩父 2010年度版