あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

これも難しい問題提起

2018-09-28 | 本(文庫本)
薬丸岳さんの『虚夢』を読みました。

雪が降ったある日、三上佐和子と娘の留美は通り魔事件に巻き込まれ、留美は亡くなってしまう。しかし犯人は刑法39条「心神喪失者の行為は、これを罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」で保護される。この事件を機に三上夫妻は離婚するが、事件から4年後、三上のもとに元妻の佐和子から「犯人を見た」との連絡が入る。

刑法39条。これもかなり難しい問題でなかなか正解が出せないような際どい問題だと思います。薬丸さんは、そこを丁寧に扱って作品を描き続ける凄い作家さんだと思っています。そして本作品でも、読者に重い問題提起をしています。

刑法39条に関しては少年法と同様に、どうにかならないものかと思う。そもそも平常な精神である人が殺人などの重い罪を犯すものでしょうかね。普段とは違う精神状態だから犯罪行為に及べるのであって、それをくるっと刑法39条で加害者側を保護するだなんて! じゃあ、被害者側の気持ちはどう救ってくれるの? 加害者は守られるのに、被害者には何の配慮もないの? だから佐和子のような行動に出ることを、完全に否定できなくなるのです。
現実問題として、どんどん少なくなっている日本の人口に占める「守られた犯罪者」の割合、増えていく一方なのではないかと恐怖を感じるのです。これは刑法39条や少年法だけに言えることではないけれども。
加害者側も、犯行時の精神状況が本当に平常の状態ではなかったとしても、回復したあと、自分の犯した罪をどう自覚するのでしょう。その重さに耐えられるのでしょうか? それならば、最初からちゃんと裁く方が良くない?

こんなことを考えてしまうくらい、きちんと向き合わなければいけない問題なのではないかと。薬丸さんの作品は、どれも怖いくらい深い。

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