最初に来たのは、僕が大学生のころ。
当時観たはずの芝居の内容は、正直さっぱり覚えていません。
ですから、2度目といっても初めてに等しい気分で、
“小屋”の入り口をくぐりました。
※演劇関係者は、劇場のことを“小屋”と呼ぶことがあります。
公式サイトによれば、この“小屋”のキャパシティーは60~80とのこと。
10人程度が座れるであろう長椅子(背もたれなし)が、段差を付けて6段ほど並んでいます。
僕が座ったのは、前から2列目の、プロジェクターのすぐ後ろ。
プロジェクターは、暗転中に光が漏れないよう、黒い布で覆ってあります。
受付でもらったパンフレットを広げると、劇団の10年間の歩みが書かれていました。
僕が初めて観る劇団は、しかし10年前に産声を上げてから、ほぼ年1回のペースで活動を続けていました。
仕事を続けながら、あるいは結婚して子どもを持ちながら、劇団員のみなさんはがんばってきたのですね。
それは、本当にすばらしいことだと思います。
演劇は、とにかく効率の悪い芸術です。
舞台美術、照明、音響、衣装、メイク、製作、演出、キャスト…
さまざまな分野の人材が集まって、公演日数よりもはるかに長い練習期間を経て、ひとつとして同じものはないであろう“作品”をリアルタイムで作り上げる。
今回の公演の場合、その“作品数”はたったの2つです。
その2つを客前で披露するために、大勢の大人たちが時間とお金とを費やして、半年近くにわたって努力をしてきた。
チケット代500円(関係者の友人と名乗れば無料!)では、金銭的に到底釣り合うわけもありません。
もちろん、劇団員のみなさんはそんなこと百も承知で、この日を迎えているのでしょう。
とはいえ、たとえ無料で観せてもらうといっても、僕は「客」です。
これから約100分をかけて行われるステージに感動することができなければ、たとえチケット代は無料でも「無駄な時間をつかってしまった…」と後悔することになるでしょう。
しかし、キチソンが自身のサイトやmixiで「観に来てください」と公言している以上、友人としては行かないわけにいきません。
それはもちろん(大げさに言ってしまえば)友情ゆえの行為でもあるのだけれど、キチソンという演劇人に対する信頼が強いからでもあるのです。
場内は、みるみるうちに観客で埋まっていきました。
キチソンくん自身が前説として登場し、「愛と勇気の3センチを!」と観客に呼びかけ、ちょっとずつ席を詰めては、やってきたお客さんを座らせていました。
ここ数年、彼のキャラクターともなっていた“スキンヘッド”(和名:坊主頭)には、再び髪の毛が宿っていました。
司会者を目指して、日々精進中のキチソンくん。
この「育毛」も、きっと司会者修行の一環なのでしょう。
開演予定時刻を10分ほど過ぎたあたりで、キチソンくん再登場。
機材にトラブルが生じていることを告げ、「もうしばらくお待ちください」と頭を下げていました。
のちに聞いた話では、照明の調光機にトラブルが発生していたようです。
上演中止まで考えたほど深刻なトラブルだったようですが、なんとかめどが立ったようで、キチソン再々登場。
「ただいまより開演いたします」
こうして、1時間40分の舞台の幕が開いたのでした。
【つづく】
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