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おもちゃ病院さど Doctor_Rの治療カルテです。

ディズニー マジカルスマートノート が来院しました。

【申告】

 2022年12月に購入しました。

 電源が入らなくなりました。

【初診】

 セガトイズから発売されている”ディズニー&ディズニー/ピクサーキャラクター マジカルスマートノート” です。

 楽しく遊べて勉強もできる豊富なコンテンツがたくさん!
 ●遊び:人気のツムツムアプリがいっぱい!ストーリー追加で各アプリが連動♪
 ●カメラ:顔認識機能搭載!プリショカメラでかわいく盛れちゃう♥
 ●勉強:3,000問以上!ひらがな・カタカナ・ABC・123に加えて小学全漢字1,026文字の文字認識に対応!
 ●通信:マジカルスマートノート同士はもちろん、マジカルスマートウォッチ(別売)とも通信可能!

 

 機能からすると、すでにおもちゃと呼ばれる範囲には収まらない商品です。

 取りあえずメーカの相談センターに問合せをしましたが、下記の理由から対応不能との回答がされました。 

  世界的な物流の停滞、遅延により対応部材に在庫がなく、入荷時期が未定である

  製品保証6ヶ月を経過している

 

 おもちゃドクターには、荷が重そうですが食べず嫌いはよしましょう。電源の入力部から順次確認して行きます。

 まずは、充電ケーブルを接続して状況を確認します。

 申告通り電源は、入りません。そこで内部を開けて確認をします。

 想像はしていましたが、おもちゃドクターの守備範囲外の基板が横たわっています。以前のモデルは乾電池仕様だったようですが、このモデルからリチウム電池の仕様に変えて乾電池交換をなくしたようです。ドクターもこれだけのLSIが実装されていると、導電性マットとリストバンドをアースに落として静電気対策をしてから解析作業に入ります。

 

 基板上のリチウム電池配線の接続部の電圧を測定すると、0.15V程しか有りません。これでは充電は出来ません。

 充電ケーブル出力部から確認を始めます。

 DCプラグでの電圧は、5.24Vあり充電ケーブルに断線などの異常はありません。

 

 DCジャック基板部を確認をします。

 DCジャック基板に実装されているヒューズが、指で触られないほど熱くなっています。明らかに異常に電流が流れていることが考えられます。充電ケーブルの代わりにユニバーサル電源を接続して電流値を確認すると、1A以上流れていました。

 

 DCジャック基板の回路図は、次のようになっています。メイン基板との接続ケーブルを外して、DCジャック基板出力部で電圧を確認すると5.24V有りますので、DCジャック基板には異常はありません。

 メイン基板には、TP701とTP702のみが接続されています。VRS701の抵抗値は、1.4MΩありました。

       

 これらの事実から、原発巣を抱えているのはメイン基板内ということになります。

 禁断のメイン基板に踏み込むことにします。

 メイン基板の入力部からリチウム電池までの回路を追いかけました。ここで気づいたことは、このメイン基板は、電源(?)、GND層が基板の中間層にある多層基板(*1)でした。

 関わりがありそうな配線から回路図は、不完全ですが以下の様になっているように思えます。

 次に考える事は、リチウム電池につながるBAT+とBAT-の端子で0.15Vになると言うことは、5Vの電圧をショートに近い状態にすることができる可能性が高い部品が破損していないか確認することです。

 ・P-ch Mos トランジスタのKIA3415は、破損していません。

 ・コンデンサC104、C108は、容量抜けも短絡もしていません。

 ・ショットキーバリアダイオードD101は、破損していません。

 このおもちゃは、バッテリー動作でも充電ケーブル動作もできる仕様です。ところが、基板の配線パターンを追いかけてもBAT+から繋がっている配線が見つけられないのです。ですが、そんな訳もなく追跡もここまでとなりました。残念ながらBAT+とGNDラインがショートに近い状態では、困難でした。

 

 元の状態に組み直す前に、DCジャック基板の出力部からユニバーサル電源で5Vを供給すると、消費電流は0.61Aでリチウム電池につながるBAT+とBAT-の端子間で3.7Vが出ています。

 しかし、リチウム電池充電制御のICが発熱しボイド(*2)が大きくなったようなので中断しました。おそらくこのICが原発巣と思われ通電する経過で状態が悪化したものと推測します。

 

 残念ながら、このICをWEBから検索することは出来ませんでした。

 最後にメイン基板の機能ブロックの配置です。(間違えているかもわかりませんが)

 

【治療後記】

 残念ながら治療をすることが出来ませんでした。基板の大きさを小さくするため、配線長を短くしてインピーダンス(*3)を下げるためと思いますが多層基板が使われていました。ここまで来るとおもちゃとは言えないもの作りです。ただ、これだけの機能を実現するためには必要なもの作りなのかもわかりません。産業用のタブレットなどと異なる点は、信頼性にかけるコストの重み付けの違いでしょう。ただ、1万円を超える商品が半年余りで壊れて、有償であっても治せないのはつらいですね。他にもこのおもちゃの購入サイトでの低評価の理由にやはり電源が入らなくなるというものが多いのも、気に掛かるところです。

 

【おまけ】

 *1 多層基板

    長所

    メイン基板の場合、電源(?)、GNDを内層に配置されています。

    これにより電源やGNDパターンが基板の表層から無くなるので、

    部品の実装密度を上げられ基板の小型化ができます。

    電源、GNDをほぼ基板全面積に配置されているので、電位が安定し

    ノイズに強くなります。

    部品間の配線長が短くなりますので、インピーダンスの改善ができます。

  

 

片面基板例

    多くのおもちゃに使用される片面だけで回路配線を接続する小規模回路

 

  

 

両面基板例

    片面だけでは回路配線の接続ができないため、両面を使用して回路配線を

    接続する中規模回路

 

  

    両面だけでは回路配線の接続、配線幅の確保ができないため、中間層も使用

    して回路配線を接続する大規模回路

 

    短所

    基板作成の製造工程が増えるので、製造期間が長くなったり、歩留まりが

    低下するため価格が上昇します。

    

 *2 ボイド

    IC内部の回路が破断して大きな電流が流れ発熱し、これによりガスが発生し

    IC表面に生じた膨れの現象を言います。

 

 *3 インピーダンス

    交流回路における電気抵抗を指します。インピーダンスの値が高くなるほど

    電気が流れにくくなります。高い周波数での信号が伝達されるとき配線の

    長さが長くなるほどインピーダンスも高くなります。

 

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