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支流からの眺め

世界の関心は、コロナからウクライナに移った

 ウ国の人口は約4000万、多くはスラブ系である。国土は約60万平方キロ(日本の1.6倍)の肥沃な平原で、壮大な穀倉地帯である。地政学的にも、露国の懐に深く入り込み、黒海にも接するなど、重要な位置にある。この重要性ゆえに、他国からの侵入と抵抗が繰り返されてきた。

 13世紀にキエフ大公国がモンゴルに斃された後は、ポーランド、オーストリア、トルコ、ロシアなどによる支配と分断の地となった。ロシア革命後はソ連邦に組み込まれ過酷な搾取を受け、1991年のソ連崩壊で独立しその軛から脱した。しかし、親米と親露の間で政情は不安定であった。

 現況は、ウ国と露国との実弾の戦闘、欧米と露国との経済戦と情報戦、ウ国市民の被災と困窮が進行している。変数が多数あるところ、情報は交錯し、今後の展開の可能性は果てしなく広がる。この拙文も含めて、巷には予想が氾濫している。しかし、実際の決断は当事者が下す。

 露国は宥和的な条件を呑むまい。経済制裁は厳しいが、石油と食料という必須の資源は国内で調達できる。武力には制限があるが、いざとなれば生物化学兵器や核兵器がある。国民はロシア帝国の矜持と幻想を持ち続け、困窮と耐乏には慣れており、非人道的な行為への抵抗感も薄い。

 対するウ国も劣らず耐える。国民はコサック兵の歴史に恥じない戦闘意欲を保つ。NATO諸国も支援の手を緩めるわけにはいかない。しかし、地の利は露国にあり、部分的な親露政権の成立は避けられないだろう。長期化すれば、露国の内部崩壊、米国の惨敗的退却もありえる。

 この状況での鍵は中共国である。米露を消耗させ、世界覇権を狙う。米国には露骨に逆らわず、露国には恩を売りつつ資源を手に入れ、かつ戦闘の長期化を画策するだろう。印度も露国の資源や武器に惹かれているが、中共国に利しないよう行動願いたい。

 わが国では、人道問題に注目が集まる。しかし、悲惨さを避けるために降伏を勧めるのは間違いである。米国占領しか経験のない日本人は、降伏や隷属の怖さを知らない。両者で話し合うのも、国内紛争だけに通じる方法論である。ここで重視すべきは、人道や正否ではなく国益である。

 国際の場での選択肢は米国追随しかない。それより、米中の対立構造を踏まえた国内政策が肝要である。中共国への牽制、対中政策の徹底、歴史教育を通した国を守る気概の醸成などである。自国防衛のために戦うかという質問に、Yesの回答率はわが国がダントツの最低!らしい。


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