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支流からの眺め

最近の(19)―全ての道は緊縮に通ず

 令和7度の予算案が衆議院を通過し、これで年度内予算成立が確定した。少数与党で苦しいところ、国民民主の基礎控除178万を呑まされそうになったが、結局は高校授業料無償化で維新を味方に引き入れて過半数を獲得した訳だ。正論たる基礎控除引き上げを高校無償化で矮小化したのだ。

 これは政策論ではなく緊縮先行の金銭論の結果だ。基礎控除だと数兆円の減税(政府の収入減)となるところ、高校無償化なら数千億の負担で済む。公明の提唱する壁の若干の引き上げを入れても1兆円にはならない。裏は言うまでもなく財務省で、国会での予算修正(29年ぶりとか!)も許せないようだ。

 他に揉めているのが、高額療養費制度(一定額以上の医療費を免除)の見直しだ。この制度の費用は約2.3兆円で、見直しで浮くのは数千億だ。これを絞り上げようとしている。国民皆保険制度とは、名の通り、高額の医療を受ける羽目になった場合に全国民で助け合う制度ではないか。やはり金銭論だ。

 医療といえば、病院の経営が非常に厳しい。医療行為には個別に保険点数が付いており、それに10円をかけた金額が病院の収入(診療報酬)となる。この1点10円の換算率は物価スライド制ではなく、設立当時から基本的に変わっていない。最近の物価上昇に追いつかないのは当然の話だ。

 大学病院では文科省からの交付金も削られ、さらに厳しい。立場の弱い研修医の給与を安く抑え、研究や教育は後回しで経営に走ることになる。その有様を見て、直美(ちょくび:初期研修が終わると直に美容外科医となり高収入を得ようとする)に走る医師が増えている。これも金銭論の顛末だ。

 これらは全て緊縮と財政均衡(政府支出を税収だけで補う、過去の国債も税金で償還する)に通じる。考えてもみよう、より良いものの価格はより高いのだから、その分の貨幣の量を増やさなければ永遠に豊かになれない。社会が進歩する限り政府予算は赤字(国債発行)になるのだ。

 このままだと日本全体が貧困化する。お金の奪い合いで共同体が破綻しかねない。逆に言えば、共同体意識が強いから耐えられているのだ。そもそも徴税の目的は会費集めではない。それは景気と富の偏在の調整だ。財務省も考え違えしている。用語も悪い。「調整金(調金)」とかはどうだ。

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