【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

年末調整、チャットボット(ふたば)に質問

2022-11-11 20:01:00 | 源泉徴収と年末調整
いつの間にか国税庁のサイトに「チャットボット(ふたば)」というものができていました。

利用できるのは「所得税の確定申告」「インボイス制度」「年末調整」の3つの分野です。年末調整の時期ですので年末調整について質問してみます。

◆合計所得金額

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「合計所得金額とは」ですね。

合計所得金額とは、給与所得(所得金額調整控除後の額)や公的年金(雑所得)などの全ての所得の金額を合計した金額となります。

前年から繰り越した損失がある場合は、その通算前の金額が合計所得金額になります。

詳しくは参考情報をご覧ください。

参考情報:合計所得金額

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さっそく期待を裏切られました。結局、昔ながらのお堅い情報を参考にしろということです。

◆失業

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すみません。そのご質問はわかりませんでした。メニューから知りたい内容を探すこともできます。

申し訳ありません。そのご質問については、回答が見つかりませんでした。別の表現でご質問いただけますか?

ごめんなさい...その質問はわかりません。表現を変えてもう一度質問をお願いします。

【注】同じ質問を何度かしてみると「意味は同じの異なる回答」になりました。

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年末調整は年度末に職についている人のみ受けることができます。毎月の給与から徴収されている所得税は仮の税額で、それを精算するのが年末調整です。年末調整で精算をすれば税金が還付される人もいます。「自分は税金を徴収されすぎているのでは?でも、失業中なので年末調整は受けられない」と考える失業者はいると思います。

◆退職

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聞きたい質問は次の中にありますか?無いようでしたら、別の表現でご質問ください。

1転職などの場合(今の収入は一か所で前職がある)の年末調整
2退職した場合の年末調整

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「失業」ではだめでしたが、「退職」で解決することができました。しかし、「失業→退職」という連想が働かなかった場合には未解決のままです。ちなみに、「解雇」ではだめでした。

◆住宅ローン

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聞きたい質問は次の中にありますか?無いようでしたら、別の表現でご質問ください。

1住宅ローンを借り換えた場合の年末調整
2家を買った場合の年末調整
3家を買った場合の年末調整

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こんなもんでしょうね。

◆医療費

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聞きたい質問は次の中にありますか?無いようでしたら、別の表現でご質問ください。

1医療費控除・寄附金控除(ふるさと納税など)・雑損控除は年末調整できるか
2所得控除とは
3年末調整の各種申告書の書き方

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これもこんなもんでしょう。

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★国税庁サイトの「入り口」としては大変有効

チャットボット(ふたば)の情報のみでは全面的な解決(税額の計算)はできませんが、あのとっつきにくい国税庁サイトの入り口としては大変有効です。チャットボット(ふたば)に様々な単語を入力し続ければ、解決とまではいかなくても「光が見えてくる」と思います。

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「年末調整計算シート」

2022-11-11 20:00:00 | 源泉徴収と年末調整
今年も年末調整の時期になりました。

年末調整計算シート」、国税庁サイトで、今年(令和4年分の年末調整)からこのような便利なツールが提供されるようになりました。エクセルで作成されており、国税庁サイトの下記のページから無料でダウンロードすることができます。

◆各種申告書などとは連動していない

「年末調整計算シート」では、同じく国税庁が提供する年末調整に関する各種申告書である「扶養控除等申告書」「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」「保険料控除申告書」「住宅借入金等特別控除申告書」、さらには「源泉徴収簿」の数値などを基に年末調整の計算をします。ただし、これらと年末調整計算シートは連動していませんので再度入力しなければなりません。

◆源泉徴収票は作成できない

さらに、「源泉徴収票も!」といきたいところですが、それは無理なようです。しかし、年末調整計算シートの結果を源泉徴収票にそのまま転記すればいいです。

◆利用環境

動作保証をされているOSはWindows8.1(32bit)(64bit)、Windows10(32bit) (64bit)、Windows11(64bit)で、エクセルのバージョンは2016(Windows8.1はこれのみ)、2019、2021です。

◆利用に関する注意事項

国税庁サイトより引用=====

「年末調整計算シート」に入力した給与の総額や控除対象扶養親族の人数などに誤りがないか、必ずご確認ください。

=====引用終わり

「各種申告書と源泉徴収簿の記載が正しく」、これらのとおり「年末調整計算シート」に入力すれば正しい結果が得られるということです。

◆2・3名の年末調整ならばこれで十分(給与計算ソフトは不要)

「年間給与総額」「給与所得控除」「各種所得控除」「課税所得金額」、そして「税率」「税額」、この年末調整の計算を自ら行うことは容易ではありません。「給与計算ソフト」というものが市販されており、これを利用すれば毎月の給与計算のみならず年末調整までも行うことができます。しかし、給与計算ソフトの販売価格は最低でも数万円でさらには年間の保守料金も数万円必要です。

2・3名の年末調整のために給与計算ソフトを導入するというのは賢明でありませんので、この国税庁が提供する「年末調整計算シート」を活用すべきです。ネット上に類似するものも出回っていることでしょうが、やはり国税庁が提供するものは信頼性が違います。

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源泉徴収簿

従来から国税庁から提供されています。年末調整計算シートは、これをエクセルにしたものです。エクセルが苦手な人はこれを使用してもいいと思います。

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年末調整の還付金を受け取らない場合の経理処理

2022-01-10 10:30:00 | 源泉徴収と年末調整
中小零細企業の代表者は年末調整の還付金を受け取らないことがあります。還付金は少額であること、還付金を受け取るために12月の役員報酬の手取り額の計算をあらためてすることが面倒であるのがその理由です。

還付金を受け取らないからといって代表者の年末調整をしないというわけにはいきませんので、年末調整はして還付金に相当する金額の経理処理をしなければなりません。

◆放置しておくと預り金勘定に残る

年末調整をする12月の源泉所得税の納付額は、徴収した税額から還付した税額を差し引いた額となります。徴収が10万円で還付が6万円の場合は4万円です。預り金勘定の動きとしては、10万円の徴収が還付6万円と納付4万円でゼロになるということです(前月までに滞納がなく、経理処理も正しいとして)。いわゆる「納期特例」の適用を受けている場合には「徴収は7月から12月合計」で計算します。

代表者に還付をしない場合は代表者の還付金相当額が預り金勘定に残ります。上記の例で代表者の還付額が7万円のうち2万円であるとすれば、預り金の残高は2万円になります。

◆預り金から社長借入金に振替える

預り金勘定の「預かり」という意味は、税務署に納付するために預かっているということですから、税務署に納付する必要がない分は預かった人に返さなければなりません。これを返していない場合には借りているということです。ですから代表者に還付していない金額は社長借入金(役員借入金)に振替えるのです。

この処理をしていないと、預り金勘定は還付金相当額だけ残り続け、あたかも源泉所得税を納付していないように見えます。金融機関に決算書を提出している場合、この金額が積もり積もって多額になってくると印象が悪いですので、忘れずに社長借入金へ振替えておく必要があります。

◆年末調整で不足する場合(預り金勘定はマイナスに)

年末調整の結果、今までの徴収額では不足するというケースがあります。徴収が10万円、還付が5万円、不足が2万円の場合、納付は7万円です。預り金勘定の動きは、10-5+2-7でゼロになります。

不足する2万円を追加で徴収していない場合には、預り金勘定は10-5-7=マイナス2万円となってしまいます。

この2万円の不足が全額代表者の分である場合には、社長貸付金(役員貸付金)に振替えなければなりません。

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年末調整の電子化(給与所得も確定申告を認めるべき)

2021-12-07 19:00:00 | 源泉徴収と年末調整
ようやく沈静化したかと思われたコロナ禍でしたが、オミクロン株の出現で振出しに戻ってしまった感があります。どうやらこの先も、新たな変異株の出現に怯えながら暮らす日々が当分は続きそうです。

そんな中、今年も年末調整の時期に突入しました。最近では年末調整の電子化か進み、年末調整作業の担い手である雇用者の事務負担も軽減されたかのように思われています。しかし、年末調整の電子化を行うには、電子化に対応したシステムの整備が必要です。また、それを使いこなせるスキルが雇用者と被雇用者の双方に求められます。

★給与所得も確定申告で税額を確定するようにしてもいいのではないでしょうか?

もちろん、確定申告の強制をしてはいけません。また、雇用者の「年末調整は面倒なので・・・」という安直な考えを許してはいけません。事前に所定の手続をした「希望者」にのみ年末調整に替えて自己責任による確定申告を認めるという方式です。

その環境は十分整備されています。国税電子申告・納税システム(e-Tax)は完全に軌道に乗っています。電子申告に必要なマイナンバーカードの普及も着実に進んでいます。

給与所得で確定申告をするようになれば確定申告の件数が増えて、税務当局の負担が増えそうに思えます。しかし、データは電子化されていますので、紙による提出物の受付と保管という作業は一切不要です。また、電子データがシステム上でチェックされるようにしておけば、税務当局の手間は一切かからないといっても過言ではありません。

昨今、雇用者に被雇用者の税額計算プロセスが知られることはプライバシーの侵害であると考える人がいます。このことはすでに、一部の市町村の住民税通知書における「個人情報保護シール」において配慮がなされています。「住宅ローン」「加入している生命保険」「医療費控除」「ふるさと納税」など、被雇用者にとって雇用者に知らせたくないこともあります。

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「給与所得も確定申告」、時代の流れだと思います。


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【混乱必至!】今年の年末調整(従来の常識が通用しない)

2020-10-28 09:00:00 | 源泉徴収と年末調整
コロナが収束に向かうめどが立たないまま令和2年もあと2か月となりました。一年の終わりといえば「年末調整」です。各保険会社は「生命保険料控除証明書」を郵送しました。国税庁のサイトでは「年末調整のしかた」の令和2年版が公開されています。

今年の年末調整では今までにはなかった「新しい用語」が登場し、計算方法も従来と大きく異なることから混乱は必至です!

◆基礎控除申告書

「基礎控除38万円は誰もが一律に認められる」という、昭和・平成・令和と続いてきた「常識」がなくなりました。令和2年からは合計所得金額に応じて「48万円、32万円、12万円、ゼロ」に分かれます。そのため年末調整において基礎控除の額を決定すべく「基礎控除申告書」を提出しなければなりません。

◆所得金額調整控除???(年間給与収入が850万円を超える一定の者が対象)

給与収入が850万円以下の者については給与所得控除が10万円引き下げられました(↓)。一方、基礎控除は10万円引き上げられ(↑)、その結果、10万円の増減が相殺されるため、課税所得は増えず税額にも影響しません。

しかし、給与収入が850万円を超える者については、給与所得控除が最大25万円引き下げられ、基礎控除の引き上げ10万円を考慮しても課税所得が増額されることになりました。これを調整するのが「所得金額調整控除」です。しかし、対象は自身が特別障害者に該当する、特定の要件に該当する配偶者や扶養親族を有する者に限られます。

◆ひとり親控除

未婚のひとり親に対しても一定の条件に該当すれば35万円の所得控除が認められるようになりました。このひとり親控除は従来の寡婦(寡夫)控除と一部重複することから、寡婦(寡夫)控除についても改正が行われました。

◆控除対象となる配偶者と扶養親族の合計所得金額

38万円以下から48万円以下に変更されました。しかし、給与所得控除が10万円引き下げられたため、控除対象となる配偶者と扶養親族の「年間給与収入の要件」が変わるのではなく、従来どおり「103万円以下」のままです。

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★年末調整に必要な各種申告書

〇扶養控除等(異動)申告書
〇保険料控除申告書
〇基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書

3番目の「基礎控除・・・」は今年からで、昨年までの配偶者控除等申告書はこれに含まれます。

年末調整作業をする人たちからは、「(改正を)もう1年待ってほしい・・・」という声が聞こえてくるでしょう。

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