【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

預金利息の仕訳と税務処理

2024-11-28 17:00:00 | 会計、税金、経営、その他の話題
【ご注意】下記の説明は会社を前提にしておりますので、個人事業者の扱いはこれとは異なります。

日銀の利上げに伴い「受取利息勘定」の存在が増してきました。マイナス金利時代は年間合計で100円未満であったものが1000円を超えるケースも珍しくありません。これで貧相であった損益計算書の営業外収益の部も見栄えがするようになりました。営業利益と経常利益の差額が支払利息だけでなくなりました。「営業利益に営業外収益を加えて営業外費用を差し引いたのが経常利益」という説明が現実味を帯びてきました。

◆預金利息からは所得税(及び復興特別所得税、以下同じ)が源泉徴収されている

「実は!」、預金利息からは所得税が源泉徴収されています。長らく「金利のない時代」が続いたことから若い人の中にはこのことを知らない人がいます。預金利息の金額があまりにも小さいので、預金利息の仕訳や税務処理など大勢に全く影響がないことから「受取利息8円!」と源泉徴収された所得税を意識することなくそそくさと処理を済ませます。

預金利息からは所得税(15%)と 復興特別所得税(0.315%)、合計15.315%が源泉徴収されます。

◆預金利息の仕訳

預金利息からは所得税が源泉徴収されているので預金利息の仕訳は「利息」「所得税」、そして結果として増えた「預金」の3つの要素を対象としなければなりません。

預金利息が100、所得税が15(便宜上の数値)、預金の増加が85とすれば次のとおりです。

【借方】預金85+法人税等15【貸方】受取利息100

◆預金利息から源泉徴収された所得税を計算する

定期預金の利息は満期時に金融機関が利息の計算とともに源泉徴収した所得税も知らせてくれますが、普通預金はそのような連絡はありません。そこで、手取り額(預金の増加額)から利息総額(源泉徴収前の金額)を逆算して差額としての所得税を計算します。

利息総額(源泉徴収前の金額)=預金増加額+利息総額×15.315%
預金増加額=利息総額-利息総額×15.315%
預金増加額=利息総額×84.685%(100%-15.315%)

これで計算できます。ちなみに源泉徴収する所得税は円未満切り捨てです。

実務上はこんな面倒臭いことはしないで、源泉徴収後の利息額を0.84685で「割り戻して」利息総額を計算し差額を所得税(円未満の端数処理は適当)、といった処理をそそくさとしています。これでもマイナス金利時代は大勢に影響はありませんでしたが、今後はこんなことではだめでしょうね。

◆法人税の計算と預金利息から源泉徴収された所得税

預金利息から源泉徴収された所得税は法人税から差し引くことができます。預金利息は利益計算(損益計算書)において受取利息として利益に加算され結果として法人税の対象となります。法人税の計算においては預金利息から源泉徴収された所得税を法人税の前払いとして差し引くという計算をします。

◆預金利息から源泉徴収された所得税が還付されるケースも

赤字(損益計算書の利益がマイナス)であれば法人税は課税されません。この場合、預金利息から源泉徴収された所得税は法人税から差し引けませんので還付されます。

法人税の申告を済ませてしばらくして、預金通帳に「数円の入金が税務署から」ありませんか?

それはこれです。

「毎年毎年、紛らわしい。もうこんなことをしないでほしい!」といって申告を依頼した税理士に文句をいう人もいると聞いています。しかし、今後は缶コーヒーが飲める程度の金額になると思います(笑)。

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銀行印?(ダイレクト納付の申込みに必要)

2024-10-25 17:31:00 | 会計、税金、経営、その他の話題
DXの進展につれて「印鑑」を使用する機会が激減しています。銀行取引も例外でなく、以前であれば印鑑がなければ多くの手続が一切進みませんでしたが、昨今では印鑑が不要な手続が大半となり、億単位の資金移動が「印鑑なし」で行われています。

「設立時に預金口座を開設したとき」
「クレジットカードを作ったとき」

「銀行印」を押印したのはこのときだけという会社が増えています。しかし、最近になって銀行印がなければできない重大な手続が現れました。それは「ダイレクト納付」です。

◆印鑑セット(実印のみ作る)

会社を設立する際、「実印」「銀行印」「角印」を作るのが一般的ですが、昨今では押印の機会が減少していることと経費削減から実印しか作らないケースが増えています。このようなケースでは実印と銀行印を兼用します。

◆ダイレクト納付とは

ダイレクト納付とは、納付書(紙)による金融機関や税務署などの窓口での納付に替えて、ネットで所定の操作をすれば納税者の預金口座から直接納付できるという方式です。電子申告と並ぶ税務行政DX化の目玉で、最近では官民挙げてその普及を促進しています。ダイレクト納付が普及すれば、税務当局も金融機関も事務作業が大幅に削減されるから官民の利害が一致します。また、納税者も金融機関や税務署などに納付のために赴く時間が不要になることから積極的にダイレクト納付に移行しています。まさに、ダイレクト納付は「三方よし」なのです。

◆ダイレクト納付の開始手続には銀行印が必要

DXの象徴ともいえるダイレクト納付ですが、最初だけは書面に銀行印を押印するという従来からの手続が必要です。

◆銀行印?

支払いはネットバンキングとクレジットカードが主流となっている昨今、銀行印は机の引き出しの奥に仕舞い込んでいるという状況の会社があります。

「やっと印鑑が見つかった」とか「印鑑の蓋がなかなか取れなかった」はいいとして、「銀行印が見つからない」と「どれが銀行印か分からない」は大変です。「実印を銀行印にしていたはず」が「実は代表者の個人の印鑑を銀行印としていた」といったようなケースもあります。

◆預金名義等

銀行印はあるにしても、代表者や所在地の変更を銀行側に届けていないのも問題です。ダイレクト納付の申込みを機にアップデートしておかなければなりません。

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★ダイレクト納付は便利です!

ダイレクト納付の手続をすると「税務署が一方的に預金から税金を引き落とす」と警戒する人がいますが、そんなことはありません。ダイレクト納付は、納税者が自主的にサイトで操作をしなければ一切の納付は行われません。

各金融機関は窓口での業務の縮小(合理化)を進めています。特に事業者向けサービスはビジネス街の店舗に集中させる傾向が強く、郊外の店舗の窓口では事業者関連の税金の納付が行えなくなっているケースが目立ちます。今後、現在納付で利用している金融機関で納付ができなくなることも十分あり得ますので、できるだけ早くダイレクト納付に移行することをお勧めします。

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株価が乱高下(こんなときこそNISA!)

2024-08-23 18:30:00 | 会計、税金、経営、その他の話題
このところ株価が乱高下しています。8月5日、日経平均株価は史上最大の下げ幅を記録しましたが、わずか数日でこれを取り戻したのには唖然としました。過去幾度とあった大暴落ではこんな短期間で株価は回復しませんでしたが、今回の値動きはなんと表現してよいのかわかりません。おそらく、人類史上最初で最後の出来事といっても過言ではないかもしれません。

このようなことが起きるのは、やはり「日本が弱い」からだと思います。日銀の意表を突く利上げは海外投資家の格好の標的となったのでしょう。「昨夜のNY株式市場が・・・」、我が国の株式市場はこの状態からいつまでたっても抜け出せません。GAFAM(いまではMagnificent7が正しい)と比肩する世界を牽引するような企業が存在しないからです。このような国が他国に配慮を欠いた突然の利上げという「生意気な行動」をすれば大国の餌食になるだけです。

今年から鳴り物入りで始まった新NISAで早くも「損切り」が出ている模様です。NISAの投資対象の大部分が通称「オルカン」と呼ばれる世界全体の株式(しかし大半が米国株式)を対象とした投資信託です。これは日本国民の多くが、それも若年層が我が国経済の先行きに期待していない表れです。

こんなことではどうにもなりません!

NISAは株式投資による国民の資産形成だけでなく、日本企業の成長と発展もその目的とすべきです。やはり、「投資対象は日本企業に限定」「日本企業投資枠を設ける」「暴落時には日本企業への投資枠を特別に設ける」など、日本企業への投資を促進することが絶対に必要です。

こんなことをしていると、もう一度、今後は立ち直れないほど落とされますよ!
そう思えば、1980年代のブラックマンデー、この間のリーマンショックは秋でした・・・

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インボイスに電子取引など

2024-07-17 18:31:00 | 会計、税金、経営、その他の話題
昨年半ばから今年初めにかけて事業者を混乱させたインボイス(適格請求書)に電子取引でしたが、今ではすっかり落ち着きを取り戻したようです。

◆インボイス制度の最大の目的

インボイス制度の最大の目的は免税事業者にも消費税を納税させるということですが、この目的は達成されたといえます。今や「登録番号」を請求書に記載せずして消費税を請求するという「不心得者!」は皆無といっても過言ではありません。

国税庁は当面、消費税の申告処理(仕入税額控除の正確性)については寛大な対応をするとしています。しかし、いざ申告をするとなると気になります。「免税事業者の仕入税額控除」「売上代金から差し引かれた振込手数料相当額」など「これでいいのだろうか?」と不安になることが多々あります。

2割特例、特例が終わってからの税額を早くも気にする事業者が多いです。2割特例が終わる頃、小規模事業者の廃業が増えるかもしれません。

◆電子取引

そもそも電子取引がなんであるかの認識が進んでいません。特に電子帳簿やスキャナ保存との混同が目立ちます。

にもかかわらず、電子取引は日々増加しています。それに応じて電子取引におけるトラブルも増加しています。広くネット上の取引が安全で円滑に行われるためのわかりやすい法整備が必要だと思います。税務はそれを利用する、税務的な観点から必要な規定を設ければよいのです。

◆定額減税

6月の月次減税は順調に行われたようです。しかし、大切なことは月次減税の合計額が、最終的な定額減税額に一致するとうことです。また、減税しきれない人についてはその旨が源泉徴収票に記載しなければなりません。これが大変な作業です。

◆ふるさと納税

今年は能登地方の市町村、しかも「返礼品なし」が増えるでしょう。しかし、この善意にふるさと納税仲介サイトのポイントが付与されるのは悲しいことです。(ポイントの付与は2025年10月以降廃止されます。)

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定額減税、順調に実施される

2024-07-17 18:30:00 | 会計、税金、経営、その他の話題
事務手続の煩雑さへの批判や経済効果に対する疑問の多かった定額減税ですが、どうやら順調に行われている模様です。もっとも危惧された、給与を支払う側の「定額減税を知らなかった」「定額減税を忘れていた」はほとんどないようです。

◆給与明細の記載方法

定額減税額は給与明細に記載しなければなりません。その記載方法は様々ですが、一番多いのは控除欄に「通常の徴収額」と「定額減税額をマイナス」で記載するという方法です。控除欄にマイナスで記載するということは「手取り」が増えるということです。通常の徴収額が1万円、定額減税額も1万円であればその月は所得税の徴収はありません。

◆定額減税に到達したかの記録

これが大変です。給与明細に書ききれないでしょう。「給与明細の別紙」として、月ごとの定額減税額と各月の合計減税額を記載することになります。

「定額減税額3万円」「6月以降の通常の源泉徴収額8千円」とします。

6月減税額8千円
7月減税額8千円
8月減税額8千円
9月減税額6千円→減税終了

ということになります。しかし、こんな「きれいな金額」にならないケースもあります。通常の源泉徴収額が月によって変動する場合は大変です。

◆結局は年末調整

年度途中で「扶養親族が増減する」ことがあります。定額減税額は扶養親族数に応じて決まりますので「月次」と「年末」で定額減税額が異なることもあります。

今年は入念に扶養親族数を確認しなければなりません。特に扶養控除されない年少扶養親族(年齢16歳未満の扶養親族)は正確に把握されていない、つまり扶養控除等異動申告書に記載されていないケースがありますので注意が必要です。

◆源泉徴収票の記載(定額減税しきれない場合)

年末調整でも定額減税しきれない金額がある場合、その旨と金額を源泉徴収票に記載しなければなりません。そうしないと「給付金」が受け取れません。

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「ややこしいことをしてくれたね・・・」

年末調整や確定申告の時期にため息が聞こえそうです。

「本当にこれでよかったのだろうか?」

定額減税の「後始末」、来年になっても続きそうです。

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