【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

電子取引?(業者によるあおりにご注意!)

2023-12-28 20:01:00 | 経理業務(帳簿の作成)
来年1月から電子取引のデータ保存が義務付けられます。従来は紙へ印刷して保存しておけばよかったのですが、データによる保存をしなければなりません(紙への印刷は不要です)。取引先からの圧力がすごかったインボイスとは違って、この電子取引は関心の薄い事業者が多いのが実情です。

◆業者による「あおり」

電子取引に危機感を抱いている人の共通点は業者にあおられたということです。あらゆる制度が変わるとき、それに関連する民間業者は便乗して儲けようとします。需要を喚起するためであれば必要以上に恐怖心をあおるというのは常套手段です。

◆取引先の要請

いまだ関心の薄い電子取引ですが一部企業は電子取引に対して積極的です。そのような企業が主要取引先である場合にはその企業の方針に合わせて電子取引に適応するしかありません。

◆電子帳簿にスキャナ保存

電子帳簿とスキャナ保存(領収書など)を電子取引と混同している人がいますが、全く別物です。電子帳簿とスキャナ保存は事業者による「選択適用」ですが電子取引は「強制適用」です。

◆保存作業と保存スペースが不要となるメリットも

電子取引データの保存には手数も要しますが、ペーパーレス化というメリットもあります。電子データで保存しておけば紙への印刷は不要で、紙書類の保存作業も保存スペースも不要です。ですから、メリットがある場合は積極的に電子取引を導入してください。

◆税務調査における扱い

電子取引については紙に印刷した書類は「ないもの(証拠とはならない)」として扱われます。税務調査が行われるとなったら、急いで取引業者のサイトからデータをダウンロードしなければならないということです。

来年の春以降、電子取引のデータ保存義務化後の期間を含む税務調査が続々と行われます(トップは1月決算の会社です)。

【調査官】この電子取引のデータを見せてください

【社長と経理担当者】電子取引???当社では電気関係は扱っておりません。電気代は銀行口座振替です。その請求書はネットで閲覧できたと思います。口座振替はネット銀行でしていますが通帳は印刷していません。

【調査官】それが電子取引です。

結果に注目です。

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「電子取引」で規制すべき人たち

2023-01-21 15:30:00 | 経理業務(帳簿の作成)
インボイスとともに「電子取引」が中小零細事業者を困惑させています。コロナ禍や不安定な国際情勢から日増しに事業環境が悪化する中、「これ(インボイスと電子取引)を機に廃業する」という弱気な事業者さえ現れています。

電子取引とは、平たくいえば「物の動きやサービスの提供を除いて、取引の全てをネットで完結させる取引」のことです。ネットショップ、旅行予約サイトなどのことです。電子取引における取引記録は、当事者が意識的に紙に印刷しない限りそのすべてが自身で管理するPCやクラウド、相手先のそれらにしか残りません。「電子取引」はこのネット取引における取引記録の消失を防止するための規制に他なりません。

ネットが普及した昨今、「常軌を逸した」ネット取引を行い多額の利益を得ている人が多数出現しています。それでいて、自身がどれだけの利益を得ているかを正確に把握しておらず、利益を計算する手段(記録)さえない人もいます。

事業に関する支出(事業上の費用となる)のほとんどをネット上で行う人もいます。「何でもスマホ!」という人もいます。このような人たちは、取引に関する記録が手元にはなく、必要に応じてサイトにアクセスすることによって取引状況を確認しています。

「電子取引」で規制すべきはこのような人たちです。「ネットなので記録は残らないのは当然!」「事実関係を明らかにするのが税務署の仕事(税務署がそれをできないのであれば課税されない)!」などといって、「あっけらかんと」している人たちです。このような人たちは、「電子取引」で定めているような「生やさしいやり方」ではどうすることもできません。

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アマゾンや楽天などの大手ネットショップで購入し、決済はクレジットカードかコンビニ払い、このような電子取引しかしておらず、しかも金額も件数も大したことがない場合には、「電子取引」で定められているような「ファイルを保存して」「タイムスタンプを付して」「検索簿を作成して」など全く必要ありません。従来どおり、ネット取引の画面を紙に印刷するという方法で十分です。

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会計ソフトへのデータの取り込み

2022-04-09 11:01:00 | 経理業務(帳簿の作成)
「自身がすでに入力し保存しているデータ」、「ネットなどを通して入手可能な他者が作成したデータ」、これらがデータ処理で必要となった際には、「入力」するのではなく「取り込む」ほうが作業効率は圧倒的にいいです。

昨今、様々な局面においてこのデータの取込みが活用されており、会計ソフトにおいても例外ではありません。しかし、この便利で効率的な機能によって収拾がつかない事態を招いていることもあります。

◆処理できないデータが取り込まれる

この会計ソフトの取込みという機能を利用すると、自身では処理することができないデータまでもが取り込まれてしまいます。「勘定科目を決められない」、「税務的な判断ができない」といったデータまでもが無意識に取り込まれてしまいます。

預金取引はすべての入出金が取り込まれます。クレジットの利用もすべての履歴が取り込まれます。その中には、経理や税務の知識が十分でないユーザーには処理不能なものが混ざっています。

◆重複しての取込み

これは注意をしていれば何とかなることですが、データを重複して、しかも大量に取り込んでしまうとその「削除」が大変です。

◆データが増えすぎる

仕訳というのは基データを適宜集計して行うことがあります。しかし、取込み機能の多くは、集計前の基データをそのまま取り込むことが通常ですので、会計ソフトのデータが膨大な分量になることがあります。

例えば、交通費の記録は、仕訳は月合計額で行い、明細は「会計ソフトの外」に保管しておくことが通常です。これが取込み機能を利用した場合には、会計ソフトに個々の交通費までもがすべて記録されてしまいます。

◆同期できない

「外部データ(システム)との同期」、典型は金融機関の預金口座との連携です。これが取込み機能の最先端・花形で、「同期の設定をしておけば、あとは会計ソフトが自動的に処理してくれる」というのが売りです。しかし、この機能がシステムの障害で正常に同期しないことや相手方(金融機関など)の方針変更によって同期が打ち切られるということもあります。

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★個人事業者ではクラウド会計が主流に?
昨今、クラウド会計がユーザーを増やしています。特に、個人事業者がクラウド会計を選択しています。クラウド会計の特徴のひとつが、ネットと通じてデータを取り込むという機能ですが、便利なはずのこの機能を十分に使いこなせていないことがあります。

★個人事業者は会計ソフトを使わないほうが楽な場合も
個人事業者は規模も小さく事業所得を計算する基データは比較的少ないので、「収入-必要経費-所得控除」という算式さえしっかり理解していれば会計ソフトを使わなくても計算できます。会計ソフトの取込み機能で「余分なデータ」を取り込んだがために混乱していることが目立ちます。「青色申告特別控除65万円」、確かにそうですが、会計ソフトの料金、場合によっては税理士報酬を考慮すれば無意味な場合もあります。

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社長借入金の減少(返済だけではない)

2022-01-20 18:30:00 | 経理業務(帳簿の作成)
社長借入金(役員借入金ともいう)は返済をする、つまり会社の資金を社長個人に移動させることにより減少します。これは金融機関からの借入金と同じです。しかし、中小零細企業ではこれとは違う原因によって社長借入金が減少することがあります。

◆会社が受け取る家賃と相殺する

例えば、会社名義のマンションに社長が住んでいるとします。このような場合には会社は社長から家賃を受け取ることができます。

社長借入金がある場合、この家賃の受取りという「貸し」と、社長借入金という「借り」を相殺することができます。家賃は入金、社長借入金の返済は出金ですので、入出金という手続を省略するのです。

◆会社が負担している個人的出費と相殺する

これも上記の家賃と同じ理屈です。会社が何らかの社長の個人的出費(交通費や飲食代など)を負担している場合、この「貸し」と社長借入金という「借り」を相殺するのです。

ただし、社長の個人的出費を会社が負担するということは、たとえ後に精算するといっても経営上は好ましくはありませんので、この方法はやむを得ない場合に限定しなければなりません。

◆債務免除(収益が生じるので法人税に注意)

これを知っている人は少ないと思います。社長借入金という債務を免除してもらうのです(社長の側からすれば債権放棄)。この債務免除を受けると、社長借入金が減って同額の収益(利益のプラス要素)が生じます。わかりにくいかもしれませんが、返済義務がなくなるということは借入額相当の資金をもらったということですから収益になるのは当然です。

この債務免除を受ける理由は次のふたつです。ひとつは借入金(負債)が多いと決算書の見栄えが悪い場合です。借入金が多いと自己資本比率、流動比率などの重要な財務指標が悪化します。もうひとつは相続税対策です。社長借入金は社長個人からすれば会社に対する貸付金という財産であることから相続財産になります。社長借入金の返済ができそうにない場合、社長個人としては返済されそうにない貸付金が相続財産として相続税の課税対象となってはたまったものではありません。

◆親族への贈与?

ここまでくると、もっとわかりにくいです。社長借入金は、社長からすれば会社に対する貸付金ですので財産ということになります。財産ですので、現金や不動産同様、贈与することができます。

「私の親族は会社には関わっていないので(株主や役員ではないので)」という人がいますが、借入金の相手先は誰でもなることができますので、会社と無関係の親族でもかまいません。

◆会社の財産による代物弁済

金銭で社長借入金の返済をするのではなく、金銭以外の会社財産(不動産や車両など)を社長名義に変更することをもって返済をするという方法です。この方法は金融機関からの借入金においても会社の財産が担保提供されている場合には行われます。いわゆる代物弁済です。

この方法は課税関係が複雑です。代物弁済は譲渡ですので、譲渡益が生じる場合には利益に影響し利益の額によっては法人税が課税されます。また、譲渡した資産によっては消費税も課税されます。さらには、返済した社長借入金の額を超える価値がある会社財産を提供した場合には、その超える部分が社長の給与として社長に所得税が課税されるだけでなく、損金不算入となって法人税の課税所得が増えます。このように課税関係が大変複雑ですので、この方法は特別な事情がある場合を除いて避けなければなりません。

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借入金の使途と経理処理

2021-12-18 20:01:00 | 経理業務(帳簿の作成)
借入金をするようになると経営者の利益計算の感覚が混乱します。利益は「収益-費用」として計算しますが、借入金のないうちは「収益は入金」に「費用は出金」に一致します。それが、借入金をするようになると、「負債」という収益や費用とは直接的に関連しない要素が加わってくるからです。

◆借入金で調達した資金を何に使ったか(資金を使うまでは利益に影響しない)

借入金をすれば資金(通常は預金)が増えます。利益に影響が出るのはこの資金を使ったときです。

借入金で得た資金の使途は様々で、運転資金に使った(仕入、人件費、家賃など)、設備投資をした(減価償却費)、研究開発に使った(主に人件費)、別の借入金の返済に充てた(いわゆる借換え)、資金を手元に置いている(不時への備え)といった具合です。この借入金の使途とその経理処理を正確に認識しておかないと利益計算に混乱が生じます。

資金を使ったからといって、その額が直ちに費用となるわけではありません。減価償却費として複数の年度にわたって費用となる、在庫として翌事業年度以降に繰り越される、土地は資産計上されたまま(費用とはならない)など様々なケースがあります。

◆借入金による資金調達そのものは利益に影響しない

借入金という勘定科目は、借入金で資金を得たという「一瞬」しか「仕訳」として登場しません。しかも、借入金は負債ですので、「収益-費用」という利益計算とは一切関係しません。借入金をしても、借入金という負債が増えて現金預金という資産が増えるだけですので利益には影響しません。利益に影響がでるのは資金(現金預金)を使ってからです。

◆借入金の返済も利益に影響しない

次に借入金という勘定科目が動く(減る)のは返済したときです。これも負債の減少ですので利益計算に影響しません。借入金の返済というのは企業にとって資金の負担が大変大きいですが利益計算には影響しないのです。利益計算に影響しているのは上記のとおり、借入金で得た資金を使ったという局面です。つまり、利益への影響は返済に先行しているということです。ただし、資金の使い方によっては返済が費用に先行する、場合によっては返済のみが生じるというケースもあります。

◆利息は資金調達のコストとして利益に影響する

通常の借入金(会社代表者やグループ会社からの借入金以外)は一定の利息を支払う必要があります。利息というのは借入金で資金を調達するためのコストですので利益計算(収益-費用)における費用になります。

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★借入金の経理処理は意外と簡単

上記のとおり借入金の経理処理は意外と簡単です。借入金という勘定科目は借りたときと返済をしたときしか動きません。借入金の残高は返済が終了するまで貸借対照表の負債の部に計上されています。この借入金の経理処理を認識していれば利益計算が混乱することはありません。

借入金で得た資金を使った場合の経理処理は、資金の調達源が資本金(株主からの出資)であろうが手持ちの資金(利益からの蓄積)であろうが同じです。これと借入金の経理処理を切り離して考えないと利益計算に対する感覚は混乱してしまいます。

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