【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

インボイス制度は大成功(漁夫の利を得た政府)?

2024-01-27 16:31:00 | 消費税
インボイス制度導入から早や4か月、世間は「きりきり舞い」「七転八倒」です。

「インボイスを発行しなければならない」
「インボイスを発行してくれ!」
「これはインボイスではない(訂正に追加発行)!」
「登録番号がないので消費税は支払わない!」

インボイス制度導入以降、事業者間の「いざこざ」が絶えません。しかし、世間の混乱をよそに税収は確実に増えていると思います。

◆インボイスの登録をしなければならない

多くの事業者がインボイス制度開始前の令和5年9月30日までにインボイスの登録を済ませましたが、中には制度開始以降に慌てて登録する事業者も相当数います。

「やはり噂は本当だったのか」

制度開始前はインボイスの登録などしなくても大丈夫と高を括っていたけれども、制度開始後、「本当に消費税の請求ができなくなって」ようやくインボイスの登録をする事業者がいます。

◆インボイスの登録をしていない支払先に関する経理処理

インボイスの登録をしていない支払先の経理処理を杓子定規にしている事業者は多いです。

「登録番号の記載がない請求書は仕入税額控除8割」

機械的にこのような処理をしている事業者がいます。「塵も積もれば山となる」で、次回の申告の際に消費税の納税額の増加に愕然とすることでしょう。

◆漁夫の利を得た政府?

インボイス制度導入により消費税の課税事業者は増えます。従来からの課税事業者の納税額は増えます。政府は何もしなくても民間に委ねておけば勝手に税収は増えます。

しかし、間もなくインボイス登録をした個人事業者が消費税の申告をする時期になります。

できるでしょうかね?
消費税の申告をしたのはいいけれども、その納税はできるでしょうか?

税務署は「消費税を申告すべき事業者が漏れなく申告しているか」「その申告額は正しいか」「そして納税しているか」を確認しなければなりません、大変な作業です。

インボイス制度の成果が問われるのはこれからです。具体的な運用方法の確立、制度の修正、課題は山積みです。

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さっそく2割特例

2023-12-28 20:00:00 | 消費税
来年はインボイス制度によって変更となった消費税申告の対応に追われることを覚悟していましたが、早くも今年中にそのときがやってきました。10月決算(事業年度が11月1日から翌年10月31日)の会社の申告です。10月決算の会社の場合、10月分はインボイス制度導入後の方式で消費税の申告をしなければなりません。申告書の提出期限は12月31日ですので(厳密には来年1月4日)、早くも今年中にその対応を求められるのです。

◆さっそく2割特例

インボイス制度導入が申告書作成に与える影響はいくつもありますが、そのひとつが2割特例という申告方式です。2割特例は従来からの申告方式である「原則課税」「簡易課税」に新たに加わった申告方式です。新たな方式ですので「2割の計算は申告書のどこでするのだろうか?」と申告書作成に戸惑います。

◆「10月分の消費税」はわずか

10月決算の会社でインボイス制度を機に課税事業者となった場合、今回の消費税申告で納付する消費税は10月分だけです。2割特例であれば、10月の売上に対する消費税の2割です。10月の売上が50万円とすれば消費税は5万円、税務署に納付するのは5万円の2割である1万円です。わずかといえばそうかもしれませんが、来年は12か月分です。けっこうな金額になります。

◆廃業する事業者も

必要に迫られて(得意先の圧力に屈して)インボイス登録をして消費税の課税事業者となった事業者は多いです。来年はそのような事業者が消費税の重税感に気がつくことでしょう。いままでも消費税の増税時にはその重税感に耐え切れず廃業する事業者が続出しました。来年以降、廃業する事業者が増えることは必至です。

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登録番号を信用情報に!(あくまでも空想です)

2023-11-26 12:00:00 | 消費税
インボイス制度がはじまって約2か月、請求書や領収書の登録番号のチェックに四苦八苦している事業者が多いです。

◆目指すべきは偽インボイスの「完全排除」

インボイス制度がはじまってから増大した事務手数のひとつが請求書や領収書の登録番号のチェックです。「登録番号が記載されているか」「登録番号は本当に登録されているのか」、特に後者の作業は「適格請求書発行事業者公表サイト」で調べなければなりませんので本当に大変です。

「登録番号は本当に登録されているのか」を調べずに済むのであれば事業者の事務手数は大幅に軽減されます。しかし、そのためには偽インボイスの完全に排除されるような社会のシステムが必要です。

◆事業者の申告状況を公表する

適格請求書発行事業者公表サイトで各事業者の「消費税の申告状況」を公表すれば偽インボイスは当然として、記載事項に不備のあるインボイスも大幅に減るのではないでしょうか。申告状況としては「直近の申告日付」でいいでしょう。適格請求書発行事業者公表サイトを閲覧すれば、その事業者が実在し活動をしているということが一目瞭然です。「直近の申告日付」があまりにも古ければ、その事業者はすでに活動を停止していると推測されます。

このようにすれば、各事業者はすすんで正確なインボイスを発行することでしょう。正確なインボイスを発行することが事業者の信用の証になるからです。そうなれば、「登録番号は本当に登録されているのか」をチェックする義務を事業者に課す必要もなくなり事務手数は大幅に軽減されます。

◆「法人番号」はすでに信用情報となっている

同じく国税庁が発行し公表している法人番号はすでに信用情報のひとつとなっています。「法人番号公表サイト」で調べれば、会社が実在することは当然として、活動拠点が登記された場所であるかも判明します。

税を目的として構築された情報を他の目的に転用することは好ましくありませんが、それが適正な課税につながるのであれば許されてもいいのではないでしょうか。

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インボイスと税務調査

2023-11-18 17:30:00 | 消費税
インボイス制度がはじまり、予期してなかった内容の請求書や領収書に遭遇し、早くも税務調査を心配している事業者がいます。

◆税務調査は重点指向

法人税(会社)、所得税(個人事業者)、消費税(会社および個人事業者)の税務調査は全ての会社や個人事業者について行われるわけではありません。また、税務調査の対象に選定された会社や個人事業者のあらゆる入出金を調査するのではなく、問題がありそうな(税額を違法に減らしていそうな)入出金を抽出して調査します。

◆調査対象にされそうな事業者

インボイスは仕入税額控除によって事業者が税務署に納める消費税額に影響してきます。事業者は販売の際に受け取った消費税から、仕入や諸経費に関して支払った消費税を差し引いて税務署に納付をします。この支払った消費税を差し引くことを仕入税額控除といいます。この仕入税額控除はインボイスを入手した支出に関する消費税についてしか行うことができません。

インボイスを入手していない支出が多いと思われるのに、大部分の支出に関して仕入税額控除をしている事業者はインボイス制度導入後に調査対象に選定されるでしょう。例えば、仕入先や外注先の大部分がインボイスの登録をしていないであろう個人事業者であるにもかかわらず、それらを仕入税額控除の対象として申告している場合です。

◆多額の出金

多額の出金に関するインボイスは注意が必要です。仕入代金や設備購入代金がそうです。「支払先がインボイス登録をしているか」「登録している場合は請求書や領収書に登録番号か記載されているか」、入念に確認することです。

◆継続する支払い

少額な支払いであっても継続して支払いをする相手先であれば、間違った処理を継続してしまうと累積したミスは相当な額になります。家賃(特に駐車場)や接待に利用する飲食店などはその典型です。「多分登録しているだろう」は甘いです。支払いの都度、領収書の登録番号を確認しなければなりません。

◆「インボイスのみ」の税務調査は行われない

インボイスのみの税務調査が行われることは考えられません。「法人税(会社の場合)」「所得税(個人事業者の場合)」と同時に「消費税」の税務調査が行われ、消費税の調査の一環としてインボイスの調査が行われます。

◆消費税の修正申告と追加納付

インボイスのない支払いを仕入税額控除していると、その分だけ消費税を過少に申告していることになります。これを税務調査で発見されたら、仕入税額控除を取り消した税額を計算し、当初申告税額との差額を納付しなければなりません。これを修正申告といいます。

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★経理業務も重点指向で
インボイスは全ての出金について確認をしなければなりません。しかし、制度導入当初はインボイスの不発行や記載不備が続出すると思います。そんなことから税務当局もインボイスに関しては実情を考慮した税務調査を行ってくると考えられます。そこで、経理業務も「これだけは守ってください」と税務調査で指摘されそうな部分を抽出するという重点指向で行えばよいと思います。

★支払先のインボイスの不備は厳しく指摘する(指摘もされる)!
一部の支払いについてインボイスを入手していなくても税務調査がなければ何の問題も起こりません。しかし、だからといって喜んでいるようではインボイス制度の有効な運営は実現しません。事業者は支払先が発行するインボイスの不備を厳しく指摘しなければなりません(反対の立場では指摘もされる)。そして、いずれは不備なインボイスが発行されないような社会にしなければなりません。インボイス制度は「民の志」にその運用が委ねられているのです。

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登録番号の記載がない請求書への対応

2023-10-28 13:00:00 | 消費税
インボイス制度がはじまった今、事業者を悩ませているのは消費税額が記載されているのに登録番号が記載されていない請求書や領収書の扱いです。

◆困りますよ!

請求書や領収書を受け取ったならば、直ちに指摘してください。遠慮する必要はありません。

ほとんどの事業者がここ1年ほどの間、インボイス制度に対する知識を吸収し、インボイス登録をして、請求書や領収書のフォームを改め、導入後の事務体制を整えてきました。そんな中、消費税は記載されているのに登録番号が記載されていない請求書や領収書を発行するなんて、「ふざけている」としかいいようがりません。また、知らなかったではすまされません。「無知にも程が」あります。

◆相手がインボイス登録をしている場合

登録番号を追加記入してもらうか、登録番号が記載された新たな請求書や領収書を発行してもらってください。

◆消費税相当額を支払うべきか(相手が登録していない場合)

これがインボイス制度の一番難しいところです。

インボイス制度が導入されてから初めて取引をする相手先あれば、「インボイスの登録をしていないのに消費税を請求(記載)されては困ります!」といえます。

問題は取引年数が長い相手先や経営上取引を継続するしかない相手先です。この場合はどれだけの消費税であれば負担していいか、つまり「仕入税額控除」ができなくてもかまわないかが判断の基準になります。

税務署に納付する消費税は、販売の際に受け取った消費税から仕入や諸経費に関して支払った消費税を差し引いた額です。この支払った消費税を差し引くことを仕入税額控除といいます。インボイス登録をしていない相手先に「消費税相当額」を支払っても仕入税額控除はできませんのでその分の負担が増えるということです。

◆仕入税額控除に関する経過措置

インボイス登録をしていない相手先に支払った消費税相当額の仕入税額控除の扱いについては経過措置があって、制度導入後3年間は80%、次の3年間は50%の仕入税額控除ができます。相手先もこのことを知っているでしょうから、この経過措置に合わせて支払う消費税相当額を順次減らしていくというのも一法です。

◆簡易課税や2割特例で申告している場合

簡易課税や2割特例で消費税の申告をしている場合は仕入税額控除をするためにインボイスは不要です。なぜならば、仕入税額控除を計算するにあたって、支払いの際に入手したインボイスを基に計算するのではなく、販売の際に受け取った消費税に対する「みなし計算」をするからです。

しかし、この場合であってもインボイスは入手しておく必要があります。簡易課税や2割特例も、原則的な仕入税額控除の計算と比較して有利であれば選択するものですので、インボイスに基づく計原則的な計算もしておかなければ有利不利の判定はできません。

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★インボイス登録をしていない事業者は消費税を請求できない?
法律上はインボイス登録をしていない事業者が消費税を請求しても違反ではありません。しかし、インボイス制度開始から歳月が経てば「ビジネスのルール(慣習、マナー)」として認められなくなることは確実です。ですから、遠慮せずに指摘してください。「困るじゃないですか!」と。それがインボイス制度を有効に運用のためにも必要なのです。「正義!」なのです。

★令和5(2023)年10月分の請求書
11月になったら10月分の請求書を発行したり受け取ったりします。発行する請求書については「何を言われるかわからない」と覚悟しておかなければなりません。受け取る請求書には「想定外の」ものもあるでしょう。インボイス制度の大変さや恐ろしさが身に染みるのはこれからです。「次の選挙は!」、もう手遅れです。

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