宇宙時間 ソラノトキ

風樹晶・かざきしょう

勝手に趣味ブログ
のんびりしようよ

みらーじゅ 36

2008-12-20 21:13:04 | 小説 ミラージュ
「嬢ちゃん。あれが、幻か実体か見分けがつくか?」
 そう、言いながら、レトが腰の剣に手をやる。
「実体の上に幻覚をかぶせているみたい。普通に生きているのは、いないみたいね」
 奥から押し寄せる、音と匂いでグルラディーヌが判断する。
「普通に生きているのは・・・・ね」
 レトがにやり と笑って剣の柄を ぽん と、叩いた。
 何事かと姉妹の視線が集中する中、すらり と、剣を抜く。と、そこに現れたのは、刃のない細身の剣。
 青白い光を放ち、刀身には複雑な文様が刻み込まれていた。
「妹姫、お願いしますわ」
 グリシーヌがグルラディーヌに抜き身の剣を渡す。
 それを受け取ったクルラディーヌが魔力を吹き込んだ。
 外見は何の変化もないが、これなら妖魔などとも多少は渡り合える。
「嬢ちゃん。それ、絶対なくすんじゃねーぞ」
 レトがグルラディーヌの抱えている袋を指差した。
「え、って、これなに?」
 そう言えば、袋の中身を知らずに持っていたのだった。
「竪琴、だそうだ。ただ、魔力が込められたものだそうだ。俺には、よく分からんが。チョウカがそう言うんだから、そうなんだろう」
 レトは、あまり興味がないようだが何かを感じたのだろう。
「ん、じゃ、行くか」
 レトが廊下の奥に向かって、足を踏み出した。
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みらーじゅ 35

2008-12-18 09:46:19 | 小説 ミラージュ
 きぃ・・・・
 三人が神殿(もどき)に着くのを待っていたように、入り口の扉が勝手に開いた。
はっきり言って、出来すぎである。
「いかにも、って感じだな・・・」
 それでも、入り口の前で一応足を止めてみる。で、さて、どうするか。
 一瞬考え込んだレトの脇を姉妹がすり抜ける。そして、
「行きませんの?」
 入り口の前に立ったグリシーヌが振り返った。
「ぐずぐずしてると、本当に日が暮れるよ」
 グルラディーヌも、すでに建物に入りかけている。躊躇も何もあったものではない。
 この二人、無敵かも・・・・。
 レトが二人に後に続いて、建物に足を踏み入れた。

 ぎ ぎ い・・・・・       ばたん

 と、ドアが閉まるのは、お約束。
 そして、侵入者を誘うように、黒い廊下の壁に明かりが灯るのも、お約束。
「ご丁寧なこって・・・」
 ぼそり と、レトの呟きに反応したように、廊下の奥がざわめいた。
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みらーじゅ 34

2008-12-14 16:55:11 | 小説 ミラージュ
 日がかなり傾いてきた。
「妹姫、どうですの?」
 日の傾き具合を気にしながら、グリシーヌの問いかけに、
「うん、・・・近いね。もうすぐ・・・」
 グルラディーヌが頷く。
 探るような足取りで雑木林を抜けた。
 ひゅー るー  風が吹く。と、周囲の空気が変わる。
 背の高い草をかき分けて見えたそこには、崩れかけた小さな神殿のような建物とその後ろに広がる沼であった。
「ここか?」
 レトに頷いて、グルラディーヌが神殿を指差す。
 夕日に照らされたその建物は、不気味なほどオレンジに映えていた。
「いくぞ」
 自分に気合を入れるように、レトが呟き足を踏み出す。
 姉妹が頷いて、その後に続いた。
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みらーじゅ 33

2008-12-13 22:25:08 | 小説 ミラージュ
「ね、レトは、チョウカのドラグス(呪歌)聞いた事ある?」
 グルラディーヌの問いかけに
「あぁ、一度だけな」
 レトが答える。
「どらぐす かどうかは分からんが、多分あれがそうだろうな」
 その時の事を思い出すように、レトが視線を宙におどらせる。
 はっきり言って、それが“どらぐす”か普通の歌か聞き分けなどつかないが、知らない言葉を使った歌をチョウカが歌った途端、空から襲ってきた怪物たちが ポトリ ポトリ と地面に落ち、眠ってしまったのだ。
「それって、こんな感じ?」
 一章節ほど歌ってみせたグルラディーヌに
「そう、それだ。その歌」
 レトが ぽん と、手を叩いた。
「それは、間違いなくドラグスよ」
 グルラディーヌがきっぱり、言い切る。
「はぁ、それって、何語で歌ってんだ?」
「たぶん、精霊語」
「なんで、そんなの知ってんだ?」
「そりゃぁ、チョウカがドラグナーだから・・・・」
「じゃなくて、あんたが何で知ってんのかって事を聞きてーんだけど。こっちのお嬢さんは、お前さんが知り合いに教わったって言ってたけど」
 前を歩く姉妹を見比べながら、言うレトに
「うん、まあ、そういうことよね。近所にいたのそういうの詳しい人が。あたし、そこによく入り浸ってたから」
 何気ない口調で言うグルラディーヌだが、レトは納得が出来ない。
「おい、普通、親が止めるんじゃねえのか、そんな事やってたら」
「だって、姉姫にはね、家庭教師つけたり色々お稽古事させたりしてたけど。あたしの場合、完全に ほったらかし だったから」
 ほったらかし を、思いっきり強調するグルラディーヌ。
「あら、あたくしだって、似たようなものですわ。家庭教師や他の人に任せたまま、何日も親の顔を見ない日がよくありましたもの」
 負けじとグリシーヌも言い返す。
 その後、レトが口を挟めないほどの、姉妹昔話が炸裂した。
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みらーじゅ 32

2008-12-12 09:30:14 | 小説 ミラージュ
 岩と小石と背の枯れたような色の低い草の生えた荒地をしばらく進むと、じょじょに草の色がみずみずしい色に変わり、草の背も高くなってきた。
 足元に気をつけないと、下草に足をとられる。
「おい、大丈夫か?」
 レトが前を歩く姉妹に声を掛けた。
「大丈夫」
 グルラディーヌの緊張した声が返って来る。
「そういえば、・・・」
 グリシーヌがレトを振り返った。
「突然こんなことを聞いて申し訳ないですけど、チョウカって、何者ですの?」
「本当に突然だな」
 レトが目を丸くする。が、考えてみれば、まともな自己紹介すらやっていなかった。
 それどころではなかった。というのが正直なところだが。
「その格好を見れば、レトが戦士・兵士の職についてることはわかりますわ。でも、チョウカは? 学者でもないし、ただの楽師にも思えませんし・・・」
 服装からすると楽師か吟遊詩人のようだが、それにしては、魔術師がらみの依頼を受けるなど只者とは思えない。
「まあ、俺も詳しくは知らんが、・・・何でも “どらぐなー” とか言ってたな」
「ドラグナー っ?」
 その言葉に反応したのは、グルラディーヌであった。
「知ってんのか?」
「ドラグナーって、あの、ドラグス(呪歌)の使い手のドラグナー(呪歌詩人)?」
「あのかそのか知らんが、多分、その “どらぐなー” の事だろう」
「ってことは、もしかして、あいつが狙う目的は・・・・」
 いいながら、グルラディーヌが持っているチョウカの包みをしっかり抱え込んだ。
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みらーじゅ 31

2008-12-11 20:32:28 | 小説 ミラージュ
「すこし、休むか?」
 レトまでも、心配そうにグルラディーヌの顔を覗き込んだ。しかし、
「チョウカのいる所は、分かりましたの?」
 グリシーヌは、そのまま進むつもりである問いかけをする。
「おい、何言って」
 驚きの声を上げるレトに
「だめですわ。ここで休む訳にはまいりませんの。急がないと・・。夜になっては、手遅れですわ」
 きっぱりと言い切る。
「大丈夫。行ける」
 それに対して、妹も頷いて顔を上げた。
「ちょっと、嬢ちゃんたち・・・・」
「姉姫の勘は、特別なの。多分、今夜が勝負・・・よ」
「・・・」
 レトは、あきれたように開いた口を閉じ、言葉を飲み込んだ。なぜか、言いようのない迫力を感じたのだ。自分よりはるかに小さいこの二人の少女に。

 グルラディーヌは今度、探索に使った布を自分の左手首に巻きつけた。
「それじゃ、出発」
 掛け声を掛けて、グルラディーヌが足を進める。その後に続くグリシーヌ。そして、何を言っても無駄だと思ったのか、レトも黙ってその後に続いた。
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みらーじゅ 30

2008-12-10 21:47:06 | 小説 ミラージュ
 蛇はそれに頷き、草むらに這い進む。
「ついて来て」
 グルラディーヌが二人を手招きする。
 蛇の這い進む音に神経を集中し、その後を追った。
 グリシーヌとレトは、顔を見合わせ慌ててグルラディーヌの後を追う。
 炎の中、草むらに隠れてしまう蛇の後を追うのは、なかなかに難しい。しかし、その視力を補うだけのグルラディーヌの聴力が役にたった。
どの位歩いたか、ようやく炎の攻撃がおさまる頃、蛇の動きが鈍くなる。
「ご苦労様」
 グルラディーヌがその蛇を袋に戻し、
ぽんぽんと蛇をねぎらうように、袋を上から叩いた。
 さて、これからどうするか。探索の術もそう長くはもたない。炎から逃げるのにかなりの時間と労力を食ってしまった。
「妹姫。大丈夫ですの? ひどい顔色ですわよ」
 姉に声を掛けられて、グルラディーヌが不思議そうな顔をする。
 本人は、気づいていないがかなりひどい顔色である。必要以上に神経を集中しすぎて疲れが出たのだ。言われてみれば、額の奥がずきずきする。
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みらーじゅ 29

2008-12-09 21:08:06 | 小説 ミラージュ
 炎がじりじりと範囲を狭めてくる。
「妹姫、何とかなりませんの?」
 相手が炎では、剣では相手に出来ない。
「何とかって言われえも・・・・」
 グルラディーヌが空に向かい、道案内をしているソレを手招きした。
 つつつ と降りてきたソレを解き、袋に入れておいた黒蛇の首をソレで撫でる。そして何事か呪文を唱え、蛇の額を軽く弾いて地面に置く。
 ぱちん 
 と、グルラディーヌが蛇の真上で指を鳴らすと、
 いま、目を覚ましました。という感じで蛇が頭を持ち上げ、辺りを見回すように頭を左右うに動かす。そして、炎の海に気づき慌てたようにグルラディーヌの顔を見上げた。
 グルラディーヌが、蛇に向けて 行け という仕草をする。
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みらーじゅ 28

2008-12-08 20:57:02 | 小説 ミラージュ
 食事ともいえない食事が終わった後は、火の始末をした後、湖に流れ込んでくる川の水で容器を洗い、水筒に水の補給もして、出発。
 歩きはじめてしばらくたった時、グルラディーヌが不意に足を止めた。
「妹姫?」
 後ろを歩いていたグリシーヌが、追いついて妹の顔を覗き込む。
「・・・きな臭い。変な音がする」
 それを言ったか言わないかの内に、レトの足元から火の手が上がった。
「うわっ」
 声と共に、レトが飛びのく。
「きゃぁ」
「なにこれ?」
「冗談じゃねえぞ」
 三人三様で驚きの声を上げる中、炎は三人を取り囲むように燃え広がった。
「まさか、さっきの火じゃねえだろうな」
「ちゃんと、消しましたわよ。一緒に確認したじゃありませんか」
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みらーじゅ 27

2008-12-07 09:52:42 | 小説 ミラージュ
「それにしても、あいつの目的は、何だと思う?」
 もぐもぐと携帯食をかじりながら、レトが言った。
「目的?」
 姉妹の動きが一瞬止まる。そして、
「目的って、どういう事ですの?」
 口の中のものを飲み込み、グリシーヌが言葉を返す。
「どうやら狙われてんの、あんたたちじゃねえの。どういう訳か知らねえけど」
レトの言葉に姉妹が顔を見合わせる。
 そう言えば、心当たりがある。それでも
「それなら、お互い様でしょう。自分に心当たりがないとでも言うわけ?」
 グルラディーヌが小さく反撃をする。
「う~ん。絶対ない、とは言い切れねえけど、どっちかって言うと、お前さんのほうが狙われてるんじゃねえの」
 レトの差した親指の先には、グルラディーヌがいた。確かに、一人で森にいた時に襲われている。
「たまたま、一人になった時を狙ったのかもしれない」
 そう言ってみたものの、自信はない。
「ま、行って見りゃわかるか」
 レトの一言で、その話は一応、終わったようだが、やはり気にはなる。
 ただ、邪魔しかたらというのであれば、下手に手出しをせず放っておけば良いのだ。それを、チョウカをさらい(まだ、そうとは限らないが、多分、確実だろう)、グルラディーヌを襲った。何のために?
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みらーじゅ 26

2008-12-06 21:07:33 | 小説 ミラージュ
 こちらをじっと見ているレトの視線に気づいたグリシーヌが声をかける。
「コップか何か、入れ物もってます?」
 レトから渡されたコップに、暖かいポタージュ状のそれを入れて返し、残った分を二人でそれぞれに分け、食べ始める。
 しばらくして
「おい、これ食ってみろ」
 レトが、何か小さな塊のようなものを2個づつ2人に渡した。
 見ると、パンとビスケットの間のようなものである。
 ためしにグルラディーヌがかじってみる。
 ・・・カタイ。そして、ぼそぼそしている。これは、確かに立派な保存食だ。
 グルラディーヌの顔を見て、グリシーヌもそれをかじってみる。
 二人の様子を見たレトが笑った。
「これは、2度焼きパンっつう保存食だ。まぁ、うまいもんじゃねぇけどな。これなら、日持ちもするし、歩きながらでも食える。それでも、慣れれば、悪くねぇ味だって思えるようになる。暖かいもん貰ったからな」
 さすがに、美味しいとは言えない様だ。
 まあ、それはお互い様と言うことで・・・。
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みらーじゅ 25

2008-12-05 22:21:24 | 小説 ミラージュ
「ね、妹姫。ここなら火を焚いても大丈夫ですわよね」
 石を集めて即席のかまどを作り、火口・ほくち箱を使って火をおこし、水を入れた容器を火にかけた。
 沸騰しかけた湯にキューブ状の保存食を投入。
 しばらくしてそれをスプーンでかき回すとどろどろの茶色のポタージュ状の物になる。
 これは、幾種類かの野菜と肉をペーストにした物ものに塩を混ぜたものを型に入れて乾燥させた携帯食の一種である。
 そのままでも食べられるが、水で戻して柔らかくする、今回のように煮るなどの食べ方がある。
 その他にも数種類の蒸した穀物を煎る、乾燥させる、粉にする等のタイプ等の幾種類もの保存食がある。
 この姉妹が持っている携帯食糧の中にも数種類(干魚、干肉、干飯、チーズ、燻製、ナッツなど)の保存食が入っていた。
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みらーじゅ 24

2008-12-04 10:06:17 | 小説 ミラージュ
 しばらく歩くと、湖のほとりに出た。
 困った。かなり大きな湖だ。グリシーヌ一人ならグルラディーヌが抱えて飛ぶことも出来るが、今回はレトがいる。
 二人を抱えて飛ぶ・・・、出来ない事もないがその後、体力と魔力が尽きてしまったらおしまいだ。
 船もない。勿論、橋もない。
 こうなったら、時間がかかるのを覚悟で岸伝いに歩くしかない。
 ぐぅ   きゅるるる
 大きな音にグルラディーヌが振り返ると、レトがあさってのほうを向いていた。しかし、
 ぐるるる・・・
 腹の虫は正直だ。何かをくれと力いっぱい主張している。
「そう言えば、お昼ですわね。少し、休みましょうか」
 グリシーヌの視線を追って空を見上げると、太陽が天頂で力強く輝いている。
 そう言えば、どたばたして時間すら忘れていた。
 湖のほとりに三人仲良く座り、それぞれ荷物から食料を取り出す。
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みらーじゅ 23

2008-12-03 17:26:33 | 小説 ミラージュ
「でも、この蛇ってもっと暖かい地方にいるはずなんだけど・・・」
「暖かいって?」
「う~ん、南国っていうか、灼熱の砂漠地帯。普通この寒さだと、もっと、動きが鈍い筈なんだけどね・・・」
 いいながら、蛇のそばにかがみ込むグルラディーヌ。
「で、毒って、どの位の毒なんだ?」
「卵から孵ったばかりでも人を数時間で殺すくらいの毒をもっていて。これだったら、2・300数えないうちに、ってところじゃないのかな」
「うげっ」
「聞いたところだと、ものすっごく痛いらしいよ。無事に毒を消せたとしても、後遺症が残る場合もあるらしいし・・・」
 いいながら、動かなくなった黒蛇を調べていたグルラディーヌがそれをつまみ上げ、袋に入れた。
「妹姫。それ、どうするつもりですの?」
 首をかしげながら、そう、問いかけるグリシーヌに
「ん、ちょっと、反撃に使わせてもらおうかな・・・・と」
 そう言ってグルラディーヌは、黒蛇を入れた袋を腰に結びつけた。
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みらーじゅ 22

2008-12-02 21:37:23 | 小説 ミラージュ
 どうやって飛んでいるのか分からないものの、ぱたぱたと羽ばたきながら導くそれの後を追って三人が小屋を出る。
 それぞれ、自分の荷物は担いでいくが、チョウカの分はレトが、そして、もう一つの袋はグルラディーヌが抱えた。

 出来る事なら、昼間のうちに相手の懐へたどり着きたい。知らず知らずのうちに、それぞれが急ぎ足になる。
 無言のままひらすら進む三人。と、グルラディーヌの足元で何かが動いた。
 転びそうになったグルラディーヌをグリシーヌが支え、レトがそれに剣を突き立てた。
「これは・・・」
 剣に突き刺されたまま、しばらくの間、それはぐねぐねと動いていたが、やがて動きを止めた。
「毒蛇ですわね」
 グリシーヌの言葉にレトが慌てて剣を引き抜く。
 それほど大きくはない黒い蛇。
「毒蛇って・・・・マジかよ」
 レトは、抜いた剣の刃を布で拭き、大事そうに鞘に戻した。
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