記憶が戻る様子はないもののカルもここの生活に随分慣れて、簡単な家事ならラウルシャインを手伝える様にまでなっていた。
そして、
いつもの如くラウルシャインと魔術の話をしていた時、例の如く一緒に話を聞いていたカルの手に白い布が巻かれているのに気が付いた。
確か朝見た時は、そんなもの巻いていなかったと思うけど。と、レムが首を傾げる。
「あぁ、これね。さっき、台所仕事手伝ってもらった時、お湯の入った鍋引っ繰り返しちゃって・・・」
レムの視線を受けて、そう、申し訳なさそうに話すラウルシャインに
「大丈夫、大丈夫。大した事ないから」
と、カルが無事な左手を振って、すこし困ったような顔をする。
「ちょっと、見せて」
カルの返事を待たずに、右手の布をほどいた。
布の中には、ラウルシャインが作った薬だろうか、白いどろどろとしたモノが貼り付けられていた。
ありゃぁ・・・。大した事あるわよ。
レムがそれを見て、顔をしかめる。
手の甲が赤くなって、一部は皮がむけている。かなり、どころかめちゃくちゃ痛そうである。
「痛む?」
そう言ったレムにカルは
「ちょっと、ひりひりするけど、大した事ないよ。ラウルさんが診てくれたから」
すこし、顔をしかめたものの、笑って答えた。
いつも、ぽや~ と、しているし、小さくて(レムも他人・ひとの事言えない位小柄だが・・・)華奢そうな見かけによらず、案外強いのかもしれない。それとも、単に鈍いだけだろうか?
内心、首を傾げるレムに
「大丈夫。しばらく、水桶の中に手を突っ込ませておいたから」
さっきのすまなそうな口ぶりはどこへやったか、あっさりと言ってのけるラウルシャイン。大人しそうな外見に似合わずなかなかに荒っぽい性格である。
まぁ、確かに、冷やすのが一番だけどね、火傷の場合は。
取りあえず、気を取り直して、
「それじゃあね、魔術の実践。面白いもの見せてあげる。ただ話を聞いているだけじゃ詰まんないでしょ。いい? よく見てて」
レムがカルの右手を両手で挟み、『治療呪』を唱えた。
これは、怪我をした当人の治癒力を一時的に高める効果のある呪文である。
もっともこの術は、体力を一点に集中させ傷を治す術なので、あまりに大きな怪我をしてしまった場合は、逆に使う事が出来ない術なのだ。と、いうのも、傷を治すため全力を使ってしまう為、心臓が止まってしまう。などという恐ろしい事にもなりかねないからだ。
しばらくして、レムが手を除けると三人の視線が集まる中で火傷がみるみるうちに治っていった。
“ふぇー・・・”
カルの感嘆の声が上がる。
むけた皮のあとは勿論、赤みまですっかり消えて、もう、火傷がどこにあったか分らないくらいに、見事に治ったのである。
それを見たカルが呟く。
「何か、シュールだね、これって」
ずりっ
一瞬、レムが椅子からずれ落ちそうになる。
以前、この術を使った時、便利だと言われた事があったがシュールだと言われたのは、さすがに初めてだ。
それでも、とレムは思い直す。魔術を知らない人が見たら、確かにシュールかもしれないと。
「どう、具合は?」
気を取り直して、確認する。
それに対してカルは、その手を撫でたりさすったり、光にすかしてみたり。そして、一言。
「治ってる」
不思議そうな表情で首を傾げ、カルがレムの顔を見る。
初めて魔術を目にした人は、大抵こういう反応をする。信じられないけど、自分の体で体験した為、信じないわけにはいかない。多分、そういう心境なのだろう。
その隣でラウルシャインがにこにこ笑っている。
彼女は、レムが魔術を使うところを何度も目にしている為、すっかり慣れきっているのだ。それより、カルの反応を見て楽しんでいる感がある。
もっとも、レム本人も内心楽しんでいるのも事実であるが。
「ねぇ、カル」
言ってレムは、ラウルシャインに視線を走らせる。それに、彼女が頷いた。
「本気で魔術の勉強してみない?」
一拍おいた次の瞬間
「 へ?」
カルが妙な声をあげる。
「え、あの、魔術って、いつもレムちゃんとラウルさんが勉強しているような?」
カルの目の前を無数のクエスチョンマークが飛び交う。
「そういう講義じゃなくて、今やった実践の方。ラウルと勉強してるのは、魔術理論。ラウルの専門は、ドラグス・呪歌だから魔術は使わないの」
ここで本当の事を言ってしまうと、ラウルシャインは魔術が使えない。というのも、魔力がないのだ(これは、マリーヌ太鼓判?を押したのだから間違いない)。この事は、ラウルシャインも気にしている事なので、誰も口にはしないが・・・。
「どう、やってみる? もし、興味があればの話だけど。マリーヌがいい線いくって言ってたから、間違いないとおもうわ」
重ねて言うと、カルが頷いた。
まぁ、確かに、興味なければこんなに毎日講義聞こうなんて思わないわよね。
カルの頭上で2人の視線が交わされた。
かくして、カルにとってちょっぴりハードな生活が始まったのである。
※ 初めて、カルがしゃべりました。話し方も行動パターンもあまり女らしいとはいえません。この三人の中で一番女の子らしいのは、レムかな?
ようやく、カルが魔術をはじめるところまで辿り着きました。
まったく、たった5回投稿する間に3回も間違って打ち込んだ内容を消去してしまうと言う大ボケをかましました。自分でやってしまった事とはいえ、ショックでした。
まだまだ、しばらく続く予定です。こんな大ボケな奴ですが、よろしくお付き合いください。
そして、
いつもの如くラウルシャインと魔術の話をしていた時、例の如く一緒に話を聞いていたカルの手に白い布が巻かれているのに気が付いた。
確か朝見た時は、そんなもの巻いていなかったと思うけど。と、レムが首を傾げる。
「あぁ、これね。さっき、台所仕事手伝ってもらった時、お湯の入った鍋引っ繰り返しちゃって・・・」
レムの視線を受けて、そう、申し訳なさそうに話すラウルシャインに
「大丈夫、大丈夫。大した事ないから」
と、カルが無事な左手を振って、すこし困ったような顔をする。
「ちょっと、見せて」
カルの返事を待たずに、右手の布をほどいた。
布の中には、ラウルシャインが作った薬だろうか、白いどろどろとしたモノが貼り付けられていた。
ありゃぁ・・・。大した事あるわよ。
レムがそれを見て、顔をしかめる。
手の甲が赤くなって、一部は皮がむけている。かなり、どころかめちゃくちゃ痛そうである。
「痛む?」
そう言ったレムにカルは
「ちょっと、ひりひりするけど、大した事ないよ。ラウルさんが診てくれたから」
すこし、顔をしかめたものの、笑って答えた。
いつも、ぽや~ と、しているし、小さくて(レムも他人・ひとの事言えない位小柄だが・・・)華奢そうな見かけによらず、案外強いのかもしれない。それとも、単に鈍いだけだろうか?
内心、首を傾げるレムに
「大丈夫。しばらく、水桶の中に手を突っ込ませておいたから」
さっきのすまなそうな口ぶりはどこへやったか、あっさりと言ってのけるラウルシャイン。大人しそうな外見に似合わずなかなかに荒っぽい性格である。
まぁ、確かに、冷やすのが一番だけどね、火傷の場合は。
取りあえず、気を取り直して、
「それじゃあね、魔術の実践。面白いもの見せてあげる。ただ話を聞いているだけじゃ詰まんないでしょ。いい? よく見てて」
レムがカルの右手を両手で挟み、『治療呪』を唱えた。
これは、怪我をした当人の治癒力を一時的に高める効果のある呪文である。
もっともこの術は、体力を一点に集中させ傷を治す術なので、あまりに大きな怪我をしてしまった場合は、逆に使う事が出来ない術なのだ。と、いうのも、傷を治すため全力を使ってしまう為、心臓が止まってしまう。などという恐ろしい事にもなりかねないからだ。
しばらくして、レムが手を除けると三人の視線が集まる中で火傷がみるみるうちに治っていった。
“ふぇー・・・”
カルの感嘆の声が上がる。
むけた皮のあとは勿論、赤みまですっかり消えて、もう、火傷がどこにあったか分らないくらいに、見事に治ったのである。
それを見たカルが呟く。
「何か、シュールだね、これって」
ずりっ
一瞬、レムが椅子からずれ落ちそうになる。
以前、この術を使った時、便利だと言われた事があったがシュールだと言われたのは、さすがに初めてだ。
それでも、とレムは思い直す。魔術を知らない人が見たら、確かにシュールかもしれないと。
「どう、具合は?」
気を取り直して、確認する。
それに対してカルは、その手を撫でたりさすったり、光にすかしてみたり。そして、一言。
「治ってる」
不思議そうな表情で首を傾げ、カルがレムの顔を見る。
初めて魔術を目にした人は、大抵こういう反応をする。信じられないけど、自分の体で体験した為、信じないわけにはいかない。多分、そういう心境なのだろう。
その隣でラウルシャインがにこにこ笑っている。
彼女は、レムが魔術を使うところを何度も目にしている為、すっかり慣れきっているのだ。それより、カルの反応を見て楽しんでいる感がある。
もっとも、レム本人も内心楽しんでいるのも事実であるが。
「ねぇ、カル」
言ってレムは、ラウルシャインに視線を走らせる。それに、彼女が頷いた。
「本気で魔術の勉強してみない?」
一拍おいた次の瞬間
「 へ?」
カルが妙な声をあげる。
「え、あの、魔術って、いつもレムちゃんとラウルさんが勉強しているような?」
カルの目の前を無数のクエスチョンマークが飛び交う。
「そういう講義じゃなくて、今やった実践の方。ラウルと勉強してるのは、魔術理論。ラウルの専門は、ドラグス・呪歌だから魔術は使わないの」
ここで本当の事を言ってしまうと、ラウルシャインは魔術が使えない。というのも、魔力がないのだ(これは、マリーヌ太鼓判?を押したのだから間違いない)。この事は、ラウルシャインも気にしている事なので、誰も口にはしないが・・・。
「どう、やってみる? もし、興味があればの話だけど。マリーヌがいい線いくって言ってたから、間違いないとおもうわ」
重ねて言うと、カルが頷いた。
まぁ、確かに、興味なければこんなに毎日講義聞こうなんて思わないわよね。
カルの頭上で2人の視線が交わされた。
かくして、カルにとってちょっぴりハードな生活が始まったのである。
※ 初めて、カルがしゃべりました。話し方も行動パターンもあまり女らしいとはいえません。この三人の中で一番女の子らしいのは、レムかな?
ようやく、カルが魔術をはじめるところまで辿り着きました。
まったく、たった5回投稿する間に3回も間違って打ち込んだ内容を消去してしまうと言う大ボケをかましました。自分でやってしまった事とはいえ、ショックでした。
まだまだ、しばらく続く予定です。こんな大ボケな奴ですが、よろしくお付き合いください。