楽善な日々

新社会人となった楽と、大学生善、おとん、そしておかんの日々を綴ります。新しい街に引っ越して、新しいスタートを切りました。

トイレの張り紙

2023年06月29日 | 2023年日記
1年前、浪人生だった善は
少しも伸びていかない模試の結果に
やる気と元気を持っていかれて、
日ごと暗い顔になっていった。

なんとか笑顔にさせてあげよう。
一回でも笑顔になれれば、それでよい。
それだけで、今日一日を生き抜く力が出てくるはず。
笑うことが善を救ってくれる。
そう信じていた。

善は、数式や英単語などを、
目につきやすいトイレの壁に貼っていた。
その空いている隙間に2枚、張り紙を付け足すことにした。

「手のとどくところだけを見ていればいいんだ。
 物事の手の付けられないほどの厄介さと、
 人間の力の弱さとを考えあわせたひには、
 そりゃ何もできなくなるさ。
 だから、まずやってみて、
 それから次にやることを考えることだ」

「われわれが欲するものはすべて、
 山と同じだ。
 われわれを待っており、逃げていきはしない。
 けれども、よじ登らなければならない」

 アラン著 「幸福論」より

トイレから出てきた善が笑いながら言った。

「誰、張り紙したの?なんか名言貼ってあるんですけど~!」

浪人生の親にとっては、
笑顔を見る瞬間が宝物だった。
一日一回、宝を発見するために、
頭をひねってアイディアを絞り出していたよ。

6月29日  おかん





水のように生きる (読書感想)

2023年06月27日 | 読書
「自由訳 老子」新井満著

上善若水

日本酒のこと?
そうではないらしい。

「水のように生きるのが 最高の生き方なのだよ」
という意味の、老子の言葉だという。

「世の中には
 やわらかなものと固いものがある」

「やわらかいといえば
 水ほど
 やわらかく弱々しいものはないよね
 しかも決して争おうとはしない
 丸い器に入れば丸くなり
 四角い器に入れれば四角になる
 形にとらわれず、自由自在だ
 ところが形をもたないからかえって
 どんな小さなすきまにも入ってゆき
 どんな巨石をも粉々にしてしまう」

老子の教えの根本には、「道」という考えがある。

「道( Dao)は・・あるがまま自然に
 いのちの宇宙大河となって
 流れ続けている
 ゆったりとおおらかにね」

宇宙大河に逆らうことなく
水のように生きていく。
ゆったりとおおらかに。

2年前に仕事を辞めて以来
それまで勢いよく働いてきたぶん、かえって、
どう生きていくとよいのかが分からなくなってしまった。
そこで色んな本を読んでみた。
この本も、そんな迷いの中、手に取った。

水のようにゆらゆらと
今日一日を無理なく生きて、
満足して明日へ流れていく。
ゆったりとおおらかに。

そんな風に生きられるように
なっていくといいな。

6月27日  おかん





育てて食べて

2023年06月26日 | 2023年日記
新しい街に引っ越してきた。
住むことになった家の周りには、
ぐるりとスペースが広がっている。
それを見たおとんが、
ピンと来たぞとばかりに、
どんどん花や野菜の苗を買ってくる。
家の周りに農園をつくる勢いで。

「ええ!また買ってきたの?」

ぶうぶう文句を言いつつ、
仕方ないので、よっこらしょよっこらしょと、
倉庫から重い土の袋を出してくる。

プランターにどさどさ土を入れて、苗を植えつける。
手は土だらけ、体は汗だく。

毎朝、水をあげないといけない。
水まきしつつ、来る日も来る日も苗を見る。
すると、花が咲き、ちいさい実がなり、
少しずつ実が育ち・・・
何だか嬉しくなってきた。

脇芽をとると良いらしい。
雄花をつむと良いらしい。
アブラムシは害虫らしい。
少しずつ知識がついてきた。

とうとう収穫。
ハサミで、ジャキっ。
採って洗って、
料理して、食卓へ。
そして・・・
自分で育てたものを食べる特別な気持ちを味わう。

「楽しい・・・」

育てて食べて。
特別な気持ちを味わって。

迷惑顔で始めた野菜作りだったけれど、
3か月経った今では、
せっせとせっせと庭に出ていくように。

育てて食べる循環がそこにはある。

「楽しい・・・」

最初に迷惑顔をした手前、
おとんが新しい苗を買ってくるたびに

「ええ!また買ってきたの?」

と毎回言ってはみるけれど・・・・


6月26日 おかん






1年が経って

2023年06月23日 | 2023年日記
1年前。
卒論に追われる楽と、
浪人生活で心の元気を日々失っていく善。
おろおろする私。
いつ終わるともしれない、不安のループにはまっていた日々だった。

子供たちのピンチに、
親は見守ることしかできない。
受験を代わってあげることなんてできない。
卒論だって書けない。
だから、パソコンを閉じて、
ブログをお休みして、
来る日も来る日も見守った。

1年が飛ぶように過ぎて行った。
心が痛かったり、少しほっとしたり、また落ち込んだりするうちに。
気が付くと、いつの間にか新しい日々がスタートしていた。

長女楽は、新社会人。
今、一人暮らしをしている。
とうとう家から、巣立っていってしまった。
幸い、勤務先は東京だから、ちょくちょく帰ってきてくれるけれど、
やっぱりとても寂しい。
ちょこちょこLINEに送ってくれる写真を見ると、
自炊やお弁当も頑張っている様子。
「元気?」
と聞くと、
「超元気」
と返ってくる。
よかった。安心。

浪人生だった善は、ようやく大学生になれた。
一丁前に白衣を着て、実験実験の日々。
この間はプレパラートにベンツのロゴのようなカビが生えたそうな。
にこにこと報告してくれた。
なんだか楽しそうに大学生をしている。
中学時代の友達も、高校時代の友達も、
また遊びに誘ってくれるようになった。
浪人生の善を気遣って声をかけないでいてくれたのだろう。
友達に囲まれて、上機嫌の善。
1年前の暗い表情は、今はない。
1限があるときは、東京に住んでいる姉の部屋に泊まりに行く。
兄弟ふたり、仲良くやっている様子。
安心。安心。

ふたりの新生活が始まる直前、
引っ越しもした。
新しい街で、新しい家での生活がスタート。
新しいことだらけの4月、少し落ち着いた5月、そしてパソコンを開いた6月。

これからまた、日々の日記をブログに書いていこう。
辛かった1年も思い出しては書いていこう。
またまた、初めの一歩から。

6月23日 おかん