子育てはときに、それはそれは厳しい精神の修行となる。
そう、勉強をしない子供を見守るひとときは、
インドの山奥での修行に匹敵する。
善も楽も全然勉強しない子だ。
楽はそれでも、親に頼らず自力でなんとかする子。
英語も、どうしてもっていう時以外は、英語教師のおかんにも聞いてこない。
そんなスタンスで、大学に合格するくらいの英語力をどうにかつけた。
これはこれで、あっぱれ。
善はそういう底力がないから、やっかいだ。
善は期末テスト前の最後の週末を過ごしている。
中間テストのあと、
「期末はもっと早くに勉強を始めよう」
と言っていたはずが、
中間テストのときよりもひどい状態。
机に向かうのも嫌なのか、動作ひとつひとつが遅すぎる。
1時間かけて机に座り、1時間かけて鉛筆を取り出し、
1時間かけて消しゴムを取り出し、1時間かけてノートを開くものだから、
朝から勉強しようと思ったのに、あら不思議、昼がとっくに過ぎている。
英語を指導してほしいからと言われ、朝からスタンバイしている私は、
何も事が進まぬまま時計の針が回りゆくのを見つめる。
イライライライラ・・・・・
焦らない焦らない、待つのだ待つのだ。
イライラいイライラ・・・・・
イライラのあまり指先で机をトントンたたいてしまった。
それを見た善は一言。
「うるさい」
くっ!!!!
我慢我慢、善のやる気が出るまで待つのだ。
時計の針は進みゆく。
善は1時間かけてトイレにいく。1時間かけて顔を洗う。
1時間かけて麦茶を飲む、そして1時間かけて席に戻ってくる。
くくっ!!!
やっとテキストを開いたので、助動詞を説明する。
「どう?わかったかい?じゃ、問題解いてみ」
善が顔をあげる。
感情のない魚の目。ゾンビのような表情。
ひえ~!!!
動悸息切れがひどくなり、さりげなく逃げてきてしまった。
頭の血管もぷちっと切れそうだ。
自分の体を守るため、しかたなく逃げてきた。
見守ることの難しさときたら!!
このままこの修行を続けていたら、
絶対、仙人になってしまう!!
ゴータマ・シッダールタに限りなく近づける気がする。
自分自身の魂の救済のため、いったん、休憩します。
世の中のお父さんお母さんは、えらいなあ。
おかん