お好み夜話-Ver2

ポッター現わる

「クロダくん」がモグランポに初めて来たのは彼が19歳のとき、かれこれもう16年も前のことになる。

それからしばらくして故郷の旭川から千住に移り住み、夢を追い続ける貧乏生活が始まった。

やがて彼の貧乏臭いアパートに同郷の男2人が転がり込み、男3人のむさ苦しくさらに貧乏臭い共同生活が始まった。

そのひとりが「八っちゃん」で、もうひとりが「ポッター」だった。

彼らは漫画やらアニメの世界に憧れ、それを仕事にしようと試行錯誤を重ね、絶対にもてない昭和の貧乏さんを地でいっていた。

よくコミケだとかなんだとかオタクのイベントで盛り上がるたび、「クロダくん」を中心に梁山泊のように輪が広がっていったようだったが、いっこうに芽が出るわけでもなく相変わらず女の子にはもてない昭和の貧乏さんだった。

中でも「ポッター」は声優や役者を目指すといった割には腹もくくれず奥手で、気の弱さが顔にも出ているお人好しタイプだった。

その当時はやたらテレビ局から電話があった時期で、あの「銭形金太郎」のスタッフから、お客さんに“いい貧乏さん”がいませんかねぇ ? なんて訊ねられたので、即座に「ポッター」の顔が浮かんだ。

これぞ千載一遇のチャンスかもしれないと思い、「クロダくん」や仲間に言うと、それは願ったりかなったりと本人に出演しろとけしかけたのだが、当の「ポッター」は

「勘弁してください。銭金だけは、クニの親も見ているので・・・」

なんて、まことに意地も欲もない弱腰だった。

まったく、役者になろうなんてヤツが恥ずかしがってどうする ?

どんな些細なチャンスでも生かせないようでは、この先通用しないではないか。

その後も映画やテレビのエキストラのはなしを振っても、「いやぁ・・・」なんて弱っちく断るものだから、コイツ役者には向いてないなと、素人のオヤジが見切りを付けてしまったのだった。

だがそのくせ女の子にホレっぽく、その当時ウチに居候していた親戚の娘に言い寄り、こっそりデートしていたりしたのがバレて(そりゃそうだ。このオヤジにバレないワケがない)こそこそ逃げ回っていた馬鹿野郎なのだ。
(今の若手ではTくんの役回りだね、アホたれ)

町で姿を見かけ声をかけようとしたら、サッと電柱の影に隠れやがったので、近づいていって「オマエは寅さんか」と怒鳴りつけてやったらシュンとしたものだ。

まあ人の惚れたはれたにあれこれ言うほど野暮じゃないから、付き合いたいなら堂々としていればいいのに、つくづくバカな男よのう。

そんなこんながあっても「ポッター」はモグのイベント事には何かといた方で、常連さんともうまくやっていたが、とうとう夢破れて故郷の旭川に帰ったのが6年ほど前。

それ以来彼とは会っていなかった。


月日は流れ、「クロダくん」は昔の面影もなくバルーンのように膨張し、なんとか業界で食ってはいるものの未だに貧乏臭く女の子には縁がないが、仲間達には人望がある兄貴分のよう。

「八っちゃん」はついに念願かなってプロの漫画家としてデヴューし、単行本も7巻を重ね【絶賛発売中 !! 】
貧乏でガリガリに痩せていたのに、今ではふっくらとして先生の貫禄だ。

昨夜、その「八っちゃん」先生を囲む会なのか久しぶりの顔合わせか、「クロダくん」が2階席を予約してくれた。

そして一番先に顔を出したのが「ポッター」だった。

「ポッター」というあだ名は、「ハリーポッター」みたいな眼鏡を彼がかけていたからオヤジが勝手につけたのだが、まあみんなに馴染んだ。

なのに、30歳も半ばになった彼はトレードマークの眼鏡をしておらず、すっかり落ち着いて2児の父だという。

北海道で所帯を持ち、役者になるという夢はすっかり諦めてサラリーマンをしていたが、転勤で家族共々千葉に住んでいるという。

今じゃいろいろなことも懐かしく嬉しい思い出だが、幸せにやっているようで何よりだ。

サラリーマンに甘んじることなく、一度破れた夢でも心から捨てることながなければ、幾つになってもやれる事もあろう、頑張らずにガンバレ「ポッター」👍

そして、一足先に夢かなえた「八っちゃん」に続け、若人よ‼️

あ、もう皆んなそんなに若かないか😜


んで、できればさぁ、「マゴ」の顔でも見せてくれるとジジババうれしいんだけど😄

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