今回斎宮についての本を、結果的には5冊読んだことになった。
そのうちの3冊はこの人の著書。どれも面白かったですね。
現在御年65歳だから今はどうかわからないが、8年前のこの本の出版時点では
三重県立斎宮歴史博物館の学芸普及課長だった人。
ま、斎宮はある意味マイナーなテーマでしょうから、研究者もそこまで多くはないと思う。
その中でまさに斎宮研究真っただ中の立場ということかね。
何しろ博物館に勤めてたんですから。
今後、斎宮についての本をなんぼか読みたい人に向けて、この3冊を簡単に説明します。
番号は便宜上。
1.「伊勢斎宮と斎王」
2004年発行。一番柔らかい内容。短い話題に分かれたコラム的なので読みやすい。
最低限の数字も挙げられているので簡単過ぎない。牽引もついている。
特筆すべきは、一つの話題について前半部がより基礎的な内容、後半部が
【もっと知りたい人へ】とあって、より掘り下げた内容になっている。
これいいシステム。ボリューム的には半々で、これがちょうどいい。
もっと各所に広がって欲しい。
2.「斎宮――伊勢斎宮たちの生きた古代史」本書
2017年発行。中公新書。中公新書といえばそれで説明は足りるであろう。
これはいい方の新書。わたしは中公新書を信頼している。読みやすく、内容もある。
面白い試みとして、ほとんど世には知られていない歴代斎宮を、人によりそって
――資料がとても少ないので、比較的有名な斎宮でも目鼻がはっきりするほど
キャラ立ちはしてないわけだが――の視点で書こうとしている。
取り上げられてるのは5人くらいだったかな。
それぞれ面白かったんだけど、何しろわたしは記憶力に問題があるので、
斎宮女御という人がかろうじて頭に残った。藤原忠平の孫で村上天皇の女御らしいよ。
歌人としても有名でサロン的な集まりがあったとか。
3.「伊勢神宮と古代王権 神宮・斎宮・天皇がおりなした六百年」
一般書だが内容は研究に近いので、読むのにけっこう時間がかかるし、
ここまで読まなくてもいいと思う人もいるだろう。若干重め。
が、内容は詰まっているし、読んだらとても面白い本。
これは別に独立して記事にしているので、こちらを参照ください。
わたしは3→1→2という順番で読み、それはそれで全然問題なかったが、
読みやすさで言えば1→2→3なので、勘案してもいいかもしれない。
だが細部の情報を入れてから簡単なものを読むと、読んで味わいが深まるので……
まあどっちがベストかは人による。要はどっちも楽しめる。
――この本について言いたいことがもう一つ。
あとがきでね。氷室冴子の名前が出て来るのよ。
著者は彼女と二度ほど面識があり、斎宮が出て来る小説について話したこと、
それが実現しなかったことが残念だと。通り一遍ではない哀悼の意を表している。
好きな作家だった。氷室冴子の死は。早すぎた。
まあ読んだのはほぼ時代物だけで、全体の作品に対しては3割程度だとは思うけど。
今でもめったにない、平安時代を舞台に面白い小説を書いてくれた。
源氏物語など古典の翻案ではなく、オリジナルのエンタメ小説はレアだった。
こんなん書けるんだ!と驚いたよ。こういうものの考証は常に不安だが、
少なくとも違和感のある話づくりはなかった。
面白く読んだよ。大好きだった。今でも惜しむ。
歴史・古典エッセイでわたしを古典の世界へ引っ張ってくれたのは
田辺聖子だが、氷室冴子も同じように田辺聖子のエッセイに導かれて平安時代へ入りこんだ。
わたしにとっては同窓の先輩のような人。
――ということで、著者に対してはこの件で親しみを覚えました。
内容もいいので、斎宮についてさらっと知りたい人はおすすめです。