前回のブログで「サステナブルな社会」について少し触れてみました。
環境問題など大きな問題に対峙するには、まずは目の前の小さな一歩から。
自分で出来る〝選択〟をしていきたい、そんなお話でした。
今回は『SDGs(持続可能な開発目標)』の他の部分に目を向けて、自分の活動や工芸を交えてお話しできたらなと思います。
私は〝凛九〟という伝統工芸の職人グループに所属して活動しています。
〝凛九〟は男性イメージの強い伝統工芸の世界に生きる女性9人で結成しました。
今は東海三県で活動しているメンバーで構成されています。
『伊勢根付、有松・鳴海絞、伊勢一刀彫、尾張七宝、豊橋筆、伊勢型紙彫刻、伊賀くみひも、美濃和紙、漆芸』
と工芸の種類も全員異なります。
この中で私だけ地域の伝統工芸ではないのですが、この辺りのお話はまたの機会にさせてください。
さて「サステナブルな社会」をつくっていく中には〝ジェンダー平等を実現しよう〟という目標も含まれています。
- 男女の性別の役割としてのジェンダーがすべての人にとって平等である
- すべての女性や女の子に力を与える
日本は児童婚や女性性器切除といった今でも世界でみられる痛ましい習慣はないものの、男女の社会的・文化的な格差を比べた2020年の「ジェンダーギャップ指数」によると、149カ国中121位という低い位置にいます。
意外にも感じますが、現実問題として根深いものがきっとあるのでしょう。
伝統工芸の世界も、今でも男性イメージが強いということは、おそらく男性社会といった部分がまだ少なからず残っているのかなと思ったりします。
私が漆芸の学校に通いはじめた頃、ひどく漆にかぶれました。
そんな時ひとりの先生にこう言われたのです。
「女なんだから無理して続けることはないよ」
自分なりに覚悟を決めて入所した学校です。
学ぶことは全て新鮮で、毎日が楽しく、かぶれだって漆と仲良くなれている証拠くらいの気持ちでいたので驚きました。
まさかそんな風に言われると思ってもみなかったのです。
ひどい漆かぶれで顔を腫らしている私を不憫に思い、心配して言ってくれたということもわかってはいます。
ですが、女はどうせ卒業したら辞める。
結婚したら辞める。
そう思われていることがショックでした。
でも…事実、そういった実態はあります。
食べていくのが難しい世界だから、まず続けるということが困難なのです。
今は漆芸の学校も生徒のほとんどが女性だと聞きます。
しかし学んでいる人数は多いのに活躍し続けることが難しいのか、作家として有名な方の大多数はまだまだ男性です。
そういった中で私が漆芸を続けられているのは、理解ある家族、そして凛九というグループのおかげに他なりません。
何者でもない私にもたらされた〝凛九〟という居場所。
とても堅い身分証明書のようなものです。
きっと工芸の世界に足を踏み入れたけれど諦めざるを得なかった人の中には、凛九のような場所があれば続けられたのにという方も多いと思います。
私は運良くここにいます。
私以外のメンバーはグループがなくても活躍できる力を持った人たちばかりです。
そういう人たちに支えられて今の私は存在しています。
けれどこの状況に甘えて運が良かったで終わらせず、成長し自分も凛九の活動を支えるひとりにならなければなりません。
次なる凛九や新しい流れをつくる手助けができれば、より「サステナブルな社会」にも近づき、現実になっていくだろうと思うからです。
凛九をきっかけに輪が広がれば、私のように活動を続けられる女性は大勢います。
とはいえ凛九が続いていくには自分たちだけでは限界があります。
周りの応援が不可欠なのです。
まずは凛九の活動を応援することが「サステナブルな社会」をつくることに繋がるのだと知ってもらうこと。
〝選択〟の中のひとつの選択肢に〝凛九〟を入れてもらうこと。
こうして広がった輪はきっと時代を変えます。
なんて、最近見ているヒーローアニメの影響で大それた事を言ってしまいましたが、ブログということで笑って許してもらえると助かります。
サステナブルについて、長くなってしまいましたが次で最終回です。
次回は前職のお話と漆を絡めて書けたらと思います。
最後までお付き合いいただけると嬉しいです。