札幌医科大学教授・理学博士
高田純
(たかだ・じゅん)1954年、東京生まれ。弘前大学理学部物理学科卒業後、シカゴ大学ジェームス・フランク研究所、広島大学原爆放射線医科学研究所などを経て、現職。チェルノブイリやシルクロード桜蘭など世界各地の放射線被害を調査・研究。著書に『放射能・原発、これだけ知れば怖くない!』(幸福の科学出版)や『人は放射線なしには生きられない』(医療科学社)などがある。
福島第一原発の事故から2年も経つというのに、いまだに福島の人々が故郷に戻れないのは異常です。原爆を落とされた広島市でさえ、2カ月後には電車が走り、翌年にはガスが使えるようになりました。
私は事故から約1カ月後の4月、実際に原発の敷地の境界まで行って、20km圏内で3日間調査しました。そのときに浴びた外部被曝線量は0・1ミリシーベルト(mSv)に過ぎませんでした。マスコミは当時、「1日に10mSv」などと伝えていたので、100分の1というあまりに低い数値に、逆に驚きました。
現地の方々の検査もしましたが、多くの人が内部被曝、外部被曝を合わせても5mSv以下の被曝だと判断できました。ちなみに、自然状態の世界の年間平均被曝は2・4mSvです。
つまり、今回の原発事故の放射線によって、子供や女性を含む福島の人々に健康被害は出ないということです。それは今も、そしてこれからも、です。
また、事故当時から微々たるものだった放射線量も2年経ってどんどん弱まっているので、福島の人々は故郷に戻って日常生活を送れます。
「私たちは放射線よりも強い力を持っている」
「年間100mSv以下の被曝は、人体への影響が確認できない」などの事実を知ると、これまでの政府やマスコミの大騒ぎは何だったのかと、ため息が出る。原発事故の後、マスコミはしきりに「風評被害」という言葉を使って、福島の人々をいたわるフリをするが、これはむしろマスコミ自身による「報道被害」と呼ぶべきだろう。
また福島の人々は、怒りの矛先を東京電力に向けがちだが、東電も同じく被災者であるという事実を忘れてはいけない。付け加えたいのが、事故当時の菅直人・民主党政権が、自分たちに批判が及ぶことを怖れ、「巨大な天災地変で原発事故が起こったときは、電力会社に責任を負わせない」という原子力賠償法を適用せず、東電に責任をなすりつけて逃げたことだ。
つまり、「反原発」「脱原発」論の中心を占めるのは、非科学的な感情論や恐怖心であり、その旗を振る人々には、真実を追求しようとする誠実な姿勢が欠けていると言わざるを得ない。
福島の未来は、福島の人々にかかっている
3月、福島市内の応急仮設住宅を訪れると、かつては広い家で生活していたお年寄りの夫婦で、六畳二間に身を寄せ合うように暮らしている人たちが何組もいた。市の担当者はこう訴えた。
「お年寄りは慣れない環境で外に出たがらず、引きこもりがちです。若い人は県外に新しく仕事を見つけると、福島に戻りにくくなる。早く元の家に戻れるようにしないと、被災地がどんどんさびれていきます」
慣れない避難所生活でストレスを抱え、体調を崩して亡くなる高齢者や、将来を悲観して自殺する人も出ている。福島県内の老人ホームなどに入所し、震災後に避難を強いられた高齢者のうち、今年1月1日までの間に520人が死亡しており、死亡率は震災前の2・4倍に増えている
政府による本来必要のない強制避難や、マスコミが広げた過剰な放射線への恐怖心によって、福島の人々の多くの生命や財産が奪われているのである。
だが、一方で次のような視点も忘れてはいけない。
大川隆法・幸福の科学グループ創始者兼総裁は、近著『されど光はここにある』(幸福の科学出版)でこう述べている。
「被災者の方は、つらいでしょうが、広島・長崎は、その後、きちんと復興していますので、『将来的な心配はない。実は、もっと被害は少ないのだ』と思っていただいて結構です。とにかく、『心の力』を強くして跳ね返していってください。『私たちは、放射線よりも強い力を持っているのだ。放射線も、神の力の支配下にあるのだ』ということを知ってください。(中略)むしろ、『恐怖心』のほうが、人を早く死なせてしまうのです」
福島の現状は確かに厳しい。もちろん、事故当時の政府やマスコミの責任を明らかにしたり、政府や自治体が福島を支援することも必要だろう。
しかし根本的には、そこに住む人々が、「自分たちの街は、自分たちの手で復興する」という気概を持つことが大事だ。福島が真の復興を果たし、これまで以上に豊かな地域になれるかは今後、福島の人々が福島の未来をどのように描き、どのように行動していくかにかかっている。福島をはじめ被災した東北地方の一日も早い復興を心より願いたい。(2013.03.25 ザ・リバティWebより)