先月の初頭まで、桜も種類によってはまだ散り
残っておりました。
花ばかり見ていると人の世が分からなくなりそうです。
人の世ばかり見て、花を忘れる者はそういないのに
花を踏んで入った藐姑射の山から、曙光に指の影を
透かしてみるなんて時を過ごすと、容易に人の世の
ことを忘却する。
忘却です。すべては忘却なのです。存在の歴史とは
忘却であります、ってハイデガー先生も仰ってました。
花見酒というのを頂いて参りました。
この春最高のラベルかもしれません。
日本酒の進化を、今年も追いかけていこうと思いながら
も、心はまだ藐姑射山。
いやいや、帰るべき現実があったはずだ。
帰ろう。
ただいま、クルシャ君。
帰りましたよ。
ここは人の世ではありませんよ。
猫の無何有郷です。また、間違えましたね。
それならいつものことだよ。
人の世には、私なんかが踏むべき寸土も無い。
ウルタールのうる: 巻二十八 (うるたやBOOKS) | |
東寺 真生 | |
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