1998年に発表された論文は、乳幼児のやる気を育てるための10の原則を掲げている。今回は10の原則を、それぞれ一言説明を添えて紹介する。
前提知識として、内発的動機(やる気)は生後数週間後の段階から『吸う』という行動として現れ、発育とともに強化されていく本能的な機能であるということを、覚えておいてほしい。
1:レスポンシブな環境の提供。乳幼児が自己効力感を感じられるようなおもちゃや活動を提供すること。
2:一貫性のある応答的なケア。矛盾のない行動や反応を、乳幼児を指示するのではなくあくまでも要望への応答を行うこと。
3:乳幼児の自主性をサポートする。乳幼児が自由に遊べる範囲を定義し、またそれ以上の過剰な干渉を避けること。
4:親密な関係を築く。乳幼児が「親の元にいれば安心である」であることを学習できるよう、暖かく、しかし他人行儀ではない接触を。
5:共同注意を確立する。乳幼児が他人に対する効力感を獲得するために、また集団活動のメリットを学ぶために、乳幼児が目を向けたものに焦点を当て、時に話し合うこと。
6:『やる気がある人』の具体例の提示。学びや遊びに熱意を注ぐ人と乳幼児を接触させ、同じような熱意の開花の可能性を高めること。
7:乳幼児の能力にあった課題の提供。クリアするごとに徐々に難易度を上げ、乳幼児の自己効力感を高めよう。
8:問題解決のための足場づくり。提供するのは回答や一方的な攻略方法ではなく、あくまでも乳幼児が解決策を生み出すまでの援助(誘導尋問のような)である。
9:自己評価する機会の提供。直近の行動を振り返るよう促し、フィードバックを形成し、新しい目標を作れるような問いかけを。
10:報酬は控えめに。乳幼児の目標が『報酬獲得』にすり替わらないように、努力量やプロセスに焦点を当てた評価を行うこと。
まとめると、乳幼児のやる気を育てたいのであれば「外部からの過剰接触によって子供が萎えないよう、子供が何かに興味を持ち学ぶように、教育側も子供に興味を持ち、ひたすらに分析する」ことを心がけることが重要となる。
この10の原則は乳幼児だけでなく義務教育期間においても、一部はより上位の教育機関であっても通用する。生後24~36か月の間に「1-主観的成功率(Atkinson 1957)」という達成動機の方適式が組み上げられている(Michael Lewis 1992)ことからも察せれるように。
ーーーこれが「子供だから」と言って軽視しないほうがいい理由の1つ。
子供が持つやる気の構造は、大人のそれとほぼ変わりなく、
「子供だから」というセリフは、自身もしくは周囲のやる気への軽視と同義となる。
だからこそ、子供のやる気を育てるのは、非常に難しいんだ。
参考文献
Martha P. Carlton & Adam Winsler et al. (1995) Fostering Intrinsic Motivation in Early Childhood Classrooms.
Atkinson, J. W. (1957). Motivational determinants of risk-taking behavior.
Michael Lewis,Steven M. Alessandri et al. (1992) Differences in Shame and Pride as a Function of Children's Gender and Task Difficulty.