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ばりん3g

サイコパスに感情はあるのか。

サイコパスとひとこと聞いた時、あなたはどんな人となりを思い浮かべるだろうか。

なにを強調し、なにを根拠にするかで主張に差分は生まれるだろうが、おおかた「冷酷で、残酷で、人の痛みに共感できず、むしろすすんで痛みを与えるような」「まるで感情なんてないかのような」振る舞いをすると考えるだろう。

あるいは「道徳やモラルなんて一切なく、ただひたすらに権力や支配欲求を満たすために」振る舞う、だとか。

 

先に言っておくと、それらの思い込みはある程度当たっている。

経験則的にも、統計でみても、サイコパスな人は自身の利益のために合理的に動くことができ、一般的な人であれば道徳やモラルが阻むような行動を容赦なく実行できるという。

わかりやすい例は水素水やシリカ水の販売業者になる。

科学的には無益なものを、口上で付加価値をつけそれなりの額で「科学的には無益なもの」だと知らない人に売りつける。

新しいビジネスモデルだと喧伝し絞れるだけ搾り取る詐欺師の様を、モラルある人は真似ようとはしないだろう。

 

だいたいの人が抱える思い込みのとおり、彼らはまるで感情なんてないかのように動くことができるわけだが、

なぜ彼らは感情なんてないかのように動くことができるのだろうか。

まさか本当に、感情がないからモラル無視の行動ができているのだろうか。

 

 

この疑問を解消するには、まずサイコパスというものを知る必要がある。

 

サイコパスとは脳の特定部位に障害を患うことで発生する性格であり、共感の欠如や衝動性の高さを主な症状として取り上げられるパーソナリティ障害のことを指す。

このうち「共感の欠如」とは、例えば他者の喜怒哀楽に触発され判断を変える、作品に感情移入して心が揺さぶられるなどの、いわゆる共感と呼ばれるプロセスが障害により阻まれることをいう。

 

通常であれば、作品内で繰り広げられる「複雑な感情のぶつかり合い」は視聴者の心を大いに揺さぶり、つかんで離さない。恋愛モノや熱血ものなどの人格描写が生々しい作品が受け入れられるのはそういう訳もあるのだが、

サイコパスな人はこの手の描写が難解なため、「複雑な感情のぶつかり合い」が描かれても、ひとり追いつけないような不快感を感じるという。

また、「親友を裏切る」ような行為は"裏切られた側の気持ち"を想像することや今まで共存してきた思い出などの情動的な要素が、その判断を踏みとどまらせることだろう。

だが、サイコパスな人にはそういった情動的な要素が発生しづらいため、理由があれば「親友を裏切って」しまうのだという。

 

さらに言えば、サイコパスは多少の情動であれば切り捨てられる特性も持ち合わせる。

たとえ「愛しているよ」と投げかけられても、サイコパスな人はほとんどの場合目を背けてしまうのだ。

これにより、「複雑な感情のぶつかり合い」や「親友を裏切る」ときにわずかに発生する共感も無下になる。

 

これが、感情なんてないかのように動くことができる訳である。

 

 

サイコパスは共感の欠如を主とする性格である。

が、共感の欠如と感情の欠如は等号で結ばれない

サイコパスが障害を患っているのはあくまでも共感のプロセスを担う部位であり、感情をつかさどる部位が機能不全に陥っているわけではない

事実、サイコパスな人の感情への理解は一般的な人のそれとほぼ同等であり、また一般人と同等もしくはそれ以上の感情の高ぶりも観測されているのだ。

 

サイコパスな人にも喜怒哀楽はある

おいしいものを食べれば幸せな気分になれるし、ホラー描写にビビり夜一人でトイレに行けなくなったり、FPSでうまいこといかず台パンすることだってある。

その様相は、ほとんど一般的なそれと変わりない。

はたから見れば、サイコパスは少し冷静な一般人に見えることだろう。

しかし、対話を重ねるごとに"冷静な"訳を知ることになる。

 

 

サイコパスにも喜怒哀楽はある。

だがらと言って、他人に共感できる訳ではない。

彼らは理由があれば親友をダメにすることだってできるし、その時の表情は"まるで感情なんてないかのよう"なものになるだろう。

 

 

参考文献

Abigail A(2013) Empathic responsiveness in amygdala and anterior cingulate cortex in youths with psychopathic traits.

Brook, Michael Kosson, David S.(2013) Impaired cognitive empathy in criminal psychopathy Evidence from a laboratory measure of empathic accuracy. 

Farah AliInes,Sousa Amorim et al. (2009) Empathy deficits and trait emotional intelligence in psychopathy and Machiavellianism.

Jana L. Mullins-Nelson,Randall T. Salekin et al. (2012) Psychopathy, Empathy, and Perspective -Taking Ability in a Community Sample Implications for the Successful Psychopathy Concept.

Jean Decety1,2, Chenyi Chen et al. (2013) An fMRI study of affective perspective taking in individuals with psychopathy imagining another in pain does not evoke empathy.

Mark R. Dadds,Jennifer L. Allen et al. (2018) Love, eye contact and the developmental origins of empathy v. psychopathy.

Robert Hare,James Blair et al. (2013) What is psychopathy.


論文を参考にいろいろ喋るブログです。

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