2014年に発表された論文などが取り上げている心理学の話題の1つに、『フリン効果』というものがある。
これは特定のIQテストにおいて時間経過とともに被験者全体のIQスコアが上昇し、そのテストがIQテストとして使えなくなるという現象を指している。
より分かりやすく言えば、2021年を生きる私たちと1900年を生きた人々が同じIQテストを受けた場合、私たちのIQスコアの平均値が1900年の人々よりも高い傾向が発生するということ。
上昇値の平均は10年で3ポイント程度、結構馬鹿にできない数値である。
そもそもIQテストとは「作成当時の人々の知能の中央値を100とした時の特定人物の知能の値(つまり、IQ)」を計るものである。何らかの理由により中央値が100からずれることがあれば、そのテストはまともなIQテストとして扱えなくなるのだ。
で、このフリン効果がなぜ発生しているかだが……
「よくわからない」というのが現在の見解だそうだ。
今回取り上げた論文では「異民族同士の結婚や移民が増えたから遺伝子の交配がより多様性富んだものになって、それが知能指数の上昇に関係しているんじゃね?」説と「シンプルに技術発展した環境の恩恵を受けているんじゃね?」説が立てられているが、そのどちらも証拠不十分なのだそうだ。
『インフレが激しいソシャゲの、開始時期によって得られる駒の性能差』のような環境要因によるものかとも思ったが、どうやらそう単純な問題ではないらしい。
原因が不明瞭でつかみどころがないが、しかしフリン効果は事実として存在するという。
もしIQを根拠に意思決定を下すことがあれば、この事実を念頭に入れなければならない。でなければ知的障碍者のIQ過大評価など、厄介な問題を引き起こしかねないのだ。
ーーーたまに見かけるIQテストにさ、やたら数値高い結果でるものあるじゃん。
もしかしてさ、ああいう類のテスト、IQの基準が1900年代の方々に設定されているとか?
だとしたら私たちは……、いや、やめておこう。
ああいう類のテストは、虚偽の数値を見てのぼせ上がるためにあるんだったな。
参考文献
Lisa Trahan, Karla K. Stuebing et al. (2014) The Flynn Effect: A Meta-analysis.
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