日経新聞の「 町内会の資源ごみ回収、コロナ禍で中止広がる」、、、
いわゆる、古紙やビン缶など「集団回収」に中止の動きが出ているという。古紙等の資源回収、いろんな問題を含んでいるので、コロナ禍でというよりも、コロナ禍が追い打ちをかけているということだろうかと、、、
昨年の「横浜市内4区で資源「古紙」集団回収が停止 回収業者、中国市場の悪化理由に3月末で撤退」では、集団回収の回収業者の側に焦点を当てていたが、、、今回の集団回収中止は、町会などの回収団体の側からの視点で、いろんな地域の実例もあげている、、、
なかでもダイナックスの調査結果など興味深い、、(報告書を探してみたが、ネット上では公開されていないのかみつからなかった~)
日本経済新聞 2021年1月30日
町内会など地域組織が古紙やビン缶といった資源ごみをリサイクルする「集団回収」に中止の動きが出ている。担い手不足のところに、新型コロナウイルス感染拡大による対面接触の制限が重なった。自粛生活が長引けば資源ごみが増えるだけに、回収の仕組みの維持が欠かせない。 ...
-略-
資源ごみのリサイクルは、町内会やマンション管理組合などが行う集団回収と、自治体が場所を決めて引き受ける行政回収がある。環境省によると全国の自治体の約8割が集団回収を併用している。
広く浸透した集団回収だが、中止の動きが出始めた。ダイナックス都市環境研究所(東京・港)の調査(2020年4月実施)では全国524自治体の2割で集団回収の中止があった。「コロナの影響」が85%、「業者の撤退・買い取り価格の値下がり」が18%で続く。中国が環境対策として19年に古紙の輸入を規制したことが響いている。
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ダイナックスの調査は2020年4月実施、その時点で集団回収中止が「コロナの影響」が85%となっている。また、世田谷の例のように「コロナ禍で対面での会話を控える機運が高まり活動が停滞。慰労会もできなくなり、集団回収そのものを廃止した。」というのもショッキングだ~
コロナ禍が追い打ちというよりも、コロナ禍は様々な問題をより深刻にしている、、
全国の自治体の約8割が集団回収を併用ということであるが、、、
もともとが、古紙やびん缶など有価で売れる物の回収は、民民でやっていたもの、、いつの頃からか、自治体がごみ減量施策として資源の回収にも取り組むようになってきた。もちろん、それはそれでいい面もあるのだが、
『日本の廃棄物処理 平成30年度版』をみると、
紙類の回収量は、行政回収 1,568千トン/年、集団回収 1,845千トン/年と、全国的にみると集団回収の回収量の方が多いが、、(参考「環境省 『日本の廃棄物処理 平成30年度版』」)
東京23区では、約20年前から紙類の行政回収が始まった。2019年度の古紙回収量は行政回収 157,061トン/年、集団回収 155,431トン/年と、23区でにおいては、年々集団回収の回収量も減少が続いている、、しかし、23区の回収形態もそれぞれ違って、中野、荒川、目黒は行政回収を止めて集団回収に一元化。世田谷区の紙類回収は、行政回収が8割近く、、、多くの区では、集団回収に力を入れている、、(参考「23区 令和元年度 清掃事業年報(リサイクル編)」)
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また、記事の中では、中国の環境規制「2020年末までに固体廃棄物の輸入ゼロ」による影響にも触れている。日本の場合、回収した古紙を国内だけでは回しきれずに、輸出を含めての循環なので、輸出の古紙価格は変動が大きいので、、、、
そして、中国の環境規制による影響も、今日は、「古紙需要増、価格は上昇 日本からの輸出 先行きは軟化も」「製紙原料調達 頼みは東南ア 中国、古紙輸入を全面禁止 再生パルプ 現地生産」と、、状況変化もめまぐるしい。(関連(本ブログ)「中国の環境規制、2020年日本の古紙輸出はどうなるか~」)
しかし、何はともあれ、
コロナ禍で、古紙などの「集団回収」の中止が広がる事態はとてもよくない、困る、、、
何と言っても、「集団回収」は良質の古紙が集まる。また、地域コミュニティーが活発になり、行政の報奨金制度なども活用できるというメリットもある。しかし、その裏側では、回収業者はぎりぎりのコストで回収、そのコミュニティーなどをうっとうしく思う人もいるのではあろうが、、、
行政側からみれば、資源の有効活用、ごみ減量、しかも低コストと、、、「集団回収」は可能な限りの存続が望まれるのではないか、、、ひとたび地域の団体が「集団回収」を中止にしてしまえば、また立ち上げるのは大変な努力が必要となる、、
23区の古紙回収の行政コスト、
集団回収の場合、回収団体への奨励金は「6円/Kg+事務費など」が多いとおもうが、行政回収になればその4~5倍は費用がかかる。ごみとなれば59円/Kg(平成29年度)、、、
何と言っても、古紙の回収が滞り、資源化できずに、ごみとなって焼却処理されるのは忍びない。それでなくとも、23区の清掃工場では毎年100万トンもの紙類が焼却処理されている。清掃工場での資源化物の搬入規制もなく、家庭ごみの有料化の実施もなく、なんでも出されたごみはそのまま焼却なりの処理がされる実情、、、なんとかならないものか、、、
行政も、コロナ禍で大変なことではあろうが、、、
「集団回収」を維持させるための様々な方策を講じる必要があるのではないか、、、
東京都資源回収事業協同組合は、
2020年1月下旬に「集団回収事業継続の非常事態宣言」を発令
非常事態宣言では、現状の都内における古紙流通価格は回収業者の回収費用すら賄えない危険な状態下にある。集団回収事業を維持する為、最大限の努力はするが、関係者各位にも、この窮状をご理解いただき、安定した資源化に必要な自治体等の助成を含め、非常事態を乗り切るためのご協力を賜りたいとなっている。
古紙価格の変動、
影響を直接深刻に受けるのは古紙回収業界かな、、、
古紙問屋が回収業者から仕入れる古紙買値(2020年3月)
(日本経済新聞「段ボール古紙、13年ぶり安値」)現状はどうなっているか?
段ボール 5円/Kg
雑誌 3円/Kg
新聞 6~7円/Kg
関東地区 主要古紙価格(2020年)(古紙再生促進センター)
段ボール 18円/Kg~
雑誌 15円/Kg~
新聞 17円/Kg~
東京都内及びその近郊の古紙問屋店頭渡し価格
関東地区 主要古紙輸出価格(2020年)(関東製紙原料直納商工組合 需給委員会)
輸出価格の変動は大きい
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●関東地区の古紙価格ならびに古紙輸出価格の推移グラフ(3年間)、古紙価格推移グラフ(2000年1月〜)