貿易業務に自信ありという人の中に「契約書などどうと言う事はないよ。契約書を持ち出し、相手とやりあうようになったら、その商売は終わりだから」と、契約書をないがしろにする人がいます。しかしながら、この考え方は非常に危険だと思われます。商売は終わる、すなわち取引関係は切れるとしても、その切れ方が問題です。ただ単に切れてしまうのと、相当額の違約金やクレーム弁金を取られた上で切れるのとは、大違いです。
契約は口頭でも成立します。しかしながら商習慣も違う外国業者との契約には諒解違いによるトラブルを防ぐ為、契約書が必須で、既述の合意すべき事項(その27参照)すべてに合意の上、確認しましょう。
(1)契約書の目的は次の通り。
1)契約の存在と内容すなわち、取引に関する売手/買手の合意事項を確認し、当事者の権利を守る。
2)後日の紛争を未然に防止し、取引をスムーズに行う。
不幸にしてトラブルが発生した場合は、売手と買手は契約書をよりどころとして解決に努力しますが、解決に至らぬ場合はこれを基に第三者に裁定を依頼します。
契約書は相手先のフォームにサインして送り返す方法もありますが、本来自社書式を用い、契約に関する合意成立後ただちに、自社で作成し、相手先に署名させ返送してもらうのがよいのです。返送されて来た契約書はすぐチェックし、実際の合意と不一致がないかどうか確認し、もしあれば相手先に連絡の上、最終合意を確認します。
契約書は通常印刷された書式を使用しますが、必要に応じタイプや手書きで追加/訂正を行う場合があります。手書き>タイプ>印刷の順に、つまり手書きが最優先します。
(2)実例:
取引により様々ですが、注文書、注文請書、売約書、買約書などの形で契約書が発行されています。完璧なものもありますが、実際には種々問題があるものも多いようです。具体的には次の例が見られます。但し、一部条項に不備があっても、契約書は契約書です。
1) 契約上の重要事項に関し合意事項の記載が不十分/不明確、すなわち後日当事者間で諒解違いが発生し、トラブルとなる。
2) 裏面約款がない、つまり一般取引条件(General Terms and Conditions)の部分がなく、不可抗力、クレーム、仲裁、準拠法などの規定を欠き、叉は裏面約款はあっても重要事項の一部が欠落しており、問題が起こった場合に対応が困難。
3) 相手側契約書にある裏面約款を深く検討する事なく署名して返送した。つまり一般取引条件の部分が一方的に相手有利になっている。
4) 政府機関やそれに準じる貿易を行う組織で契約書式を制定しており、他の書式を認めない場合がある。そのような相手と取引を行う場合は、その内容を十分に検討し対処すること。
(3)契約書作成のキーポイント
1) すべての合意事項は契約書に記載します。包括合意、完全合意です。
2) 商談成立後は後述の書式の戦いをも考慮、自社フォームで契約書をすぐ作成し、相手側に送る事。
3) 相手先契約書書式を取引の力関係で使用せざるを得ない場合は、経営幹部の承認を得ておく事が望ましい。
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