貿易実務の問題で、重要でありながら、なんとなく軽視されているものに「価格」があります。実務を教える立場からは、価格は特定の企業や業界に特有な問題も多く、あまり深入りしたくないという考え方もあるようです。それはそれとして、貿易実務の「失敗」の中で価格の失敗は非常に多いのではあるまいか、また失敗が失敗として認識されていないように思われます。
1 貿易実務上の価格は、極端にいえばコスト+利益+経費です。この計算により、買値を決めたり、売値を決めたりします。その作業を「採算」と呼んでいますが、大きな要素は為替と運賃です。この計算を間違えなければ、適当な利益を得て、取引を進めることができ、特に問題がなければ取引は「成功」したとなります。
2 上記は見方によれば、瑣末な問題であり、いわゆる「計算」に過ぎません。実は計算もさることながら、当事者としての「価格政策」が大切です。特定の商品に対し、複数の客先、複数の市場に対して、どのように価格を設定するのか、単純計算以上に難しい問題ですが、残念ながら実際の貿易においても、この点が非常にいい加減に処理されている例が見られます。その結果、もっと高く売れるのに儲けそこなった(儲けそこなったのに気がつかない)、同じ商品で価格の叩きあいになり、商品のイメージが下がった(これは販売店対策の問題でもある)、価格が高すぎて大型ビジネスに発展する目を摘んでしまったなどの問題が多いのです。
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