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銀ちゃんと違っ!「また銀ちゃんなの!「カヨさん、聞いて下さいよ。あたしら銀ちゃんと違って大部屋なんですから、でも、言われたとおりやることはやってますよ。銀ちゃんに、男なら風呂付きの部屋ぐらい借りてやれって言われて、風呂付き借りましたよ。こんな狭い台所の隅にあるちっぽけな風呂で、申し訳ないとは思ってますよ。でも、俺にとっちゃ、せいいっぱいなんですよ。カヨさんならわかってくれると思いますが、俺らぶん殴られて五千円、蹴っ飛ばされて八千円ですからね。車は買えませんよ「そういうつもりで、小夏さん言ったんじゃないんじゃないの「銀ちゃんは、会えば『食うもん食わせてるか。栄養つけさせてるか』って言うんです。つけさせてますよ。せいいっぱいのことやってるつもりなんですよ、少ない稼ぎの中で。落っこちたり飛び込んだりもう体ボロボロ詩琳なんだよ。俺の身にもなってくれなきゃ「ヤスさん、しつこいとこなんか、銀ちゃんに似てきたね「カヨさん、そりゃ似ますよ。小夏よりつき合い長いんだから、大切な人なんだから。俺は大好きなんだから銀ちゃんのこと。万が一流産させて、銀ちゃんを悲しませるようなことはしたくないんですよ「あたしたちもう帰らしてもらうよ「ちょっと待ってよ。今日はトメさんに聞いときたいことがあるんだから ヤスは、すごい形相でトメさんをにらみつけ、コップにウイスキーをドボドボついで一気に飲み干した「あんたたち、銀ちゃんに俺のこと告げ口してんじゃないの。最近おかしいんだよ、銀ちゃん、俺を見ると避けるんだよ。思ってんのに会ってくれないんだよ「俺はなにも言わないよ「しかしどうして俺だけ、バッタリ銀ちゃんから仕事こなくなったの「…………「たしかに俺は出産詩琳費用稼ぎ出すために、銀ちゃんの仕事だけ待つってわけにいかなくなったけど、ちゃんと『階段落ち』があるんだからさ「え?『階段落ち』は中止になったんじゃないの とわたしが言うと「バカなこと言わないでくれよ。中止になるわけないじゃないか。『階段落ち』がなかったら、橘が主役に見えちゃうぜ。それでいいのか、トメさん。俺たちがここまで来れたのは、銀ちゃんのおかげだぜ。レコードの話だって立ち消えになったし、『突撃』だって、正月のカレンダーだって、みんな橘にさらわれたっていうじゃねえか!! 大事な銀ちゃんが、橘の脇につかされてたまるかよ「万が一のことになったら、あたしはどうなるの「心配するな、手は打ってあるよ。そうそうカヨさん、『階段落ち』でうまく死んだら、トメさん名義で入ってる保険金三百万円そちらにいくからね。そのかわり、香典はふんぱつしてよね、小夏の出産費用になるんだから「なによ、三百万って!「『階段落ち』やる日のセットの前には、香典を入れる箱を用意しといて、香典をもらうようになってんだよ。だから、親しい人には、その香典のお返しに生命保険に入っておくってのがしきたりになってんだよ トメさんたちが帰ったあとも手帳を取り出し、保険金が入る人達の名前と金額をこれみよがしに読み上げた「銀ちゃんとおまえの名義で一千万円ずつな。どうだまいったか「はっきり言うけど、あたしは、もう銀ちゃんに、これっぽっちも未練はないの「会ってんだろ、ちょくちょくおまえら「会ってないよ「ま、いいよ。だけどやっぱり、銀ちゃんに仲人やってもらいたかったよなあ「バカなこと言わないでよ「どうしてバカなことなんだ、おまえだって、銀ちゃんとまんざらの仲じゃなかったのに。いいんだよ、俺はお飾りで。いつだって、俺は銀ちゃんが来さえすれば部屋に二人っきりにして、外で週刊誌の記詩琳者見張っててやるのに「いいかげんにしてよ「それに、なんで銀ちゃん、新婚旅行についてこなかったんだろうね「常識で考えて来るわけないでしょう「常識なんて言葉、おまえから聞くとは思わなかったよ「今さらそんなこと言われたって、もうあたしはあんたの女房なんだから「おまえが言ったのか、ついて来ないでって「言ってないわよ「おまえが、なんか銀ちゃんに嫌われるようなことしたんじゃないか「嫌われたってもういいわよ「前は電話があるとホイホイ出てったじゃないか。会ってなにしてたんだ。会っておまえら、なに話してたんだ「昔の話でしょ「聞きたいんだよ「お茶飲んでただけだよ「まさか ヤスの卑屈な、いやらしい笑いに
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