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立正大学vs関東学院大学[1-2部入替戦](2013年12月8日)の感想

2013-12-16 00:21:24 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


今シーズンもついにこの日がやって来た。大学ラグビーファンの注目は奇しくも同じ日に2ndステージが始まる大学選手権に集まり、入替戦はその裏番組にすらならないような状態。

でも、関東リーグ戦Gの永久サポートを決めている私にとっては、シーズンの締めくくりとなる2試合の価値はずっと変わることがない。今年で当該リーグの集中観戦が17シーズンを数えることになったわけだが、入替戦を観戦していないのは2シーズンのみ。「勝てば天国、負ければ地獄」の特別な試合であるだけにスリリングな展開になることも少なくなく、印象に残っている試合は数多。「勝つことがすべてに優先される試合」なのに、なぜかそんなことは忘れてしまうくらいに見応えのある試合になることも珍しくない。力の差はあってもチャレンジする側(2部所属校)の方が往々にして志の高いラグビーを見せてくれることが見どころのひとつになっている。

入替戦の(勝ち負けは別にした)着目点は他にもある。勝ったチームも負けたチームも、ここからが来シーズンに向けての出発点になるということ。前向きに捉えれば、ここで一戦を交えたチームは大学選手権に出場しているチームよりも一足早く来シーズンに向けたスタートが切れることになるわけだ。当該チームの関係者ではないから気楽なことが言えるのだが、勝敗以外にもいろんな見るべきポイントがあるからこそ、同じ日に秩父宮で試合があっても足は熊谷に向いてしまうのだと思ったりもする。

◆キックオフ前の雑感

第1試合の対戦カードは立正大対関東学院で、昨シーズンの第2試合と同じ顔合わせとなった。ただし、両チームの置かれた立場は去年とはまったく違う。1部昇格(復帰)を狙うのは関東学院の方であり、立正大はチャレンジを受ける立場だ。試合会場に少し早めに着いたので、両チームのアップの状況を観たが、戦う前に勝負は決まっているような印象を受けた。両校の選手の間に体格差があることは両チームの選手達の動きの違いとなって現れている。チーム運営に関して芳しい話が聞こえてこない関東学院の方がどうしても活気に欠けるように見えてしまう面もある。

観客席に座り、両チームのメンバーを確認する。立正大はベストメンバーでとくに両WTBはリーグ戦G屈指のトライゲッター。一方の関東学院は1、2年生が主体、というよりも3、4年生が殆どいないいびつさを感じさせるメンバー構成になっている。チームを挙げた総力戦であるべきはずの入替戦がこの陣容でいいのだろうかとどうしても考えてしまう。2部リーグの最終戦では山梨学院に大敗を喫し、終盤戦の専修大や國學院大との対戦では辛くも勝てたという、ここに至るまでの戦績がいっそう不安を掻き立てる。



◆前半の戦い/フォローの風を得て健闘を見せた関東学院

いよいよ冬本番となった熊谷。赤城おろしの強くて冷たい風がメインスタンドから見て左から右に吹いている。しかしながら、観客席は1部復帰を熱望する関東学院ファンの熱気に包まれている。そんな(寒くても)熱い雰囲気の中、風下に陣取った立正大のキックオフで試合が始まった。この試合で予想された現実的なシナリオは、序盤からパワーに勝る立正大が関東学院を圧倒する展開。実際にボールを持った立正大の選手達の突進を関東学院はなかなか止めることができない。早くもスタンドからは「止めろ!」「止めてくれ!」といった関東学院ファンからの悲鳴に近い絶叫が発せられる状況になってしまった。

関東学院が反則を重ねる中で5分、立正大は関東学院陣22m内(右サイド)でPKのチャンスを得る。ここで立正大はスクラムを選択し、No.8加藤が8単で抜け出してコーナーフラッグを目指して走り、そのまま関東学院のディフェンダー達をかわしてインゴールに飛び込んだ。今シーズン、私が観戦した2試合で初めて加藤が持ち味を発揮したシーン。SOツトネが逆風をものともせず、難しい位置からのGKを決めて立正大が幸先よく7点を先制した。「やっぱりダメか」といったようなあきらめムードが関東学院サイドのスタンドには漂う。

しかしながら、個人能力であっさり点が取れてしまったことで試合は想わぬ方向へと進んでいく。選手達が力の差があると感じた後の選手達の反応は概ね3つに分かれるように思う。あくまでもマイペースを保ち冷徹に自分達の目指すスタイルで得点を重ねて相手を突き放しにかかるか、それとも相手に付き合う形で(気持ちが緩んで)しまうか、あるいは普段はやらない(軽い)プレーを連発してペースを崩してしまうか。立正大の場合は2番目だったようだ。アタックが今一歩ピリッとせずミスを重ねて追加点がなかなか奪えない。関東学院も昨シーズンの終盤に見せたような狭いエリアでの継続のスタイルからは脱してオーソドックスにオープン展開指向で攻める。ただ、どうしても個々の突破力が弱く変化技もないので、立正大にあっさりと止められてしまうのが辛いところ。立正大の方も、体格の優位性からか高いタックルで抑え込む形になってしまうため、かえって継続を許したり反則を犯してしまうという悪循環に陥っているように見えた。

そんな関東学院にとって、トライを取れるほぼ唯一といっていい方法は立正大陣ゴール前でのラインアウト。強いて言えばここが関東学院のストロングポイントになっている。キックオフから強いフォローの風が吹く中で立正が重ねたことから、関東学院に得点のチャンスが次々と生まれることになる。12分、ゴール前ラインアウトからモールを押し込んだ場面はパイルアップとなるが、リスタートのスクラムからオープンに展開してゴール前ラックからSH井上が抜け出しトライラインを越えた。GK成功で関東学院が7-7と同点に追い付く。このトライに勢いを得た関東学院のアタックに対し、立正大が自陣ゴールを背にディフェンスを強いられる場面が続く。いくら風下だからとはいえ、これは立正大にとって誤算だったはず。そして、25分、ついに立正大はラインアウト→モールを押し込まれてトライを献上する。GKは失敗に終わるが12-7と関東学院逆転に成功し、スタンドからも「やれるぞ!」の声が出始める。

しかしながら、そんな歓声もすぐにため息に変わる。リスタートのキックオフの蹴り返しに対するカウンターアタックからのキックは風に乗って伸びすぎドロップアウト。大東大のドロップキックに対して関東学院が仕掛けたカウンターアタックでミスがあり、こぼれ球を拾った立正大のFB吉澤主将に約80mを走りきられてしまう。GKも成功し、関東学院は不運としか言いようのない失点により12-14と逆転される。しかし立正もピリッとせず37分にも自陣での反則→ラインアウト→モールによるトライを奪われる。GKは失敗したが17-14と関東学院が再逆転に成功。後半は風下になる点が不安材料ではあるが、チャンスをしっかり得点に結びつけた関東学院が1部復帰への望みを繋ぐ形で前半が終了した。



◆後半の戦い/最終的にスリリングなスコアとなるも立正が残留を決める

風下とは言え、立正大が体格面の優位性を活かして確実にボールを運べば大量リードでの折り返しも可能のように見えた前半の戦いぶり。後半は風上に立つという安心感があったのかも知れないが、いつでも逆転できるという気持ちが緊迫感を欠いたプレーに繋がったのかも知れない。しかし、僅か3点とは言え逆転を許してしまった展開に、ハーフタイムで首脳陣から相当にネジを巻かれたはず。後半こそは1部で戦い、2勝を挙げた力を見せてくれるものと立正大ファンではなくても考える。これは万が一にも負けてはいけない試合なのだ。(しかし、首脳陣が授けたのは驚きの作戦?だった。)

後半のキックオフは風下に立った関東学院。どうしても相手キックで自陣での戦いを強いられる時間帯が長くなる。また、キックでエリアを取ることも難しいため、オープン展開でのラインブレイクが期待出来ない状況ならFWのサイドアタックで(ラインに立つ選手の人数は減っても)地道に前進を図っていくしかない。5分、立正大は関東学院陣22m付近で得たPKのチャンスでラインアウトからトライを取りに行くが関東学院が反則。今度はショットを選択してツトネがPGを決めて17-17と試合を振り出しに戻した。結果オーライだが、このあたりちょっとちぐはぐな感じも。

15分に立正大は関東学院陣22m内でのスクラムからオープン展開でボールを左右に動かし、SOツトネがトライラインを越えた。GK成功で24-17と立正大が再びリードを奪う。さらに28分にも立正大はPGで3点を追加して27-17とリードを安全圏に拡げる。しかし、何か物足りない。有利な風上に立っているのに立正大が爆発する気配が殆ど感じられないのだ。その原因かどうかは定かではないが、立正大が見せた不可解とも言えるプレーがそんな印象を抱かせたのかも知れない。

「ラインアウトからモールを形成して押し込む」が関東学院のほぼ唯一のストロングポイントであるゆえに、立正大もその対策を考えていたはずなのだが、その答えが「コンテストしないこと」というのが意外だった。モール対策で競らないことはけして珍しいことではない。しかし、体格面で優位に立っているはずのチームがノーコンテストなのは解せない。あくまでも個人的な見解だが、たとえ自陣を背にしていてもラインアウトは競るべきだと思っている。何故かと言えば、プレッシャーをかけることで相手がミスをしてくれる可能性があるから。ラインアウトでリフティングが認められるようになってからとくに感じることは、大学ラグビーではラインアウトの技術が低下傾向にあること。統計的な裏付けデータを持っているわけではないが、オーバースロー、ノットストレートにノックオンとため息を誘う場面がとみに増えてきているような気がする。

競らないだけならまだしも、関東学院がモールを組んだときに立正大FWがコンテストしなかったのにはびっくりだった。かつて慶應が試み、流経大が大学選手権の明治戦で採用した(不評をかった)あのプレーだ。ラインアウトの後、対峙する両チームのFWの選手の間に「空気」しか存在しないと言ったらもう十分だろう。相手のオブストラクションを誘う高度な戦術ということになっていたらしいのだが、どうしても最初はディフェンス側が後ろに下がる形になるので「コンタクトを避けた消極的なプレー」に見えてしまう。おそらくベンチからの指示なのだろうが、入替戦でこんなプレーを観ることになろうとは。

立正大が攻めきれない中で、30分以降は逆転、そして1部復帰を狙う関東学院が立正大陣で攻め続ける展開となる。風上で10点リードしている状況とは言え、立正大は2つ続けてトライを取られたら同点でもトライ数の関係で2部降格となってしまう。立正大ファンにとっては「縁起でもない!」と言いたくなるような趣旨の場内アナウンスが行われる中で、関東学院サイドの応援のボルテージは上がっていく。そして遂に39分、関東学院のSH高木がラインアウトからこぼれたボールをインゴールで押さえることに成功する。GKは失敗したが22-27と関東学院の逆転昇格が視界に入ってくるところまできてしまった。立正大が何とか関東学院の最後の力を振り絞ったアタックを凌ぎきって残留を決めたが、後味の悪さが残った試合だった。



◆1部残留は決めたものの課題山積の立正大

序盤の圧勝ムードは何処へやらで、最後はスリリングな展開になってしまった入替戦の第1試合。結果オーライとは言え、立正大にとっては来シーズンに向けた課題を残した形での締めくくりとなってしまった感がある。端的に言うと、このままでは来シーズンも上位浮上は難しいと言うこと。かつて1部で戦っていたときに一番感じたことは、とにかく大人しいチームと言うことだった。もちろん、闘志が感じられないという意味ではなく、自ら仕掛けていく積極性に欠け、ゲーム終盤になってエンジンがかかった頃には既に勝敗の行方は決まっているというような戦いに終始していた感があった。今回の1部復帰でチームカラーが変わったことを期待したわけだが、この日の入替戦の戦いぶりを観る限り、チームとしての進化は見られなかったと結論づけざるを得ない。この試合の後で試合をした山梨学院の戦いぶりを観たら安閑とはしていられないはず。一皮むけて欲しい。

◆1部復帰までの道のりは険しい関東学院

ファイナルスコアは僅か5点のビハインド。1トライ取れば同点でも1部復帰という結果を見れば関東学院の(大学王者に輝いたチームに対しては失礼だが)大健闘と言っていいだろう。しかし、率直に言って、厳しい言い方になってしまうが関東学院が勝てるという感じはまったくしなかった。春口監督が「ミスで負けた」というコメントを発していたようだが、実際に試合を観たものとしては違和感を禁じ得ない。メンバー構成が1、2年生主体となっていることの意図は不明だが、「将来性」を考えてのものであるとしてもチームとしての伸びしろには疑問符が付く。

それよりも、一番不思議に感じたことは、関東学院を応援する声は部員達からよりもスタンドを埋めた熱心なファンからの方が圧倒的に多かったこと。関東学院サイドで観戦していたにもかかわらず、チームメイトを熱心に応援する声があまり聞かれなかったのは気のせいだろうか。そう感じたのは、入替戦の2試合目では拓殖大も山梨学院もピッチ上で戦うチームメイトを力一杯応援していて、それは感動的でもあったから。おそらくこれから拓殖大はチーム一丸となって1部復帰を目指すことになるだろう。残念な敗戦には違いないのだが、関東学院の1部復帰への道のりはより険しくなったような気がしてならない。

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