19歳の時に訪れたエジプト・ギリシャ・フランス・・・そしてシナイ半島
それまでにも「現在」を生きている心地の薄かった自分が
当時1ドル260円の時代に行かせてもらった学生旅行。
空港を乗り継いで降り立ったエジプトは、過去の栄華を極めた頃の名残も留めぬ廃墟の中を歩くよう。
どうしても拭えなかった「自分はここを識っている」という感覚。
ピラミッドの玄室、引っ張られるような感覚、傾く頭、
狭い石回廊、
神殿のレリーフ、
どれもが何かを伴って迫ってくる感覚、
そして耳に残っているのは「ハトシェプスト」・・・
そしてアスワン・ハイ・ダムを抜け、貸切バスを走らせ辿り着いたシナイ半島。
見上げたシナイ山の頂上には、光る夕日を背景に象られた修道院の黒い影。
確かに見える十字架・・・
ギリシャの紺碧の海・・・
フランスの石畳・・・
ルーブル美術館の回廊・・・
「やっとここまで来たんだ」という腑に落ちる感覚と
なぜ「やっと」なのか、問うてもわからず・・・
帰りの機上で止まらぬ涙の訳を、自分自身がわからぬもどかしさ。
無力感とあの諦観はなんだったのだろう・・・
きっと遥か以前からプログラムを組んでいただろうことに気付くのは
まだまだ先のこと・・・
それでも確かにここから内観は始まっていた・・・