あべっちの思いをこめた雑記帳

生まれて初めて

 

 初めての孫が誕生日を迎えたとき、みんなでお祝いをした。誰もがいい顔で、お酒を飲んだり、いろんなごちそうをいただいたり。みんな楽しそうな特別顔で。
 でも、そうじゃない人が一人だけいた。当のご本人。生まれて初めての誕生日なんて、誰でもそんなところだろうと思った。

 その時から5年。
 あと半年での入学式が待っている。最初はきっと、親と一瞬離れただけでも泣くだろうなとその時は思った。でも、中学や高校の入学式は泣くはずもない。二度目、三度目は慣れもあるが、それより本人の成長の方が勝る。

 それからさらに2年。
 今日は8回目の誕生日祝い。
 いずれはきっと好きな人ができることだろう。恋は何度でも可能だけれど、初恋だけは誰でも一回。もしそういう初恋経験のない大人の人がいたら、少しだけかわいそうな気がする。

 そして、成人式は誰でも一回限りである。でも私が出席しなかったように、やむを得ず出られなかった人や、出たくない人もいるんだろうなと思う。

 その後待っているのが結婚式。早かれ遅かれ、たいていの人はそれをとり行う。なかには式をやらない人や、ずっと結婚をしない人もいる。そして、二回三回とやる人も世間にはいるようだ。生まれて初めてに比べて、感激はどうなのだろうとついよけいな心配をしてしまう。

 誰もが迎える「死」。死にかたは人それぞれだけど、年をとってくればくるほど自分の最後の姿には戸惑う。そういう本を読んだり、お墓を考えたり、人によっては生前に戒名を考える人もいるという。みんな生まれて初めてのことだから。
 そのそれぞれの初めてのことが、自分の人生に幕を降ろすとき、「良かったな」と思えるものであればそれでよい。

 今日はその孫の8回目の誕生日だ。

      
                    「つれづれ(119)生まれて初めて」

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