小さい頃からカレーライスが好きだった。特におふくろの作った味が一番の好物であった。どんな一流の店でも、その味にはかなわない。子供心にそう決め込んでいた。
あまり食料のなかった時代ということもあるが、それは別にしてもあの頃の味は格別であった。
そして大人になってからのわが家のカレーライスも、小さい頃の母の味に負けず劣らず、これまたうまい。カレーライス好きはおそらくこのまま一生続くのだと自分では思っている。
カレーライスという意味を調べてみる。
昔からそれは百も承知なのだが、実際に書物などではどのように説明されているのか。カレーライスとパソコンにインプットするとどんな意味合いになるのか、なかばドキドキ感をもってエンターキーを押してみる。
肉野菜を炒め、カレー粉などで味付けをして煮込んだものを、飯にかけて食べる日本の料理。インド料理を元に、イギリスで生まれたと書いてある。明治時代に日本に伝わり、それが日本で独自に変化したとなっている。
へえ~。インドが発祥で、それから日本に入ってきたとばかり思っていたのは完全に間違いらしい。今ではラーメンと並んで、日本人の国民食と呼ばれている。そういえばカレーの嫌いな子供を探すのはなかなか手間がいる。
日本で初めて書物にカレーと出てくるのは、福沢諭吉の1860年に発行した「増訂華英通語」という本らしい。自分で思っていたよりもカレーの歴史はわりかし古いのだと納得する。
「カレーライス」という本を昨年末に読み終えた。そして今は、NHK国際放送が選んだ日本の名作「1日10分のしあわせ」という本を読み始めた。双葉社発行の新しい本である。
カレーライスの本は一気読みをしてしまったが、この1日10分のしあわせにも同じ物語が一つだけ載っている。「バスに乗って」という短編だ。読んだ後にこの本の背景をいろいろ調べたくなって、あれこれ時間を費やした。
重松清が小学校の教科書のために書き下ろした作品なので、ほとんどの人はそのわずかなページをおそらく一気読みしてしまうだろうと思う。そして読後は、ジーンときたり、主人公の少年と父親に感情移入してしまったり、心がほんわか温かくなったり、癒されたり、人によっては涙を流すことがあるかもしれない。
特に私は「バスに乗って」と、1日10分のしあわせには掲載されてないが「ドロップスは神様の涙」が好きで、何度も読み直した。
母を思う男の子の心情、それをやさしく見守る運転手の想い、保健の先生の思いやり・・・・。絶妙のシーンに深く心を寄せてしまった。
世の子供たちだけでなく、子を持つお母さんやお父さんにも一読していただけたらと思わずにはいられない。
みんながこういう温かい心を持ち合わせたら、イヤな事件や、ギスギスした社会はなくなるだろうとさえ思った。
「つれづれ(67)カレーライスのバスに乗ってを読み終えて」