少し前に、自宅から少し離れた土手を訪ねた。葦が生い茂り、季節は初夏をとうに終え、夏に突入していることをその姿からはっきりと読み取れる。空は高くくっきりと、しかもどうだと言わんばかりに雲が美しい姿を見せている。川の水はゆうゆうと流れ、そのうわべを車が忙しげに通り抜けていく。
草むらに目をやれば蚊帳のような草が我が物顔のように幅をきかせている。夏も今が真っ盛りだというのがその光景からも一目瞭然だ。
この蚊帳のような植物は今の時期から9月いっぱいくらいまで野道や畦道や土手などでしばし目にすることのできる、昔からある夏草。その名を「アゼガヤツリ」と呼ぶが、家の近くでも見ることのできる季節の草花の一種だ。そしてこの背丈は30~40cmもあり、わりとしっかりした形をしている。私はこの夏草を見るとなぜか堀明子さんの「花火草」を思い浮かべる。
彼女は詩人で、神奈川の人。あと4ヶ月ちょっとで昭和から平成に移るというその夏に、わずか16歳という若さで事故で他界された。生きていたなら素敵な詩をもっともっと書いてくれたろうなと心底から思う。そう思いながらまた目の前の夏草を見つめている。
それが「アゼガヤツリ」だということは誰の目にもわかるようなふうに繁っている。と同時に私は「花火草」という名でもう一度呼んでみた。
11日の彼女の命日はもう目の前までやってきている。
「つれづれ(114)夏草にもいろいろあるけれど」