「夜間中学校と教育を語る会」公式ブログ

夜間中学校と取り巻く環境を語る会です!

本日要望書を提出しました。

2024年06月27日 20時54分59秒 | 要望書・署名
 
  


                             2024年6月27日
東京都教育委員会教育長    
浜佳葉子様
都内中学校夜間学級および中学校通信教育課程
設置区市教育委員会教育長 様
                            夜間中学校と教育を語る会 共同代表 庄司匠
                   〒124-0005 東京都葛飾区宝町1-12-1-307 電話 080-5913-8287

都内の公立中学校夜間学級および中学校通信教育課程の教育を守り発展させるための要望書

 日頃から夜間中学および通信制中学に関して温かい施策を実施してくださり心から感謝申し上げます。
 2023年3月14日の東京都議会文教委員会において東京都教育委員会の地域教育支援部長は「都内には、義務教育の機会の確保を図るため、神田一橋中学校通信教育課程や八つの中学校夜間学級が設置されており、学齢を超過した義務教育未修了者の方等に対し、就学の機会が提供されております。」と答弁しています。ここに示されている、現行の夜間中学や通信制中学が設置されている目的が義務教育の機会の確保を図ることにあるという認識はたいへん重要です。義務教育機会確保法にもとづいて文部科学大臣が策定した基本指針においても「夜間中学等における就学の機会の提供等については、義務教育未修了者等が義務教育を受けられる機会を得られるよう、夜間中学等の設置の促進に取り組むとともに、夜間中学等における受け入れ対象者の拡充等を図る。」と明記しています。また、同じ基本指針の中で「既設の夜間中学等における教育活動の充実が図られるよう、個々の生徒のニーズを踏まえ、小学校段階の内容を含め生徒の年齢・経験等の実情に応じた教育課程の編成ができることを明確化するとともに、必要な日本語指導の充実を図る。」とも明記しています。これらの方針に沿った教育行政および教育活動が求められているという観点に立って、都内の公立中学校夜間学級および中学校通信教育課程の教育に関して以下のとおり要望します。
 ぜひ深く検討したうえで、施策に反映されるようお願いします。

                       記
[A] 公立夜間中学の新規開設について
1. 東京都内に公立の夜間中学を新規に開設してください。 
 [理由]昨年度の回答では、中学校夜間学級を設置する根拠が学校教育法施行令第25条第5号の「二部授業」にあるという理解のもとに、夜間学級は設置者である区市町村の任意の判断で設置されるものである旨が示されています。しかし、同施行令は政令であり、これよりも法律である義務教育機会確保法の要請の方が優位します。同法では、その第3条第4号前半において「義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者の意思を十分に尊重しつつ、その年齢又は国籍その他の置かれている事情にかかわりなく、その能力に応じた教育を受ける機会が確保されるようにする」と明記したうえで、第14条において「地方公共団体は、学齢期を経過した者であって学校における就学の機会が提供されなかったもののうちにその機会の提供を希望する者が多く存在することを踏まえ、夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。」と規定しています。2020年国勢調査の『都内全区市町村義務教育未修了者数』の一覧表データ(別添)を全自治体と共有し、このデータや交通の便などを考慮したうえで、都内に新たな公立夜間中学を設置することを各自治体とともに検討してください。とくに特別区の北西部、多摩地区の東部および南部などは重要な検討対象になりうると考えます。

[B] 都境・県境を超えて夜間中学入学を可能とすることについて
2. 町田市、府中市、多摩市、狛江市、調布市、稲城市など小田急線から遠くない都内住民が神奈川県相模原市立大野南中学校分校(夜間学級)に入学できるように、神奈川県教育委員会および相模原市教育委員会と協議してください。
 [理由]昨年度の回答では、入学の許可については、中学校夜間学級を設置する各区市町村教育委員会において判断されるものである旨が示されています。最終的判断に関して言えばそうであっても、検討を促すための協議を東京都と相模原市の間ですることは全く問題はなく、むしろそうした柔軟な対応を東京都が率先して進めることは必要なことです。学習希望者に学びの機会を保障するために、ぜひ東京都から相模原市に協議をもちかけていただきたいです。

[C] 広報等について
3. 義務教育を十分に受けていない人に対しては公立夜間中学や通信制中学といった義務教育のための場が設定されていることを、東京都が提供するテレビ・ラジオ番組で広報してください。
 [理由]東京都教育委員会のホームページにおいて夜間中学の広報がなされていることは重要ではありますが、ホームページ上の情報はすでに関心を持っている人が自らアクセスして見るものという特徴があります。夜間中学の存在を知らない一般の人たちに情報を届けることが重要であり、そのためにはテレビ・ラジオを用いて夜間中学を広報することが求められます。

4. 都教育委員会作成のチラシの文面については、多言語使用を維持しつつ、より明瞭、平易、ウェルカムなものにし、デザインは、ダウンロードして単色印刷するのに適したより単純なものにしてください。
 [理由]チラシは重要な広報媒体ですので、引き続きいっそうの工夫をお願いします。

5. 東京都教育委員会として都内夜間中学を広報するためのポスターも作成して各公共施設などに配布し掲示を依頼してください。また、夜間中学、通信制中学を設置している各区市として、各校の夜間学級、通信教育課程を広報するためのポスターを作成して各公共施設などに配布し掲示を依頼してください。
 [理由]昨年度の回答によれば、前段に要請についてはすでに実施している旨が示されています。ぜひこれを継続してください。また学校現場や設置区市が独自のポスターを作成することも広報として効果があります。

6. 夜間学級または通信教育課程のある各公立中学校において設置してある看板が、明瞭、平易、入学歓迎、多言語表示などの性質をみたすかどうかをチェックし、必要な改修工事を行なってください。
 [理由] 日常的に地域の住民が目にする看板は、その公立夜間中学の姿勢を最もよく表しているものです。事務的で冷たい印象の看板は学習希望者の気持ちに届きませんし、目にした市民からの信頼も失わせることにつながります。

7. 都内の各中学校の教職員に夜間中学の存在を周知し、不登校生徒の進路先の1つとして夜間中学もありうるという認識が教職員に行き渡るようにしてください。また、教員の新任研修や初任者研修の際には、必ず夜間中学を研修内容に含めるようにし、夜間中学の見学も行なってください。
 [理由]義務教育機会確保法にもとづく法律的要請の内容を教員の常識にすることはきわめて重要です。昨年度の回答では後段の要請について、夜間中学を研修内容に含めるかどうか曖昧でした。ぜひしっかり検討してください。

8.都教育委員会のホームページに、公立夜間中学に加えて、自主夜間中学やその他の学習支援組織の情報(本人の承諾を得たうえで、組織名、代表者名、電話番号、活動場所等)も掲載してください。
 [理由]北海道教育委員会のホームページおよび神奈川県教育委員会のホームページにおいては、公立夜間中学に関する情報だけでなく、自主夜間中学の名称、活動場所、代表者名、電話番号等が掲載されています。学習希望者の中には毎日学校に通うことが難しい人もいますし、とりあえず民間の学習支援者に相談してみたい人もいるので、これらの人たちが多様な学びの機会につながれるように情報提供することは非常に有益であり重要です。

[D]  教職員体制について
9. 都内のすべての夜間中学に専任養護教諭を加配配置してください。
 [理由]当会が昨年12月にこの点を特に取り上げて東京都議会に陳情を提出し、今年2月16日の都議会文教委員会において委員全員の異議なしで「継続審議」という結論になったことはご存じのとおりです。「設置区市が夜間中学のために養護教員を採用した場合にはその給与を都が負担するという仕組みを2023年度から導入したので、その仕組みの運用でやっていってほしい」というのが東京都教育委員会の見解でしたが、与党会派も含めて全会派が、改善を求める観点から一致して「継続審議」としたことは大変重要です。ポイントは、このやり方では週5日勤務する養護教員を探すのは実際上無理だということです。実際、都内夜間中学8校への「会計年度任用職員(養護)」週5日配置校は、2023年度3校から2024年度2校へと後退してしまいました。全国の夜間中学の4分の3では専任養護教諭を配置している状況において、夜間中学の老舗ともいうべき東京都においていまだに専任養護教諭を配置できていないことは教育行政の見識を問われるのではないでしょうか。

10. 都内のすべての夜間中学に、スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーが配置されるようにしてください。
 [理由]昨年度の回答において、都の財政負担が増える中でもスクールカウンセラーおよびスクールソーシャルワーカーの配置に努力され、また国に対して補助率の引き上げを要望されている旨の説明がありました。都の努力に感謝しますが、さらなる努力をお願いします。近年は夜間中学にも心身面に課題を抱える生徒が多く入学してくるようになり、また従来から夜間中学の生徒は生活面でもさまざまな困難を抱えていますから、スクールカウンセラーもスクールソーシャルワーカーも夜間中学では絶対に必要です。国は、夜間中学の教育活動充実に向けた総合的支援方策の1つとして、スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの配置の促進をあげ、自治体がそのような施策を採った場合には、報酬・期末手当・交通費等の3分の1を国が補助するとしています。ぜひこの制度を活用して、都内のすべての夜間中学にスクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーを配置してください。

[E] 教育条件について
11. 夜間中学入学相談時に1)週5日毎日出席できること、2)授業開始時刻までに登校できること、3)休日・祝日に学校行事を実施する場合でも参加できること、などを学習者に求める運用を再検討し、入学希望者の入学意思を尊重して、柔軟に受け入れるようにしてください。
 [理由]夜間中学への入学を希望する人たちは諸事情を背負っている場合が多いので、入学相談の段階で何とか学校生活が続くようにとの配慮からであっても、上記のような条件を持ち出すと入学を諦めざるを得ないこともでてしまいます。まず、勉強したい、という願いを持って勇気を持って入学相談をして来たことを最大限にすばらしいことと受け止めていることを本人に伝え、学校生活を続けていく上での困難については個別に粘り強く援助する方向で励ましていただきたいと思います。学習者の実情に即して柔軟に教育機会を保障するという姿勢は、入学相談の時点から強く求められます。
12. 生活困難な夜間中学生のため、「三多摩格差」をなくし、東京のどの自治体に住んでいても年齢制限なく「就学援助」を申請できるよう東京都としてリーダーシップを発揮してください。また、学校教育法第19条および「就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律」が夜間中学生にも年齢制限なく適用されるように、東京都として国に法改正を要請してください。
 [理由] 前段の要請についての昨年度の回答では、「就学援助は、学校教育法により、区市町村にその実施が義務付けられており、その権限と責任において適切に実施するものとされています。」と書かれてあります。ここにいう「その権限と責任」とは「学校教育法第19条が認めるかぎりでの権限と責任」を意味しているようにも読めますが、そうではなく「各区市町村の権限と責任」を意味していると考えなければなりません。前者の意味だとすると、学齢を超えた生徒のために市町村が就学援助をすることは違法であって許されないという判断になりかねないからです。そして、学齢を超えた生徒のために市町村が就学援助をすることは一般的には適法であるという前提に立てば、生徒の教育権を保障する観点から東京都が市町村に対して助言・指導することは義務教育機会確保法の趣旨に沿うものであり望ましいことです。
また、後段の要請についての昨年度の回答では、「法改正については、国において判断されるものである」と書かれてあります。しかし、法改正に向けた重要な情報(立法事実)を東京都などが国に伝えていくことによって、国も法改正に向けた動きを強めていくことになります。夜間中学生にとって年齢を問わずに就学援助を得られることは教育を受ける権利の実質的な保障に直結するきわめて重要な問題です。ぜひ都として国に意見を提出してください。

13. 都内の公立夜間中学のすべてにおいて生徒に無償で給食が提供されるようにしてください。
 [理由] 都内の公立夜間中学のほとんどにおいては既に無償の給食提供が実現していますが、一部ではまだ無償化が実現していません。教育の機会均等(教育基本法第4条第1項)の趣旨からも、すべての公立夜間中学で無償の給食提供を実現するようにしてください。

[F] 生徒の実情に応じた柔軟な教育の実現について
14. 現在日本語学級が設置されていない3つの夜間中学にも日本語学級を設置してください。また、日本語学級での在籍期間については生徒の日本語習得状況に応じて柔軟に運用してください。さらに、教員の日本語指導力向上のため、日本語教育を研究する大学等の専門機関の助言ないし助力を得られる体制を作ってください。
 [理由]生徒が自ら学んでいける基礎力をつけるためには、言語の教育が決定的に重要です。

15. 生徒が生活上の諸事情によってやむを得ず遅刻や欠席をする場合に、これを怠学傾向と捉えるのではなく、事情をよく把握したうえで、そういう事情があっても義務教育内容の学習を実質的に修了するまでに至れるよう柔軟な配慮ある措置をとってください。
 [理由]昨年度の回答では、中学校夜間学級においては、学齢経過者に対し、その年齢、経験又は勤労の状況等の実情に応じて特別の教育課程を編成し、生徒の実態等に応じて指導を行なっており、引き続き、一人ひとりの個性や能力を最大限に伸ばし、誰一人取り残さないきめ細かな教育を推進していく旨の方針が示されています。ぜひこの方針が現場に徹底するようにしてください。

16. 都教育委員会の責任で、都内の各夜間中学に関する実態調査、特に生徒の生活実態調査を実施し、かつその結果を公表してください。
 [理由]国勢調査の結果を見ても、また不登校・登校拒否生徒や引きこもりなどの人数の増加傾向を見ても、夜間中学を必要とする人が減っているとは考えられません。それにもかかわらず、数年来、都内8校の夜間中学の生徒数が大きく減少しています。一層の周知・PRに努めるばかりでなく、入学希望の減少や入学後の退学などの理由を把握し、対応することが喫緊の課題となっています。昨年度の回答では、文部科学省が実施・公表している夜間中学等に関する実態調査等により、引き続き夜間学級の状況について把握していくとの方針が示されていますが、それでは不十分です。今こそ生活実態や学校生活・学習について現在の夜間中学生の声を聞きとることが必要です。東京都教育委員会として全都的にアンケート調査を実施し、対応策に活かすと共に、広くその結果を知らせることによって、都民の草の根の協力が得られ、義務教育未修了者の教育機会の確保につながります。

17. 生徒(とくに小学校段階の内容から学習を始めなければならない生徒)の学習の進展状態に応じて、適切に原級留置きを認めることにより、中学校段階までの学習を実質的に修了できるように配慮してください。
 [理由]とくに小学校段階の内容から学習を始めなければならない生徒は、きわめて丁寧に学習を進めないと内容を理解したり記憶したりすることが難しく、したがって3年を超える在籍を認めるべき場合が少なくありません。

[G] 中学校通信教育について
18. 千代田区立神田一橋中学校の通信教育課程について、以下のとおり要請します。
1)義務教育機会確保法の要請に従って通信制中学を運用できるようにするため、通信制中学の制度を抜本的に改革することを目的とした法改正をするよう、都から国に要請してください。
2)別科生として受け入れるための年齢要件を大幅に下げて、学齢を過ぎていれば足りるとしてください。
3)生徒募集のための広報を十分に行って、通信制中学に関する情報が都民に周知されるようにしてくだ
 さい。
4)生徒の受け入れ体制を充実させるために、通信教育課程の専任教諭を2名配置してください。専任教諭
 2名の配置が難しい場合は、専任教諭1名の他にこれを補助する非常勤教員1名を配置してください。
5)各教科の担当講師を複数名配置してください。
6)面接授業の際の教育支援のために有償ボランティアを受け入れてください。
[理由]1)の理由は要請項目12.の後段の要請についての理由と同旨です。すなわち立法を必要とする根拠となる事実を都から国に伝えることが重要です。2)の理由は、64歳以下の年齢の人の中に、通信制中学で学びたいという希望が現に相当数あることです。3)の理由は、仮に通信制中学への入学要件を現状のまま維持するとした場合でも、入学要件を満たす人にその機会があることを知らせることで学びの機会を逃さないように配慮することがきわめて重要だからです。4)の理由は、義務教育機会確保法の趣旨にしたがって義務教育の機会を保障するためには教職員体制を充実させることが不可欠であり、その中でも最も重要な措置が通信教育課程の専任教諭を2名配置することだからです。文部科学省令である中学校通信教育規程よりも法律である義務教育機会確保法の要請が優位することにここでも留意することが必要です。5)6)の理由は、受け入れ体制を実質的に整えるうえでこれらの措置が必要だからです。

[H] 夜間中学生の進路先の確保について
19. 都立高等学校の夜間定時制課程を閉課程にしないでください。
[理由] 都内の夜間中学生にとって進路先としては都立高等学校の夜間定時制課程がきわめて重要です。立川高等学校の定時制課程が閉課程になるとたとえば八王子市立第五中学校夜間学級の生徒の進路先の選択がきわめて難しくなります。義務教育機会確保法では「その者が、その教育を通じて、社会において自立的に生きる基礎を培い、豊かな人生を送ることができるよう」という目的を設定しています(第3条第4号後半)。したがって、就労に結び付くような教育機会の保障も同法の要請していることであり、高等学校への進学の可能性を確保することも教育施策として要請されています。

[I] 東京都教育委員会と民間支援団体との対話の場の確保について
20. 当会や都内の自主夜間中学などの民間支援団体と東京都教育委員会の夜間中学等担当者との間で定期的な話し合いができるよう場を設けてください。
[理由] 義務教育機会確保法では、教育機会の確保等に関する施策は、国、地方公共団体、教育機会の確保等に関する活動を行う民間の団体その他の関係者の相互の密接な連携の下に行われるようにすること、を基本理念の1つとして掲げています(第3条第5号)。顔の見える関係で、相互に情報の共有を図っていくことは、それが直ちに施策に反映しないとしてもきわめて重要なことです。ぜひご検討ください。
                                                 以上                                              


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