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合唱の指揮を頼まれた(3)

2014-11-03 02:42:50 | 合唱の指揮を頼まれた
PTAと学校への初顔合わせ


6月24日夜

合唱スタッフ(合唱担当と指揮者、伴奏者)、それに学校側の関係者(学校長とPTA会長)との初顔合わせがあった。それまでに、合唱担当夫婦からは、とにかく人の足を引っ張る人たちだ、という触れ込みをされてしまっていたので、かなり緊張して構えて臨んだ。

事前の話と違って、当日はさらに5~6人父兄がわさわさと現れた。聞けば、PTA副会長2人とPTA教養部の面々だという。教養部というのは、PTAの合唱や講演会など文化的な活動を取り仕切る部署らしい。

つまり、合唱担当さんは教養部の中の1人で、「コーラス交歓会」を担当する、ということである。

私に指揮を依頼したご主人からの触れ込みでは、その教養部の人たちが合唱担当の妨害をしているというのである。

意味が分からなかった。

意味が分からなかったから、自分は音楽だけに専念して、合唱担当夫妻の話も半分に聞いて、運営はPTAでやりなさいよ、こっちはそんなことまで知りませんよ、という心づもりでいた。

毎年、合唱担当と技術スタッフと校長と会長くらいしか来ないので、初顔合わせの会場は校長室で済むらしいのだが、今回はやたらと人が来たので、急遽、教室に会場を移して円卓会議のようになった。

そして、PTA会長は欠席した。
会長は整形外科医だそうである。
インターネットで調べてみたら、観光に関わる何か肩書きもお持ちのようだ。

会合では、まず全員が自己紹介して、自分はとりあえず、声楽や合唱の専門家ではなくアマチュアのこじれたやつだということを強調しておいた。

次に校長が成り行きを動かす感じで司会をした。

合唱担当夫婦が前年までの資料や、我々音楽スタッフとの打ち合わせに基いて、父兄に学校で配ってもらう合唱の概要兼案内兼応募用紙のプリントをたたき台と称して会合出席者に配布した。

これに対して、教養部の人たちや副会長たちから質問や突込みが相次いだ。
その光景自体、私は普通に情報に関する議論のように思いながら眺めていたが、後々、本格的に関わるようになって冷静に考えてみると、教養部が何も承知してないことの反映であった。

楽曲については、前の記事で書いたように、例年、結局指揮者が持ってきたものをシャンシャンで決定にするような流れだそうだが、今年は違った。

PTA副会長の1人(仮に副会長Aとしておく)が、プリントたたき台をみて、これはどうやって決まったのかという質問をしてきた。
合唱担当の奥さんが、曲の候補の絞込み、例年の慣例で最終的に指揮者の私が提示したものだということを説明した。

すると、その副会長Aは「実は今日は会長が都合で欠席なんですが、これだけは伝えて欲しい」と伝言を預かってきたと言う。

合唱曲に関しては、PTAの教養講座で京都ゆかりのオリンピック選手をお呼びしたいと思って今動いている。そこで、そういうことに熱心に取り組んでいるということをアピールしたいので、1曲はゆずの「栄光の架け橋」をやりたいと思っているのだがどうだろう、それともう1曲は校歌。

私は思わず「え?校歌?」と半笑いで発してしまった。
副会長Aは瞬時にバツが悪そうな顔に変わった。

ついでなので、そのまま私が続けて発言した。
「校歌は合唱譜があるんですか?あるんなら別ですけど、ないんなら誰かが編曲やらないといけないし、さすがに私にそこまでやる能力も余裕もないですね。」

副会長A「まあ、校歌はさすがに無理としても、栄光の架け橋はPTAとしても会長の強い意向のようですね。」

私は「例年、会長さんの強い意向があれば大体反映されるものなんですか?」
と役員や校長に目を配った。

校長が「まあ会長さんの強い要望ということであれば、それに沿っていくというのはありますね」
と返した。

私もPTA外の者だし、PTAの意向がそうなら、特に反対する理由はない。ただ、プログラムの変更となると、どのアレンジでやるか楽譜を物色してこないといけないし、プログラムの決定や準備作業がずれ込んだりすると思う。
それと、ポップスを今の案からはずした理由などを付け加えて発言した。

そのほかでは、教養部の人が当日の服装が上半身白のブラウス・シャツ、下は黒のスカートまたはズボンという記述に物申した。よその学校では、Tシャツ・ジーンズで振り付けつきでやっているところもある。そうしたことをしてもいいんではないかと。

これは合唱担当の奥さんが、これは例年通りのものを踏襲しただけなので特に他意はないこと、それにこれが無難ではないか、ということを返した。

そのやり取りを聴いて私は、カジュアルにダンスつきで楽しそうなパフォーマンスが許されるのは基本が出来上がっているから動いても歌えるのであって、そうでないのがやったら不細工なだけだよ、などと思っていた。

歌舞伎界で好まれる格言に、型破りとは型が備わって初めてそれに挑めるのだ、というようなのがある。最近では、亡くなった中村勘三郎がTVなどで時々発言していたようなので、知る人も多いかもしれない。そういうことだ。

こうした突っ込み合戦のようなやり取りを聞いていたもう1人のPTA副会長(仮に副会長Bとしておく)が、「これ、合唱担当のほうで事前の相談もなしに勝手に話が決まりすぎているんじゃないですか」とまで言い出した。

これに関しては合唱担当夫妻が、例年の引継ぎ資料を見て段取りしただけだと反論し、校長も「まあ、たたき台なので」と、なだめる状況になった。

そうこうのやりとりがあって、通例20~30分で終わるらしい初会合というやつは、1時間半に及んだ。

終了後の合唱担当の奥さんはすっかりうなだれている。
事後にもう少し詳しくうかがうと、とにかく会長は自分が目立ちたいだけの人らしい。

PTA役員(特に教養部)の中心になっている婦人たちは同じマンションに住んでいる別のPTA役員らとお茶会仲間で、楽しみ半分に他人の仕事の邪魔をしてやる相談をしているらしい。

まるで昭和の社宅いじめモノのドラマが現存しているようである。
加えて、自分たちが各担当の事務仕事に巻き込まれて仕事をしなければならなくなるのが嫌だから、その担当の仕事を妨害しているらしい。

本当にそうなら、滞った結果は全部自分たちに返ってくると思うのだが、よく理解ができない。

こういう背景があるので、これまでも合唱担当の奥さんは相当に妨害にあってきたらしい。

だから、PTA役員の発言はいちいち真に受けないで放っておいてほしい、合唱参加者が好き勝手な要望を出してくると我々技術スタッフにも迷惑だと思うから、そういうのは全部合唱担当を通して伝えるようにするので、我々には音楽のことに専念して欲しい、というというような話があった。

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