=== つづき ===
7月28日、3時起床。何も見えないが小雨が降っている。昨晩作ってもらった朝食を早いけど食べよう。雨の中で食べたくはない。
4時出発、ヘッドランプに雨が光る。寒くはない。
濡れた岩場を鎖にすがり登る。軽装の組がかわせるところで追越していく。飯前に奥穂のピストンだろう。
5時奥穂高岳に着く。明るくなりヘッドランプは不要だ。雨は止んだが、ガスで何も見えない。
前穂をとるのか西穂をとるのか。5時15分、リーダーの決断は西穂。私はラストにつく。
マークを目印にすすむ。視界がないから本で見た岩稜の恐怖感は全くない。
でもすぐにこんな壁になった。でもガスで下は見えないが怖い。
さらに、馬の背のナイフリッジにかかるとすがるものはない。
ここにいたっては、もうどうすりゃいいのさ思案橋どころではない。必死である。
取付いてからまだ30分も経っていないのに、この先どうなるの。当初計画では単独行でやるつもりでいたが、こりゃ1人ではこの恐怖心には勝てない。
振返ればこんな岩稜か。
次から次へと岩稜の上り下り、岩壁のトラバース。
ジャンダルムの基部を左に巻いて、
7時45分ジャンダルムのピークに立つ。視界はない。馬の背はジャンダルムの比ではなかった。それとも慣れてきたのか?
ジャンダルムを下り天狗のコルにむかうところで、ラストからトップに立つ。ちょっと緊張ーる。ここから写真が尻撮りから面撮りに。
しばらく緊張がゆるんだかと思うと、こんなところが出てくるのがこのルートだ。バランスを崩せば滑落だ。
10時10分天狗のコルで小休止。西穂との中間ああたりか。
天狗のコルからは垂直な岩場をクサリにすがり登る。
11時10分天狗ノ頭に着く。
天狗ノ頭から長いクサリを下る。長いだけで緩やかだ。息抜きの場があっても良いだろう。
登返しから振返ると天狗ノ頭のクサリ場はこんな感じだ。このあたりで時々雲が切れてきた。
間ノ岳にむかってまた垂直の岩場にクサリです。
12時55分間ノ岳ピークに到着。道標は無い。
間ノ岳を下り赤石への登返しから眺めれば、よくこんなところを下ったと我ながら寒心。視界が開けてくるのはありがたいが、良し悪しだ。
上高地が真下に見える。
15時20分ついに西穂高岳が見えた。奥穂から10時間です。皆さーん、ちょっと掛かり過ぎですよ、超過料金取られますよ。
来し方を眺めれば、雲も切れ縦走路の岩稜が。山場は過ぎたと感慨に浸る。
15時45分西穂山頂に着く。難所は無いが気を緩めずに慎重に下ろう。
すすむ方向にその名の通りピラミッドピークが目立つ。
17時10分ピラミッドピーク通過。
17時45分に西穂独標に着く。夕闇迫る時刻です。
19時5分灯のともる西穂山荘に着く。15時間の行程、お疲れ様でした。
夕食はハンバーグで食欲旺盛。
夜は蒸し暑さと、いびきで悩まされました。
山小屋で眠れない人へ。疲れてくれば自然に眠れるようになりますよ。
翌7月29日朝、新穂高温泉へ下り帰る人、焼岳から蝶ヶ岳へ行く人と分れ、次の不帰嶮にむかい9時30分上高地へ下りて松本に出る。河童橋には早くも人出が。