たいほう2

いろいろな案内の場

非線形な世界 その5 -ダンマームのマングローブ―

2023-05-01 14:40:00 | 日記
 ダンマームに着いたのはもう夕方であった。ダンマームはリヤドより埃っぽくない。多分海岸に近いためだと思う。早速海沿いに行く。目の前はペルシャ湾である。その海沿いにはマングローブが生い茂っている。しかし東南アジアにあるマングローブと比べとても立派とは言えない。

ダンマームの海岸に茂るマングローブ

 サルタンさんはマングローブを見つけると興奮しはじめた。マングローブ林の中を歩く若者たちに何をしているのか訊く。すると魚捕りをしていたとのことである。それを聞くとサルタンさんはまた興奮する。マングローブ林の中は魚介類がたくさん生きている。このマングローブを守らねば、という思いが彼を興奮させるのだろう。

 翌日訪れた先はサウジアラビア東部地区の市役所であった。

東部地区の市役所

 ビルの中に入るとサルタンさんは歩きながら私にお説教口調で、「自信たっぷりの態度で、質問に対しては分からないとは言うな」と言う。これから何が起きるのか。扉に市長室と書いてある部屋の前で立ち止まった。そして私を廊下に残し、部屋に一人で入っていく。扉の隙間から若い紳士が見えた。サルタンさんは中でその紳士と何やら話をしている様子である。しばらくして部屋から出ると私に「少し待とう」という。
 廊下で3-40分待ったか。すると中にいた紳士が現れ、私たち二人を部屋に案内した。中に入ると数名の紳士がいる。中央には市長らしき人物が座っていた。
 サルタンさんはアラビア語で、今まで見せたこともない真剣な表情で話を始めた。暫くして私に説明するよう促す。
 20分ぐらい都市の緑化構想について話をした。時々サルタンさんがアラビア語で補足説明を加えた。私の説明が終ると質問攻めにあった。「自信たっぷりの態度で、質問に対しては分からないとは言うな」というのはこの時なのだと悟った。分からないことでも、分かったふりをして答えた。
 質疑が終わると、部屋の外で待つように言われた。サルタンさんと部屋を出、また数十分廊下で待った。再び部屋に呼び戻された。今度は部屋の中には市長らしき紳士だけであった。どうやら部屋と部屋の間は廊下に出なくても行き来ができる構造になっているようである。市長らしき紳士はサルタンさんに笑顔で話をする。するとサルタンさんは両腕を広げ、その紳士と抱擁を始めた。次は握手攻めである。しばらく握手をしたまま話を続けていた。
 部屋を出るとサルタンさんは有頂天である。我々の緑化構想が認められたとのことである。早速お祝いに行こうと言う。

(つづく)


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