◆ アセスデータ改ざん疑惑の栗子山風力発電計画
報道によれば、山形県米沢市の栗子山で、事業者が計画する風力発電(10基)を巡り、山形県は知事意見を経済産業省に提出し、風車建設予定場所の近傍がイヌワシの営巣地となっている可能性が高いとして、生息環境保全の必要性から、事業中止を含めた計画の抜本的見直しを求めました。事業者はイヌワシの営巣が確認されたのは10キロ離れた場所と主張していたが、山形県が昨年12月から2月にかけて実施したイヌワシ生息調査で、巣材やエサを運ぶ様子を確認、事業計画地近傍で別のつがいが営巣を行っていると推定した。事業者による生息状況やバードストライクの予測は信用するに足らないと判断したようです。また、建設工事に伴う土石流や地滑り、雪崩などの誘発、さらに低周波音調査における地形や風の強さ・向きの影響を考慮していないと指摘している。
◆ 福島県の風力発電とメガソーラー計画
web報道によれば、会津若松市の背あぶり山(標高863m)の尾根に計画されている風力発電計画(50基以上)を巡る問題については、これまで地元が、会津若松市長に反対の意見を示すよう再三申し入れを行ってきた。さらに住民は風車の建設により水源や野生動物のすみかが失われるだけでなく、土砂災害のリスクもあるとして、会津若松市が事業者に計画の白紙撤回を提言するよう改めて求めている。建設に反対する会の代表は、「全国的にも分別のない計画が中止に追い込まれ、白紙撤回している事業が多くあり、自然が破壊される建設は遺憾であると、市から事業者に言ってもらいたい」と話している。
★イヌワシ研究会員が県に要望書を提出:事業計画地の一帯には少なくとも8ペアのクマタカが生息。絶滅危惧種クマタカに悪影響が懸念されるとして、環境影響評価の停止を求めた。「現状は影響を判断できないのに、手続きを進めるのはおかしい」と訴えている。
一方、福島市の先達山(せんだつやま 標高:635m)のメガソーラー計画では、市民団体が県知事宛に要望書と反対署名を提出した。市民団体はこれまでにも建設中止と周辺の景観保全や、工事を規制する条例の制定を求めている。周辺の住民によると、この現場では大雨による土砂の流出に対策がとられたが、8月下旬の大雨でも泥水が周辺に流れ出たという。「吾妻山の景観と自然環境を守る会」の会長は、「この問題を放置すれば私たち福島市民は将来どうなっていくのかという、大きな問題を抱えている事業だ」と指摘。メガソーラーを巡っては、福島市が禁止区域の設定などで、新設へのハードルを上げる条例を制定すべく審議を始めている。
◆ 響灘洋上風力発電(25基)は、20年間野鳥への影響の責任を負うことになる
福岡県北九州市においては、これまで若松区の響灘埋立地の風力発電事業の計画(比較的小規模ですが)に対して意見書を出し、野鳥への影響軽減を求めてきました。しかし、10年以上経った今でも、実効性ある対策が実施されていないために、衝突死と推定できる野鳥の死骸が発見され続けています。(死骸調査の結果を教えていただいている事業者さんには感謝しています)
響灘の洋上風力発電は野鳥保護団体の力及ばず、建設工事が始まり、2025年度から順次運転が始まるようです。その規模はこれまでの風力発電とは比べものにならないような大規模な事業です。日本野鳥の会北九州支部からの「建設の見直しを求める要望書」、「風力発電が野鳥に与える影響を考える会北九州」からの「建設中止を求める要望書」と「建設反対署名」を事業者の「ひびきウインドエナジー」に提出しましたが、事業者に軽視されたのか何の反応もなく、実効性ある野鳥対策を実施する予定もないようです。25基の風車がすべて海上に林立すれば、どれほどの野鳥が風車の羽根に弾き飛ばされ、叩き落されることでしょうか。考えただけでも恐ろしくなります。さらにその被害実態は海上のため、ほぼ把握できず、事業者は形ばかりの事後調査で「影響はやはり小さかった」と胸を張るのでしょうか。数年後?白島で集団繁殖するオオミズナギドリが激減したとき、生物多様性の重要性を掲げている北九州市は「洋上風力発電の影響ではない!」とでも言うでしょうか。事業を誘致した手前、その責任を20年間負うことになるでしょう。そんなことよりも、2025年度から順次運転開始する洋上風力発電に対しては、野鳥への被害について追及の手をゆるめずに、保護団体らしい行動をしていかなければなりません。
【追記】風力発電先進国のヨーロッパでは、建設適地のゾーニングが積極的に実施され、野鳥への影響調査も大がかりに行われているようです。野鳥への被害を減らすために、最大4マイル(約6.4キロ)先で野鳥の群れを検知し、風車の回転を停止させるレーダーが開発され、さらにロビンレーダー社が開発したレーダーは、驚くほど小さな群れでも検知し、AI種識別技術と組み合わせることで、風車の回転を停止させる。オランダの沖合風力発電でデビューするという。(引用:カールトン・リード2024.08) ところが日本ではどうでしょうか。“たかが鳥のために費用も手間もかけられない” とばかりに、ヨーロッパの対策事例には見向きもせず、ひたすら政府の大号令のもと、事業者は有利な補助金と利権を求めて、分別のない計画をどんどん出し、計画地の地元住民や自治体の反対を受けるや、紛糾させるだけさせて、さっさと撤退するという無責任極まりない事例が少なくありません。翻弄され、しこりが残った地域のことなどおかまいなしです。政府による改善策は期待できないため、当該自治体が連携して、規制を強化しなければなりません。
このブログをいつも見ていただいている方からコメントが寄せられました。「CO2吸収源の森林を大規模伐採して、20年ほどしか稼働できない今の再エネ事業は、トータルに見ればCO2削減どころか増加させていることは明らかです。再エネ政策は、再エネ賦課金を国民から集め、これを発電事業者にFITという形で支払うことで建設事業を活発化する経済政策であり、環境政策ではありません。こんなことを続けていると、地球の環境はずたずたになってしまいます。経済政策としてもFITまたはそれに類似した補助金制度が終了すれば成立しなくなります。国際情勢が不安定な中、再エネ政策は見直される時期に来ているのではないでしょうか。」
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