北九州の洋上風力「20年間で売電3600億円」
報道によれば、建設が進んでいる北九州市若松沖の洋上風力発電「北九州響灘洋上ウインドファーム」は、2025年度中を見込む営業運転の開始後、20年間で売電収入が3600億円にのぼるとの見通しを明らかにした。事業の収益性に自信を示したという。
年間180億円・・・設置予定数が25基なので、1基当たり約7億/年、月に6千万円......。建設費、維持管理費、出資企業への還元などを差し引くと、儲けはどのくらいでしょうか。企業ですから当然収益が見込めないと事業は続けられないでしょうが、野鳥の被害予防に儲けの一部を使うつもりは毛頭ないのでしょうね。環境アセスで野鳥への配慮を述べていますが、結局「たかが鳥のために」ですかね。
事業を誘致した北九州市も、市の政策として掲げている「低炭(脱炭素)」の成果として、この洋上風力発電の運転開始を成果として誇るでしょうが、一方で市の方針として掲げている「生物多様性」「自然環境保全」に及ぼす影響については触れようとしていないようです。公約違反にも等しいです。市内の自然環境保全は二の次、三の次ということでしょうか。市民として情けないです。
ところで、この売電収入における稼働率(設備利用率)をどのくらいに想定しているのでしょうか。通常、風力発電は平均30%ほどの稼働率と言われていますが、現在白島沖4kmで実証実験中の浮体式洋上風力発電の稼働率は26%程度に留まっているとのことです(NEDO2023年度成果報告会資料より)。平均風速7.3m程度のこの海域であるなら、理想的には35%近い稼働率であってほしいでしょうが、近年の異常気象を考えると、猛暑による発電機の自動出力抑制や、台風の頻発、落雷による事前停止、さらに電力会社による出力制限等を想定したうえでの3600億円でしょうか。しかし、事業者は私たちが毎月払っている再エネ賦課金のおかげで成り立つ事業であることを少しは意識しているのでしょうか。意識しているのであれば、海上で風車に弾き飛ばされる野鳥に対して、実効性ある対策実施を考えてほしいものです。野鳥被害は発生し続けているのですから。
アセスデータ改ざん疑惑の風力発電計画は断念!
JR東日本の子会社が山形県米沢市で計画していた風力発電の建設計画について、会社側は国が求める対策を講じた場合、スケジュールの大幅な遅れとコストの増大が見込まれるため、計画を断念すると発表しました。
JR東日本の子会社「JR東日本エネルギー開発」は、米沢市の栗子山に風力発電機最大10基の設備を計画し、国に環境影響評価準備書を提出していた。これに対し経産大臣は9月19日、イヌワシなど鳥類への影響について適切な評価や保全措置などを求める勧告を出したほか、米沢市は8月、住民の理解を得るための対応が十分ではないとして、計画の白紙撤回を求めていた。これを受けて会社側は9月27日にホームページで、スケジュールの大幅な遅れとコストの増大が見込まれ、事業として成り立たないとして計画を断念すると発表した。計画断念について米沢市長は「私たちが求めてきた事業の全面白紙撤回を受け入れたもので、地域の声を受け止めた賢明な判断だ」と話していた。
何度か述べてきましたが、私の知る限り、事業者は計画を撤回するとき、地域の反対を理由にすることはこれまでほぼありません。(地域の分断を招き、混乱させたと謝った例はありますが)あくまでも採算がとれなくなったことを理由にすることが多いようです。また、野鳥への影響を理由にすることもほとんどありません。そうでないと環境アセスがいい加減だったことを認めることになるからでしょう。事業者同士が口裏を合わせているかのようです。風力発電事業は公正な事業とは言えないと、ますます疑念が深まるばかりです。
米沢市に住む私の友人は、特段に自然保護や野鳥保護に熱心だったわけではなかったようですが、響灘洋上風力発電や栗子山の建設反対に署名するなど、自然環境をないがしろにする計画に疑問を感じてきたようです。「ならぬものはならぬ!」と、共に言い合ったことが印象的でした。私たちのような保護団体が自然環境保全の危機感から、計画に異議申し立てするのは当然としても、大切なのは「自然環境や歴史・文化と人との関係、おだやかな生活」を壊そうとしている計画は容認できないということです。住民パワーに学ぶべきことは多いです。
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