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鼻から感染防ぐ噴霧型ワクチンや予防薬、開発進む…粘膜にIgA抗体増やす

2021-09-09 19:00:13 | 健康・生活
読売新聞 記事より
(写真:読売新聞)

 新型コロナウイルスの感染予防を狙った鼻噴霧型のワクチンや予防薬の開発が進んでいる。現行のワクチンは重症化を防ぐ効果は高いが、感染を完全に防ぐわけではない。今後、感染力がさらに強い変異ウイルスが蔓延(まんえん)する恐れもあり、治療薬とともに感染予防効果の高い医薬品に期待が高まっている。

 ワクチンを筋肉注射すると通常、血液中に「IgG」というタイプの抗体が増える。ただ、ウイルスがまず付着する鼻やのどの粘膜にはIgGの量が少なく、感染予防効果は限定的だ。粘膜に分泌されるタイプの「IgA」という抗体が鼻やのどにできれば感染自体を防ぐ効果が高まる可能性がある。

 三重大の野阪哲哉教授(ウイルス学)らは、鼻などの粘膜にIgAを増やそうと、新型コロナの突起の設計図となる遺伝物質を無害な別のウイルスに組み込んだ鼻噴霧型のワクチンを、新興企業「バイオコモ」(三重県)と開発中だ。

 動物実験では、粘膜でIgAが増加した。2回接種した後に新型コロナを感染させると、3日後には鼻の粘膜でウイルスがほとんど確認されなくなった。野阪教授は「鼻噴霧は注射に比べ負担が小さい。1年以内の臨床試験開始を目指したい」と話す。

 鼻噴霧型ワクチンは、東京大発の新興企業「ハナバックス」(東京都)も研究しており、塩野義製薬が製品化を目指している。海外では英オックスフォード大や中国・香港大などが臨床試験を始めている。

 一方、福島県立医大の高木基樹教授(創薬科学)らは、IgA自体を鼻に噴霧する感染予防薬を開発している。感染経験者の血液からIgAを抽出し、その遺伝情報からIgAを大量生産することに成功した。予防薬開発に向けた前段階として7月には、IgAをフィルターに含ませたマスクを試作した。今後、市販を予定しているという。

 国立感染症研究所の長谷川秀樹・インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センター長は「感染が拡大すればウイルスが変異する可能性もそれだけ増える。感染の予防は未知の変異ウイルスの出現を防ぐ上でも重要だ」と話している。