ヨコスカうわまちICUダイアリー

うわまち病院集中治療部の日々の活動や勉強会の様子をお伝えできればと思います!

集中治療医学会の専門医研修施設へ認定されました !

2019-10-31 14:22:28 | 日記
ご無沙汰しておりました、今回は当施設で良いニュースがあったので皆様へご報告したいと思います。

おかげさまで、今月10月1日付けで集中治療医学会の専門医研修施設へ認定されました。

2017年6月に初めてICU専任医師が赴任して以来2年余り、紆余曲折はありましたが  院長を始め関係者の皆様からの温かいご支援・ご理解を頂き無事に専門医研修施設になることができました。
 
この間、はじめは一人で乗り込んだICUも数ヶ月後に特定行為看護師Hさんと共に“劇団ひとりwith H”を結成し、2018年4月にはICUフェロー1名が、2019年4月からはICUスタッフが2名増え、現在4名の医師と1名の特定行為看護師で構成するICU診療チームへと発展しました。

現在ICU診療チームは、ICU8床の患者管理を始め、院内RRSやCCOT、さらに院内スタッフへの重症患者管理の教育・シミュレーション、と次第に活動の幅を拡げつつあります。

具体的な活動内容については、当集中治療部のFacebookや当ブログでご紹介しているのでご参照ください。
https://www.facebook.com/uwamachiICU/

集中治療部の立ち上げから関わってきて感じるのは、我々に求められている役割が単に部署だけに留まらず、病院全体の課題まで広がってきつつあることです。

逆に言えば、集中治療部という部署がそれだけ病院にとって重要な役割を担っていると言うことでもあり、病院全体を俯瞰できる広い視野や知識、バランス感覚が求められていることをひしひしと実感しています。

我が国における高齢化と共に年々増加してきている医療費への危機感から、公的市中病院に求められる診療スタイルも年々変化しつつあります。

こうした時代変化の中で、医療ニーズに見合ったフレキシブルかつフットワークの軽い“うわまちスタイル”のICU医療をこれからも実践していければと考えており、これからもどうぞ末永くおつきあいいただけますと幸いです。


ICUベッドサイド回診を効果的に行うために Part 2: 回診の周り方とチームの役割分担

2019-10-20 21:59:03 | 日記
ICUベッドサイド回診は病床数にもよりますが、午前中の2~3時間をかけて行うのが一般的です。

 症例毎に話し合われる内容は決まっており、その詳細については別の機会にご紹介するとして今回はICUベッドサイド回診の中でも特に回診の周り方やチームの役割分担について述べたいと思います。

 読者のみなさんは、ICU回診は1ベッドから初めて順番通り周ってゆくものであるという錯覚に陥っていないでしょうか?

昔、大学の教授が教科書は1ページ目からではなく、興味のあるところから読み始めるものであるという話をされていて、なるほどと納得したことがありました。

 ICU回診の周り方も同様で、必ずしも1ベッドから始める必要はありません。

 具合の悪い患者様や緊急処置、急ぎ診療方針を決める必要がある患者様から回診を始めるのが正解です。

 また、ICU医師が自分一人だけなど少人数の場合には、ICU病床の稼働をスムーズにするため退室可能な患者様を始めに診察して速やかに一般病棟へ退室させることをお勧めします。

 その後は重症例や術直後の症例を優先的に周り、最後にICU退室はまだだが全身状態は比較的安定している症例を周るようにします。

 ICUの医師が比較的多くいる場合には、グループ分けをすることをお勧めします。

 具体的には、その日の当直医や上級常勤医が重症例や術直後の患者を中心に回診するのに対し、日勤が退室症例を回診すると同時にベッドサイド処置(挿管・抜管・ライン/ドレーン挿入など)を担当します。

 更に、別の日勤が後方病棟やRRS、緊急入室を担当することで効率的にICU回診を進めることが可能となります。
  
 ICU回診が終了した後には、ICUチームがいったん全体で集まり、午前の報告をして情報共有をすると共に午後の処置や新入院について業務調整します。

 次回は、ICU回診で主に上級医と当直医で回るチームの詳細についてご紹介します。

ICUベッドサイド回診を効果的に行うために Part 1: サインアウト用紙の活用

2019-10-01 21:25:26 | 日記
ICU回診には大きくカルテ回診とベッドサイド回診があり、それぞれ長所と短所があることは前回記事で述べました。

ベッドサイド回診は、患者診察と担当看護師の参加が容易であるのが長所である一方、多職種の参加や検査結果の共有がやや困難かつ回診時間も長いところが欠点です。

これらベッドサイド回診の欠点を補うコツとして、本日は“サインアウト用紙の活用”についてご紹介したいと思います。

当たり前のことですが、医療スタッフ間で予め患者の情報共有ができていなければ情報は錯綜し、ベッドサイド回診の時間も大幅に延長します。

そこで、我々が新たに導入したのがサインアウト用紙(図を参照)です。

これは、米国の臨床でICUに限らず様々な部署で用いられているもので、名前の通り患者の申し送りシートと呼ばれています。

チーム制やシフト制が進んでいる米国では、主治医制が主流の我が国と異なり各患者への医師の思い入れはそれほど強くありません。

その代わり、医療費が高いことから多くの検査や治療を短期間で効率的に行わなければならず、患者の的確な申し送りは非常に重要です。

そのため、サインアウト用紙には初めて担当する医師でも次に何をすればよいかを分かりやすくシンプルかつコンパクトにまとめられています。

サインアウト用紙のスタイルは各施設や各科で多少のバラツキはありましたが、一般的にICU患者では患者毎に1ページ、内科では3~5名の患者毎に1ページでまとめられていました。

このサインアウト用紙、良いところは一度作成されると次の人は改めて始めからカルテを見直す必要がなくなり、漏れていたり誤っている情報に限って追加修正することでその内容がどんどん洗練されてゆくことです。

また、このサインアウト用紙は医師だけでなくコメディカルも共有することができます。

受け持ち患者が現在どのような診療をされているのか、普段なかなか医師へ聞きづらいコメディカルにとっても、このサインアウト用紙を用いればその内容を理解する上で大きな参考となります。

ただ、サインアウト用紙はよくはまとまっているものの所詮は人が作成したものであること、つまり書かれている内容が必ずしもいつも正しい情報ではないことを銘記しなくてはいけません。

書かれている内容に少しでも疑問を抱いたら、患者やバイタルサイン、検査結果などを実際に自分の目で確かめる必要があります。

また、サインアウト用紙に書かれている多くの内容は個人情報であり、紛失や漏洩などに細心の注意を払わなくてはいけません。

以上を踏まえた上で、サインアウト用紙の良さを最大限活用することをお勧めします。

我々の施設では、電子カルテに付随する部門共有のフォルダへExcel(各シートに各患者)で作成した患者リストを毎日更新しており、このリストは電子カルテの入っているどのコンピューターからもアクセス可能になっています。


集中治療医が行うICU回診

2019-09-24 21:43:38 | 日記
 突然ですが、みなさんが現在働いている病院でICU回診は行われていますか?

 いきなりICU回診と言われても、ピンと来ないかもしれませんね。

 集中治療医がイニシアティブを取っているクローズド(あるいはセミクローズド)と呼ばれるICUでは、施設間の差はあれ毎日数時間かけてICU回診が行われているかと思います。

 ご存じの通り、ICUには、医学的のみならず経済的・社会的にも問題を抱える患者や患者家族が多く存在します。

こうした複雑な問題を抱える患者や家族に対して、集中治療医は日々のICU回診を通じて多職種からの意見を汲みとって彼らにとって最善と思われる診療方針を模索しています。

 ICU回診といってもそれは単一のものではなく、以下の通り大きく二つのスタイルへ分類することができます。

1. カルテ回診: スタッフがカンファレンスルームへ集まり、スクリーンに写り出される
電子カルテを見ながら一同でディスカッションし、診療方針を決めてゆくスタイル

2. ベッドサイド回診: ICUのベッドサイドで患者を見ながら担当(あるいはリーダー)看護師
(+その他の職種)とディスカッションし、診療方針を決めてゆくスタイル

 上記の回診スタイルには、それぞれ長所と短所があります。

例えば、カルテ回診は回診時間が比較的短いので、忙しい多職種のスタッフが参加しやすく、検査結果もスクリーンで共有しやすいという長所があります。

その一方、カルテ回診は実際の患者やその担当看護師と接触していないため、机上の空論に終わってしまう危険性が挙げられます。

その点、ベッドサイド回診では実際に患者を診察し担当看護師から直接話を聞くことでオンタイムに生の情報を手に入れられることが強みです。

逆に、ベッドサイド回診は毎回数時間かけて行われるため、忙しい多職種がみな参加するわけには行かず、また回診中もパソコンの小さい画面を見ながら検査結果を共有する点においてやや難があります。

さらに、ベッドサイド回診を長く続けていると目を離しているうちに具合の悪い患者の容体は刻一刻と悪化してゆき、場合によっては回診が中断されることも起こりえます。

そのため、ベッドサイド回診も時間を決めてコンパクトにまとめてゆかなければいけません。

以上から言えることは、それぞれの回診スタイルの良さを使い分けて適材適所に併用してゆくことが重要であるということです。

すなわち、大まかな診療方針は多職種が集まるカルテ回診で決めて、詳細な診療方針は担当看護師がいるベッドサイド回診で決めるというように。

次回は、ベッドサイド回診を効率的かつ効果的に行う上で重要なポイントについてご紹介してゆきたいと思います。


集中治療医とICU回診

2019-09-16 20:48:53 | 日記
集中治療医が勤務するICUの醍醐味、それはICU回診から導き出される柔軟かつ一貫性のある診療方針であるといっても過言ではないだろう。

これまで診療各科で管理されてきたICUでは、診療内容のバラツキが大きく、ICUスタッフはそれらへ個別対応することに多くの労力を払ってきた。

この点、集中治療医が一括して管理するICUでは、診療内容のバラツキが減り、診療の質も一定に維持することが可能となった。

また、ICU患者は単に医学的問題に留まらず、同時に経済的・社会的問題を抱えていることも多い。

こうした患者への対応には医師の力だけでは解決できないことも多く、ICU看護師を始め身体療法士やソーシャルワーカー、緩和ケアチームなどの力が不可欠となる。

集中治療医はここでリーダーシップを発揮して多職種の舵取りを行い、患者や患者家族の診療に対する希望をくみ取りながら、最善の診療方針を導き出せる。

このような集中治療医がイニシアティブをとってICU回診を行うスタイルは、日本国内においてまだ一般的とは言えない。

次回からは、筆者が米国で学んできたICU回診のスタイルについて、日本の診療スタイルに合わせていかに自施設で実践しているかをご紹介してゆきたい。