それは、
1. 集中治療に興味を持ってくれる若手医師を増やすこと
2. 世界標準の集中治療を若手医師へ系統的かつ組織的に教育すること
3. 集中治療医がその専門性を活かして長く幅広く活躍できる場を提供すること
である。
現在、我々は日本集中治療教育研究会(JSEPTIC)を中心に、集中治療に関する様々なセミナー、雑誌Intensivistやメーリングリストへの投稿などを通して、集中治療に興味を持ってくれる若手医師をリクルートしている。
また、集中治療へ興味を示してくれる若手医師に対しては、国内のどのプログラムにいてもしっかりと集中治療を学べるように、系統的かつ組織的な専門医育成システムの向上を目指している。
前回も書いたように、我が国ではこれまで専門医に対する専門知識やICU運営に関する教育が十分に提供されてきたとは言えなかった。
私が米国での臨床経験を通じて感じた彼らのすごさは、ヒトや場所が変われど専門医教育を受けた誰もが、研修終了後には一定レベルの知識や技能を身につけられるようになっていたことだった。
これは、当たり前と言えば当たり前のことかもしれないが、ここによい例え話がある。
ある疾患に対する治療について日本人と米国人の医師へそれぞれ質問したところ、その答えは日本人が十人十色だったのに対して米国人は十中八九同じであった。
これは、専門医教育において標準治療を徹底的に教え込む米国に対して、様々な治療選択肢を上司の裁量で教える日本とのスタンスの違いを良く表している。
このため、これまで我が国では施設間で治療方針が異なることもよく見られ、若手医師も施設を変えるたびに頭を抱えていたのではないかと思われる。
近年は、情報網の発達とEBMの成熟に伴いガイドラインも多くなってきており、こうしたことも少なくなってきた。
このような状況で世界標準を意識した集中治療診療レベルの向上のために大きなカギとなってくるのが、臨床教育に理解を示してくれるベテランの集中治療医の存在である。
米国において私が何よりも感心したのは、教育は金にはならないと言われる中で、ベテランの集中治療医達が若手医師をしっかりと育てようと教育へ多くのエネルギーを注ぎ込んでいることだった。
今後我が国における集中治療の診療レベルを向上させて行く上で、一定レベルの知識や技能を身につけられるシステム作りはもちろん重要である。
しかし、ベテラン集中治療医の若手医師に対する臨床教育への情熱こそ、実は最も大切なことではないかと私は密かに感じている。
最後に、集中治療医がその専門性を活かして長く幅広く活躍できる場を提供すること、これは昨今集中治療医のバーンアウトが問題となっているからである。
米国AMAの2013~2017年データによれば、バーンアウトが多かった専門分野は上位から
1. 救急、2.産婦人科、3.総合診療科、4.内科、5.感染症科、6.膠原病科、7.集中治療科で、いずれも50%を超えていた。
縁があって好きで始めた集中治療を最後はバーンアウトで辞めてしまうというのは、本人だけではなく周りの医療者や患者にとってもとても寂しいことだ。
働く以上は楽しく働きたいし、自分のしたい仕事を長く、可能であれば生涯続けることができればそれは何よりも幸せなことだと思う。
それを実現できる可能性を秘めたライフスタイルとして近年私が提案しているのは、集中治療を生業としつつ、時に各自のサブスペシャルティを生かせるような場や時間を設けることである。
そのヒントとなったのは、私が米国で臨床研修していた時に年間6か月をICUの集中治療医として、残り6か月を感染症のコンサルテーション医として過ごす医師がいて、どちらもバーンアウトすることなく生き生きと働いていたことだった。
また、サブスペシャルティとは言わないまでも、バーンアウトを未然に防ぐ上で職場内をローテーションする方法もある。
私がトレーニングを受けたプログラムでは、上級医は一週間毎に内科系ICU、外科系ICU、神経系ICU、心臓血管外科系ICU、リサーチ・教育をローテーションし、中級医以下もICU内部を患者担当、処置/栄養管理担当、RRS/HCU担当と日替わりでローテートすることでうまく気分転換がなされていた。
こうした勤務体系を組んで行くためには、今後一定の集中治療医数を確保し、各診療科医師からの理解も必要になってくるだろう。
まだまだ始まったばかりではあるが、今後我が国においてもきっと実現可能だと信じている。
1. 集中治療に興味を持ってくれる若手医師を増やすこと
2. 世界標準の集中治療を若手医師へ系統的かつ組織的に教育すること
3. 集中治療医がその専門性を活かして長く幅広く活躍できる場を提供すること
である。
現在、我々は日本集中治療教育研究会(JSEPTIC)を中心に、集中治療に関する様々なセミナー、雑誌Intensivistやメーリングリストへの投稿などを通して、集中治療に興味を持ってくれる若手医師をリクルートしている。
また、集中治療へ興味を示してくれる若手医師に対しては、国内のどのプログラムにいてもしっかりと集中治療を学べるように、系統的かつ組織的な専門医育成システムの向上を目指している。
前回も書いたように、我が国ではこれまで専門医に対する専門知識やICU運営に関する教育が十分に提供されてきたとは言えなかった。
私が米国での臨床経験を通じて感じた彼らのすごさは、ヒトや場所が変われど専門医教育を受けた誰もが、研修終了後には一定レベルの知識や技能を身につけられるようになっていたことだった。
これは、当たり前と言えば当たり前のことかもしれないが、ここによい例え話がある。
ある疾患に対する治療について日本人と米国人の医師へそれぞれ質問したところ、その答えは日本人が十人十色だったのに対して米国人は十中八九同じであった。
これは、専門医教育において標準治療を徹底的に教え込む米国に対して、様々な治療選択肢を上司の裁量で教える日本とのスタンスの違いを良く表している。
このため、これまで我が国では施設間で治療方針が異なることもよく見られ、若手医師も施設を変えるたびに頭を抱えていたのではないかと思われる。
近年は、情報網の発達とEBMの成熟に伴いガイドラインも多くなってきており、こうしたことも少なくなってきた。
このような状況で世界標準を意識した集中治療診療レベルの向上のために大きなカギとなってくるのが、臨床教育に理解を示してくれるベテランの集中治療医の存在である。
米国において私が何よりも感心したのは、教育は金にはならないと言われる中で、ベテランの集中治療医達が若手医師をしっかりと育てようと教育へ多くのエネルギーを注ぎ込んでいることだった。
今後我が国における集中治療の診療レベルを向上させて行く上で、一定レベルの知識や技能を身につけられるシステム作りはもちろん重要である。
しかし、ベテラン集中治療医の若手医師に対する臨床教育への情熱こそ、実は最も大切なことではないかと私は密かに感じている。
最後に、集中治療医がその専門性を活かして長く幅広く活躍できる場を提供すること、これは昨今集中治療医のバーンアウトが問題となっているからである。
米国AMAの2013~2017年データによれば、バーンアウトが多かった専門分野は上位から
1. 救急、2.産婦人科、3.総合診療科、4.内科、5.感染症科、6.膠原病科、7.集中治療科で、いずれも50%を超えていた。
縁があって好きで始めた集中治療を最後はバーンアウトで辞めてしまうというのは、本人だけではなく周りの医療者や患者にとってもとても寂しいことだ。
働く以上は楽しく働きたいし、自分のしたい仕事を長く、可能であれば生涯続けることができればそれは何よりも幸せなことだと思う。
それを実現できる可能性を秘めたライフスタイルとして近年私が提案しているのは、集中治療を生業としつつ、時に各自のサブスペシャルティを生かせるような場や時間を設けることである。
そのヒントとなったのは、私が米国で臨床研修していた時に年間6か月をICUの集中治療医として、残り6か月を感染症のコンサルテーション医として過ごす医師がいて、どちらもバーンアウトすることなく生き生きと働いていたことだった。
また、サブスペシャルティとは言わないまでも、バーンアウトを未然に防ぐ上で職場内をローテーションする方法もある。
私がトレーニングを受けたプログラムでは、上級医は一週間毎に内科系ICU、外科系ICU、神経系ICU、心臓血管外科系ICU、リサーチ・教育をローテーションし、中級医以下もICU内部を患者担当、処置/栄養管理担当、RRS/HCU担当と日替わりでローテートすることでうまく気分転換がなされていた。
こうした勤務体系を組んで行くためには、今後一定の集中治療医数を確保し、各診療科医師からの理解も必要になってくるだろう。
まだまだ始まったばかりではあるが、今後我が国においてもきっと実現可能だと信じている。