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カルロス・ゴーン被告人の海外逃亡について思うことー無責任な裁判所

2020年01月03日 | 弁護士

いろんな人がいろんなことを言っています。
でも政府や裁判所などからの公式発表は一切ない。不思議です。

上は1日の産経新聞からです。
最初の疑問は、何で旅券を弁護人が預かるのだろうかということ。
弁護人は被告人を弁護することがその職務。その弁護人に旅券の管理をさせるというのは
どういうことだろう。弁護人は裁判所の代理人ではないはず。
日本の司法制度になじみのない外国人にはどのようにみえるのだろうか。

旅券はブラジル、レバノン、フランスの3つの国のものだが、実はフランスの旅券は2通あったと
いうことが分かった。違法ではなく、そういうことができるという。
どうやら、レバノン入国に使われた旅券はフランスの2通のうちの1通らしい。
なぜ、ゴーン被告人本人がそれを持っていたのか。
外国人は旅券の携行義務があるということが分かったとして保釈条件の変更を申し立て、
裁判所は鍵付きケースに入れた1通を渡すことを認めたという。ただし、鍵は弁護人が保管。
(なお、ゴーン被告人の場合のようなケースでは免除される?)
こういう話を聞くと、おかしいんじゃないと思う。少なくとも私は。
どのようなケースに入っていたのかわからないが、鍵など壊すことは簡単。ケースだって
壊すのは難しくないはず。
要するに、旅券のうち1通は本人が所持していたということに他ならない。
したがって、保釈条件の海外渡航禁止は、全くのもぬけの殻だったのだ。
恐らく、コーン被告人の顔を知らない人はいないので、気づかれずに出国することなど不可能
という思いがあったのかもしれない。
今回のことで、私自身学んだことがある。
旅券は入国の際に必要なのだと。勿論、そういうことは当たり前である。
もし、今回の場合、ゴーン被告人が旅券を持っていなかったらどうなったか。
レバノンに適法に入国できなかったということである。
そういえば、スノードンは飛行中に旅券を無効とされたために、目的地(南米)に行けず、
ロシアで降り、亡命が認められるまで、ロシアに入国もできず、空港暮らしだった。
旅券がなければレバノンに違法入国するしかない。違法入国ではレバノンもゴーン被告人を
保護するわけにはいかない。
もし、鍵付きのケースに入った旅券の所持を裁判所が認めていなかったら、おそらく
今回の海外逃亡はなかった可能性がある。
裁判所としては、大変な失態である。

監視カメラが24時間監視していたという。
しかし、今回の逃亡を受けて監視カメラを調査したところ、28日に一人で出かけたことは
確認されたが、帰ったことは確認されなかったという。
監視カメラは記録しているだけである。
28日に出かけそのまま海外逃亡に向かったのである。それは確認できた。
しかし、監視の本来の目的は勝手な行動を防止するために見張りをすることである。
ひとりで出かける場合は、行く先を聞くとか帰る時間を聞くとか、フォローするなどして
保釈違反がないようにすることである。後でわかったでは監視の意味はない。
本来の監視を実施していたならば関空に行かせるなどということは防止できたはずである。

これからいろいろな事情が分かってくると思うが、要するに裁判所には当事者意識が一切ないのである。
機械任せ、弁護人任せ、いいかえれば無責任体制なのである。

ゴーン被告人のような華々しい海外逃亡ではないが、最近、保釈中に逃亡するケースが多くなっている
というニュースに接することが多くなった。
裁判所は、長期間拘束するのは好ましくないとの批判を受け、どしどし保釈するようになった。
保釈するのはいいが、逃亡防止策を何ら講ずることはしないからである。

もし、裁判所が他人まかせ、機械まかせでなかったら、保釈=逃亡の恐れと捉えられたはずである。
現実は、裁判所は言い渡すだけ、後は誰かがやってくれる、という仕組みなのである。

今回の件は、特別な例というのではなく、日本の保釈制度そのものが未熟、未整備だということが
明らかになったと捉えるべきである。

裁判所の無責任体制が根本原因というのが、私の見立てである。