専門家である尾身会長が記者の質問(対象区域拡大後の)に対し、「感染者数はゼロにはならない」というような発言をしたことが気になっていた。感染者がゼロになることがあるなど誰も考えていない。
だからこそ、治療薬とワクチンの開発が必要なのである。
国民を馬鹿にした発言だと。
尾身氏の発言当時の状況は次のとおりとある。
質問の趣旨は、拡大したことをきっかけにその効果のほどを政府として専門委員会としてどのように判断しているのかを知りたいというものだと思う。
拡大したことによって解除が期待できるのか、それとも拡大宣言の遅れのため延長の可能性が高いのか、現段階での意見を知りたいというものだ。当然の疑問であり、質問だ。
緊急事態宣言とは
緊急事態宣言は「新型インフルエンザ特別措置法」により、
「新型インフルエンザ等が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼしているとき、または、そのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態が発生したと認めるとき」に発布されるものです。
つまり、緊急事態宣言を発令するかどうかの要件は、
「全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼしている、または、そのおそれがある」ときです。
当然解除するか延長するかの判断もこの基準によることになるわけです。
簡単にいえば、発令時の要件が消滅、軽減したかどうかである。
勿論、「全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼしている」かどうかというのは判断ですから、その時の状況を具体的に見てみなければわかりません。そしてコロナのまん延状況にはそれほど改善がなくとも、国民経済の壊滅状態を回避するために解除ということもあり得るかもしれない。生命・健康と経済という国民・国家にとってはいずれも重要な二つの要素のバランスを判断するのは容易ではない。
しかし、それでも発令時の「全国的かつ急速なまん延」状況及び「国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼしているか」どうかを基準に判断することになる。
なぜなら緊急事態宣言を発令した以上は法の定める発令要件を充足していると判断したはずだからだ。
感染がゼロになっているかどうかなどではあり得ない。全くの論外である。冗談でも許されない。
感染ゼロ、感染者なしだったのなら、日本ではコロナウイルス知らずで、緊急事態宣言など全く縁がない国ということになる。
「下火になっても小さな山は続く見込みだ」とこれまた論外である。小さな山が続くというのでは、それは「全国的かつ急速なまん延」ではないし、「国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼす」かどうかでもないからである。これまた緊急事態宣言など全く縁がない世界の話である。
尾身会長は話を逸らしたのである。
なぜ逸らす?
ロックダウンという厳しい措置を採ったした国でも、いつそれを解除できるか緩和できるかはやってみなければ分からないのである。
コロナ危機を乗り越えるためやむを得ない措置だったのである。節目節目で効果を見極めながら、最善と思われるつぎの措置を決定する。
だから、尾身会長は現段階では判断できないと答えても何の問題もない。近づいた段階で慎重に見極めたいでいいのである。
安倍首相の記者会見に同席しての、質問に対する答えである。安倍首相のいう専門家の話である。
到底、専門家の発言とは思えないが・・
当然、安倍首相の意向を反映しているとみるべきだろう。
話を逸らしたり、はぐらかす必要がないのになぜ?
国民に極めて大きな犠牲を強いる決定をしたのである。当然その根拠・理由を説明すべきである。
それをしないのは極めて不誠実と言わざるを得ない。
話を逸らす、はぐらかすのは、話をしたくないときである。
話をしたくないのは、話ができないからである。つまり、何も考えていないということである。
しかし記者さんは、この発言を受けて「感染レベルによって対応を変える考えを示した」とまとめをしているところをみると、そういう聞き方をしたのだろう。忖度したのだろう。勝手に解釈したのであろう。
安倍政権の不誠実な対応に慣れてしまい思考停止状態にあるとしか考えられない。
国民のだれ一人として5月6日までに「感染ゼロ」とか「下火に」なるとか「小さな山は続く」ていどになるなど想像すらしたことはないと思う。国民が、そして質問した記者さんが懸念しているのは、5月6日には悪化している可能性があるのではないか、延長があり得るのではないかということである。
あまりにも脳天気ではないか。
見せかけだけなら、あまりにも無責任ではないか。
しているふりをしているだけ?
最高責任者が「しているふり」をしているだけだとすると外出自粛を呼び掛けても効果はでない。
専門家の意見を聞くにしても、最終的には首相の政治判断だと思う。
国民目線で未曽有のコロナ危機に適切・誠実に対応してほしいものである。